プロローグ
15時ころもう1話投稿します
その日、戦争が終わった。
最初に気が付いたのは、歩哨のウェインだった。
今までずっと鉛みたいだった空が、ざくっと裂けたみたいに光った。
その向こうで、黒い塊が煙を引きながら崩れていく。
Iron Bitch。
十五年ものあいだ空の上から地球を焼き尽くしてきた、ヤツラの母艦──あの空飛ぶクソが、地面へ引きずり下ろされていく。
「……落ちてる?」
塹壕の向こうで、誰かが呟いた。
信じられない、というより現実か?みたいな声音。
次の瞬間、敵のロボット兵の複眼が一斉に暗くなった。
ぽつ、ぽつ……じゃなくて同時に。
空を飛び回っていた円盤も、糸が切れたみたいにバラバラと墜ちていく。
沈黙。
そして――爆発みたいな歓声。
「止まった! 止まってるぞ!!」
「勝ったんだ……俺たち、本当に勝ったんだよ!!」
誰もが泣いて、笑って、抱き合った。
すすだらけで涙と雪がぐちゃぐちゃに混じって、ひとりひとりの顔なんて見分けがつかなかった。
でも、そのときだけは全員が同じ顔をしてた。
生き延びた人間の顔だった。
その後のことは、誰もはっきり覚えていない。
崩れ落ちる母艦を見た部隊もあれば、
連動停止したロボット兵に囲まれていた部隊もあった。
敵の円盤が墜ちてきて、巻き込まれた地域もある。
けれど、ひとつだけ確かなのは。
──その瞬間、世界中の戦場で、同じ光景が起きていたということだ。
誰もが武器を放り出し、泣いて、笑って、抱き合った。
十五年続いた戦争は、その日、突然に終わった。
……しかし、それは生存者が救われたという意味ではなかった。
文明は焼け、通信網は死に、各地の軍は孤立したまま。
自分たち以外に生存者がいるのかどうかさえ、
誰にも分からなかった。
助けが来る保証もなく、
迎えに行く余力もなく、
ただ、それぞれの場所で冬を越すしかなかった。
連中の侵略拠点だった北極海に最も近い、人類反攻戦争の最前線──アラスカも例外ではない。
凍土と吹雪に閉ざされたその地は、そのまま世界から切り離された。
そして──




