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過去の断片
男が見た夢の意味を探す物語
昔、3人で小さなアパートに暮らしていた。
その頃は家族が壊れるなんて考えもしなかったし、それよりも、ただ子ども特有の「退屈さ」に包まれていた。
けれど、小学3年のとき、突然引っ越すことになった。
町も、家も、学校も見たことがないくらい綺麗で、最初はそれだけでわくわくしていた。
新しい町に新しい友達、大きな期待があったのを覚えてる。
しかし、小学5年の始め頃から、両親の間に亀裂が生じ始めた。
喧嘩が増えた。理由はいつも些細なことだった。
けれどその奥には、家庭と趣味、現実と逃避のぶつかり合いがあったように思う。
ある日、母親が出ていった。
父親は母親が出ってたことをその時は話さなかったが
本当は母親が出てった夜、自分は布団の中で2人の会話を聞いていた。
ある日、父親と一緒に洗面所の前で泣いた。
あのときの鏡に映った父親の顔、水の音も覚えている。
「ごめんな、2人で頑張ろう」
父は泣きながらそう言った。
あの言葉は本気だったと思う。
でも、どうしても埋まらない何かが、俺の中には残った。
ここから少年期全般を分けて記録する予定です。