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朝の人ごみの中で、歩美は一つの決意を胸にしていた。
迷いはなかった。ただ、その固く心に決めたものが、生きていく方向には向いていなかった。
朝のホームで待ち構える人々とは別のことで彼女は電車を待っていた。
理由はない。
強いていうなら、疲れてしまった。
病院へ行けば、鬱と診断されていたのかもしれない。
だが、この病気の治療方法はこれが一番楽で手っ取り早いと歩美は信じて疑わなかった。
電車が来る。
鞄の中には遺書が入っていた。
その鞄を置いて、線路へ。
電車の灯りがホームに滑り込んできた。
足を踏み出して、
「あ」
と思う。
鞄をまだホームに置いていない。




