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碧玉の瞳  作者: ふとん
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 銀髪の男が椅子に座っているソフィアを覗き込んでいる。彼はソフィアを覆うように彼女の逃げ場を無くした。

「君をここまでエスコートしてきたアズラエルという青年、彼がエメラルド・タブレットの研究者の一人さ。そう、彼は君が何者かを知っていた」

「私には関係ない」

 うつむいて目をきつく閉じてもゲイリーの声に容赦はない。

「君が、なぜアースに生まれたのかはわからない。でも君がタブレットを開く鍵だということは、確かだ」

「……だから、私を誘拐したの?」

「頭の良い子は嫌いじゃないよ。でも君は少し勘違いをしているようだね」

 ゲイリーはソフィアの頭を撫でると、少し笑う。

「君は、たまたまこの世界に落ちたと思っているだろうけれど、それは違うんだよ」

 顔を上げると、彼は目を細めた。そして、天使のように狡猾な含み笑いを漏らす。

「君は僕が喚んだ」

 口を開いたまま言葉を無くしたソフィアを眺めて、ゲイリーは笑みを強くした。

「探知魔術を転移魔術と合成して幾つか三世界に放っておいた。その一つに、君は堕ちた。幸い、君は目を閉じた状態だったから見破られずに済んだんだよ」

「……堕ちた…」

「そう。デュナミスに見つけられたのは想定外だったけれど、どのみち十字路の魔女が彼等を導いてギの国へ来ることはわかっていたからね」

 堕ちる、喚ばれる。

 わけがわからない。

 混乱したソフィアをゲイリーは更に煽る。

「君はすでに目を開きかけている。ヘカテの庭では僕の術を見破った。そして、真実の森でアズラエルの真実を見た」

「……あの大きな鳥が貴方の…」

「デュナミスが邪魔だと思ってね。意識体に術をかけて君たちを襲わせた。結果、君が見破ってしまったけれど」

 だとすれば、森で見てしまったアズラエルの道は、本当のことで、鏡に映ったあの女性が、ソフィアだったのか。

 あの、顔を大きく抉られた、碧の目の女性が。

「土の暦四年、ソフィアは死んだ。いや、殺されたんだ」

 いつのまにかソフィアの周りに本はなく、ただ、暗闇ばかりが広がって、ゲイリーだけを浮かび上がらせている。

「さぁ、ゆっくりと。君の目を開いてごらん」

 彼の後ろに大きな石版が浮いている。

 否、鉱石のようだった。

 それは美しい、エメラルドである。

 ソフィアの等身ほどもある大きな壁版には何の文字も書かれていない。

 壁版はゆっくりと回転しながら、暗闇に浮いている。

「答えはいつも君に語りかけるよ。……ソフィアを殺したのは、誰だった?」

 答えはいつも真実だ。

 だが、真実は優しい仮面の下に残酷な顔を隠している。

 ソフィアを殺したのは、あどけなさが残る赤い瞳の青年。

 アズラエル。

 翠玉の壁版の輝きは、冴え冴えと暗闇に溶けた。






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