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第21話 勇者、激昂。


 事態は深刻であった。ヴァル・ムングがロアの行方を追っているのは間違いなかった。周囲ををしらみ潰しに探っているのだという。



「この場所が見つかるのは、時間の問題じゃな。」



 報告を受けた、サヨは事態を重く受け止め、目を閉じて、思考を巡らしているようだった。



「ヤバイな。怪我も治っていないっていうのに。それに……。」



 怪我が治っていないどころか、剣が折られてしまったため、武器がない。ロアは重大な事に気付いてしまった。今の状態では成す術がない。とはいえ剣があったとしても対抗手段がない。ある意味お手上げの状況であるのは確かだ。



「怪我や武器はなんとでもなろう。だが、あやつめを倒すための準備はあともう少し必要なのじゃがな。」



 準備?準備とは何のことを言っているのか。ロアには皆目検討がつかない。むしろ、怪我や剣の心配をした方がいいのではと思った。



「準備?準備って何をするんだ?あいつに対しての対抗手段なんてあるのか?」



 正直に疑問をぶつけてみた。とりあえず、打開策とやらを聞いてみないことには始まらない。



「対抗手段とは……、そなたじゃ。」



 サヨはロアを指差していた。



「そなたの記憶を覗かせてもらった言ったであろう?そなた自身は気付いてはおらぬが、十分あやつに対抗できる。」



 対抗できる?冗談にしか聞こえなかった。全力を出していないヴァルにさえ、敵わなかったのだから。記憶を見たぐらいで何故そういう発想に至ったのか?



「もしかして、勇者の力のことを言ってる?……それだったらあてにしないほうがいいぜ。俺は先代から引き継いだばっかりなんだ。一人前どころか半人前ですらないんだぜ。」



 勇者の技ですらろくに使いこなせていない。むしろ、ヴァルのほうが勇者の技を使いこなしていた。



「勇者の力……、そちらもあてにしていないわけではないが、そなたの言う通り、使いこなすには時間がかかるじゃろうな。」



 勇者の力でないとしたら、あとは何が残るのか。



「そなた、本当に気付いておらぬのじゃな。そなたが今まで培ってきた物があるじゃろう?」



 それは、まさか!



「流派、梁山泊……?」


「それじゃ!それならあやつに対抗できる。勇者の力に匹敵する、いやそれどころか、技の面でだけでいえば、遥かに凌駕しておる!」



 心外だった。そこまでの力があるとは到底思えない。勇者の技同様通用しなかった。



「そなた、究極奥義のことを覚えておるか?凄皇八刃のことを。」



 まさか、他人の口から、その名を聞くとは思わなかった。これは秘伝中の秘伝、この技について知っているのは、梁山泊の中でもごく限られた人間しか知らない。



「無理だぜ。俺みたいな半端もんにはな。俺は破門になったんだぜ。俺は不適合者なんだよ。」


「そなた、まだ気にしておったのか?」


「あんた、そこまで見たのかよ!」



 ロアの心には怒りが沸々と沸いてきた。一番人に見られたくない部分を見られてしまったのだ。



「すまぬ。それは覗いたというより、見えてしまったのじゃ。余りにもその思念が強かった故にな。」


「言い訳なんてするんじゃねえよ!人の心のなかに土足で入り込みやがって!」



 ロアは怒りをサヨに向けて叩きつけた。そして、ロアは立ち上がり部屋をでていこうとしていた。



「どこへいくのじゃ?」


「知るかよ!あとは知らねえ!もうあとは勝手にあんたらだけで何とかしろよ!」



 行くあても何もなく、駆け出した。


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