「新移民政策」と認めることが第一歩 日本国民全員で議論をするべき入管難民法
筆者:
本日は当エッセイをご覧いただき誠にありがとうございます。
今回は本国会で改正されようとしている入管難民法についてと、
外国人との在り方について個人的な解説をしていこうと思いますのでどうぞよろしくお願いします。
◇これまでの「特定技能」とこれからの「育成就労」
質問者:
今回の法改正ではいったいどういう事になるんですか?
筆者:
前にも少し触れたことがあるのですがこれまで「技能実習制度」と言われていた制度を、(彼らが言う)発展・解消させ「育成就労制度」とします。
※現在全国に40万人の外国人の方が「技能実習制度」で働いています。
この制度では滞在期間を3年とし(更新可能)技能実習制度では原則できなかった別の企業などに移る転籍を、
・1年を超す就労
・同じ業種区分であること
・日本語と技能の基礎試験5級合格など
などを要件に、同業種内での転職を認める一定の要件のもとで認めることとしています。
この制度は働き手が不足している介護や建設、農業などの分野で外国人材を確保するため、としています。
質問者:
ですが、「技能実習制度」ではブローカーが中抜きをして実際には外国人の方にあまり支払われなかったりするケースが頻発して国際的な問題にもなったんでしたね……。
筆者:
アメリカ国務省は2021年版の世界各国の人身売買に関する報告書では日本に関して、「国内外の業者が外国人技能実習制度を労働者搾取のために悪用している。日本政府の取り組みは最低基準を満たしていない」と鋭く指摘したこともありました。
と言うのも、主に転職することが全く出来ずに事実上の“搾取“に近いことが行われていたためですね。
ただ、「育成就労」の制度においても1年間転職できないというのも結構長いです。
2か月とか3か月にしなくてはちょっと抑止力としては薄いのではないのかな? と思ってしまいますね。
皆さんも未知の国のブラック企業かもしれないところに1年は働かなくてはいけないとなったら嫌だと思います。
僕は「技能実習制度」から「名前を挿げ替えただけ」と見ています。さらなる見直しが必要な制度だと思います。
また、監理団体や登録支援機関の要件を厳格化するとしていますが、
実効性がどの程度なのか注目ですね。
今のところ「良い就職先を斡旋するから」と言う理由で外国人の方から搾取する人材斡旋業者が結構横行しているようですからね。
質問者:
今までと一緒でしたらあんまりですものね……。外国人の方のために実効性のある制度にして欲しいですね……。
◇「移民」として素直に認めない政府とそれを追求しないマスコミ
筆者:
そして、この法案の審議が始まった時の答弁で岸田増税メガネ首相は、
「政府としては国民の人口に比して一定程度の規模の外国人およびその家族を期限を設けることなく受け入れることによって国家を維持していこうとする、いわゆる移民政策をとる考えはありません」
という興味深いことを述べていました。
これはかねてから自民党の主張ではあるのですが、僕は以前から「詭弁である」と思っています。
質問者:
実際のところ日本人の「実質的な移民の数」って現在のところどれぐらいの数なのですか?
筆者:
首相や自民党がどう定義するかどうかよりも、世界的にどうなのか? という事を見た方が良いですね。
国連経済社会局では移民について、
『3カ月から12カ月間の移動を短期的または一時的移住、1年以上にわたる居住国の変更を長期的または恒久移住』
と定義しています。
ちなみにこの定義に当てはまる法務省の令和5年6月末現在における発表では、
日本における外国人の中長期在留者数は293万人とされています。
これは、日本人との人口比で見れば2.5%ほどですね。
ほとんどが労働生産年齢だと思うので、実際に生活圏にいる方の比率で見ればもっと多いと思います。
全世界の中では日本は24番目に移民の数が多く、主要先進国の中では4番目に多いというデータが2019年時点(その当時の日本の中長期滞在の外国人は277万人)では出ていますね。
これは世界的に見たとしても決して少ない数字とは言えないと思います。
ここから、特定2号の拡充などでさらに増やしていこうとしているという事を意識した方が良いと思います。
質問者:
確かに、3か月も一つの国に旅行することってまずないですからね……。
それが40人に1人以上いるともなれば多いですね。
以前からの筆者さんの意見では自民党が「移民」と認めていないのは「保守層の支持票を離さないため」だという事をおっしゃっていましたが……。
筆者:
それが本当に不快なんですよね。
僕は現在の「言葉遊び」状態では無く、正々堂々と「労働者数が足りないから移民を入れます」と宣言し、具体的な議論を官民一体となって行うべきだと思うのです。
中途半端な状況だから「人権侵害」と言われるような状況を生んでいると思います。
また「移民」と気づいた日本人の方の中には欧州やアメリカの治安悪化、経済的負担の多い状況を懸念し、日本では川口市のような状況になってしまうのではないか? と危惧しているのです。
ネット上では「移民」と言う感覚は広がりつつあるものの世間一般での認知度はまだまだ低いように思えますね。
マスコミも政府の「言葉遊び移民政策」に加担しているのです。
質問者:
実際に外国人の方の犯罪率はどうなんですか?
筆者:
全体では思ったほど日本人と差はないというデータはあります。(ただし組織犯罪の率は3倍)
年によって差はありますが日本人の1.5倍~2倍程度と言うところでしょうか?
海外ほど顕著な差は今の日本には出ていません。世界的に見たら極めて日本は治安が良いので、1.5倍程度ならほとんどの方は秩序があるといって良いと思います。
ただ気になるのは「仮放免」として正式な滞在許可が無いにもかかわらず野に放たれた外国人の犯罪率です。
23年4月5日の産経新聞の記事では、
『仮放免者は令和3年末時点で5910人と、感染拡大前の元年末と比べて約8割増えた。こうした状況を受けて入管庁は、3、4年中に逮捕された仮放免者の数を初めて集計。これによると3年中は337人、4年中はさらに増えて361人だった。逮捕容疑は殺人未遂や覚醒剤取締法違反などで、実刑判決が下ったケースもあった。』
と、仮放免になっている人の犯罪率は5%を超えているのです。これは日本人から見た場合では10倍以上にも上っています。
ちなみに令和4年の仮放免で増えた国籍・地域は69か国・地域であり、トルコ人(ほとんどクルド人と思われる。滞在外国人から見たらやはりかなり比率として高い)が650人と最も多く、2位以下は中国人470人などが続いています。
やはり不法滞在・仮放免となってまともな職場に就けない方は、他の犯罪を犯してしまう可能性も高いと言えます。
最低でも国がしっかり仮の就職先を斡旋し、変なところに行かないように管理する必要があるでしょう。
また現状の仮放免と不法滞在者は税金や社会保険料を支払っていない可能性が非常に高く、日本にとってマイナスの側面が非常に大きいと思いますね。
質問者:
やはり「仮放免」と言う制度に問題を抱えているのですね……。
筆者:
今回の入管難民法改正案には、
税金や社会保険料を故意に支払わない場合や、住居侵入や傷害など一定の罪を犯した場合に永住許可を取り消せる規定を新設しました。
しかし、永住許可を取り消しても「仮放免」状態になって野放しでは何の意味もありません。
産経新聞の23年4月5日の別の記事では『「仮放免」中の逮捕者の4割は強制送還を拒否した外国人』という報道もありました。
強制送還の拒否はいわゆる「搭乗拒否」です。大体はお金を持っていないなどと言い訳をしたりするそうです。
不法滞在者の強制送還とその費用の取り立て方法についての改正や、難民申請をしている人などをしっかり管理する制度は必須です。
それをせずに、労働者をさらに増やす政策を続けていけば、国の秩序は崩壊していくでしょう。
また、しっかりとしたビザを持っている人が「バカを見る」ような政策にしてもいけないと思います。
質問者:
外国人の方が検挙・起訴されていないとか逮捕されていないとかそういう話はどうなんですか?
筆者:
個別の案件については分からないのですが、警視庁のデータを見る限りでは検挙率、不起訴率は日本人と外国人に変わりはありませんでした。
せいぜい一桁%ぐらい外国人の方が多いぐらいです。(注目の川口市の検挙率については分からず)
不起訴だった! という事が外国人だから殊更大きく報道されたり、注目されたりしているだけで「外国人であること以外の理由」で検挙されていなかったり不起訴であると思った方が良いと――少なくとも僕は思っています。
質問者:
なるほど、今特に敏感に反応しがちですからね。そういうバイアス抜きに見ていく必要がありますね……。
◇そもそも、日本人の産業構造を改善していくべきだが……
筆者:
そもそも、「安い労働力」と言う見方を捨てて外国の方を日本人と同等の給料まで引き上げることが大切になってくると思いますね(日本人を外国の方と同程度の給料のレベルに下げるのは最悪の選択肢)。
現状円安の状態で来る外国人の方は事実上の日本全体の「賃下げ」にしかならないと思います。
質問者:
「生産性を上げたる取り組み、賃上げを要請」と言うのとまったく真逆の政策と言えますよね……。
筆者:
本来であれば必須産業であるのならば補助金などを使って支援することや、
物価高に連動した農作物の固定買取価格制度の導入などを行うべきです。
そんな中、「賃下げ政策」である「安い労働力としての外国人労働者」を入れるというのは問題外です。外国人の方に対しても失礼です。
外国人労働者を借金までさせて日本に希望をもって来てもらい、実際はブローカーに対して借金返済をするのにやっとのこと――といったこともあるようです。
そう言った人権に問題があるような方法を取るのではなく、日本人と同等の条件で負担の無いやり方を目指すべきだと思います。
質問者:
そのためにはやはり「移民」と認めることが大事だという事ですね……。
筆者:
僕は外国人の方を排斥しようという考えは毛頭ありません。
ただ、国家すら変えかねないことに関して「移民ではない」と政府が主張し、国民の中で議論されることないまま制度が変更されているのが実情です。
また、来ていただいた外国人の方すらも不幸になりかねない制度というのは本当に極一部の企業とキックバックを貰っているであろう政治家にしかプラスにしかなりません。
「事実上の移民」なのにもかかわらず「日本人とほぼ同等」の制度設計になっていないように思います(ただし日本国籍になっていなければ参政権を認めてはいけない)。
そして、移住要件に違反した方に関しては残念ですが共生は難しいと思いますので、適切な審査の後にお帰りになっていただく制度も拡充していく必要があると思います。
質問者:
こういった話はやはり気づいた方から伝えていくしかないのでしょうか……。
筆者:
そうだと思います。
僕が発信している内容は大抵マイノリティにも程がある内容なので繰り返しになることも多いのですが、世間に浸透するまで何度でも繰り返して発信していこうと思います。
という事でここまでご覧いただきありがとうございました。
今回は入管難民法の改正ポイントについてまとめるとともに、
現状では「技能実習制度」から「育成就労制度」に名前が変わっただけで外国人が不幸になりかねないこと。
仮放免制度が治安悪化に直結するので直ちに制度改修をしなくてはいけないという事。
労働力として来られる外国人の方を「移民」として認め、参政権以外は日本人並みの待遇にすることが重要だという事をお伝えしました。
今後もこのような時事問題や政治・経済、マスコミの問題について個人的な解説を行っていきますのでどうぞご覧ください。