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5話

 実りの無い話をしてしまい、機嫌が好ましくない。

道中で夕飯の為の買い物を済ませ、帰宅した。

深川のアパートではなく、自分だけの家だ。

所持金は充分にあったので保証人の心配も必要ない。

あの忌々しいオヤに頼みを乞う必要もないのだ。


もっとも金銭管理も人間性も終わっているのだから最初から考えようがないことだ。

深川も頼らない。所持金が充分以前に、誰の手も借りる気など無い。

あってたまるか。


「プルル」


耳障りな連続音。定期的な物。深川だろう。毎日うるさい。


「もしもし」


「あぁ。向井間か? 深川だ」


「生存報告は、これで充分だろ?それじゃ」「おい、待て」


「なんだ?」


「流石にそんな一方的なのは無いだろ。もっと今日のことを話したりさ」


「今日のこと?」


 こいつは保護者面しているということか。

立場をわかっていないのだろうか?

卒業後、しつこく連絡するので、電話がつながらないようにした。

そうしたら、余計なことに、家に来るようになったので、甘んじて、電話を切らないようにした。

無視したらまた来たので、最低限の話し合いに努めるようにしてきたが、その努力も無意味だと悟った。


―だからいい加減わかってもらわないと。


「わかったよ。それじゃあ、深川、先生はどのように過ごしていましたか?」


「おお。急に自分から話してくるなんて珍しいなぁ。いや新しく就いた学校で、何とかやっていってるよ」


「それは、良かったですね。前の学校ではさぞ、窮屈だったでしょう」


「あ、あぁそうだな。というかなんでいつもの言葉遣いじゃないんだ?もっとくだけた感じでも…」


「今日は何食べましたか?」


「えっと朝はパンで…」「楽しかったことはありました? 学校では何かありましたか? 天気どうですか? 暑く無いですか? 寒くないですか? コーヒーは飲みましたか? 豆の種類は? 生産者は誰ですか? 生産過程はどうなっていますか? 生産者のエピソードはどのうようになっていますか?」


「ちょちょっと。急に質問攻めするなよ。そんなすぐに返答は出来ない。一つずつ話さないと。それに後半めちゃくちゃすぎるだろ」


「何を勘違いしているんだ?」


「え?」


「お前と話をして何になる?」


「そんな言い方は無いだろ。一応保護者なんだから」


「何真っ当なふりしようとしているんだ? 偽善者ごっこの趣味が再発したのか? それとも坂井から見放されて、後ろめたさでやってるのか?」


「…いきなりなんでそんな事を言うんだ」


「今更だろう。俺は一生分の金が手に入った。すねをかじる必要なんてない。保護者というお前はあの時のままでは、囚われていた身だ。保護されたのいったいどっちなのかは明白だ。そこを履き違えるな。お前は形だけの保護者という立ち位置を真っ当すればいいだけだ。それ以上をするっていうなら、囚われた時の続きをしてやる。話は以上だ」


それ以降、余計な連絡が大幅に減り助かっている。



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