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4話

「…。酷い言い草ですね。何を持ってそんな事を言うんですか?」


本当に、いじめ0を謳っている校長が何を言っているんだ。

いじめられていることを疑うなんてこの学校がしていいことではないはずなのに。


「うーん。理由を言われてもねぇ。何となく。同じ匂いがするからかな」


「何となく…って…。人を馬鹿にするのも大概しろ! ! 僕はいじめられていたんだ! ! だからこの学校を選んだ。第一同じ匂いがするって言うなら…言うなら…」


 衝動的になりながらも、辛うじて筋妻だけは合うように頭の中では考えていた。

いじめを嘘と言われたことに腹を立てた訳ではない。

同じ匂いという言葉に衝動的になった。

どうしようもないろくでなしと言われた気がして。

そこまで落ちぶれつもりはないし、謂れはない。

いじめに対して無頓着ということはつまり。


「校長先生はいじめを0にするなんて高尚な考えをはなっから持ち合わせていないということですか?」


「うん。そう言うこと」


「一緒にしないでください」


「どういう意味で一緒なのか否定しているかは、詮索しないであけるよ。まぁ、私の考えや経緯も言わずに、君は嘘をついていると、言い続けるのは確かにフェアではないね。昔話をさせてくれ。二十代の頃も私はここで教師していた。校長ではなくね。丁度その頃に大きないじめがあった。そして被害者は自殺した。未熟ながらも、悔んだよ。もっと被害者によりそえば、あんなことにならずに、済んだのかもしれないと。このまま終わらしてはいけないと思い、学校の復興に努めた。自らが校長となり、いじめを起こさない・起こさせないをモットーにここまで学校を運営してきたよ。その結果として、いじめ撲滅委員会が設立された。学校のバックアップの元、生徒自らからが、律することで。あの惨状様なことが起きた事は無い」


因縁をつけられので、憎まれ口を叩く。


「口では何とでも言えますよ。表面上ではそうなのかもしれませんが、学校側らが揉み消しに努めれば、どうとでも出来ます。現に自分はそういう目にあったのですから」


「手厳しいね。確かに今ここで、めいっぱい訴えても、水掛け論にしかならないね。ただ、この学校に来たからには、そんじょそこらの口先だけの学校とは一緒でないということは保証するよ。話が外れたね。こうして、いじめを失くすことに成功したんだ。そして私の人生の後悔でもある」


「何ですか? それ」


「いじめをなくすことに努めるのが失敗だったということだよ」


「ますますわからないです。いじめはなくなって、しかるべきです」


「うん。まぁそうなるか。勘違いしないで欲しいのがいじめが起きた当事は本当にいじめをなくしたい気でいたんだ。だけどさぁ…」

「今の現状を壊してみたいとそう思わずにはいられないんだ」


何を言っているんだ。この男は。


「不思議だと思うかい?でも事実なんだよ。それで君に頼み事、いや、しようと思っていることを手伝おうと思ってね」


「僕が何かをしようとする言いぐさですね」


「とぼけないでくれ。君はいじめという縮図に愉しみを見出だす人物だ」


「! ? …悪魔でいじめられていないと言うんですか」


「当然だ。私はいじめを見てきた一人だ。誤魔化せない。しらを切るなら、言ってあげよう。君はいじめられていたと、世間では報道されていたね。いじめらていたというなら、そもそも、あんな場に出ることなど出来ない」


「ただの状況証拠じゃないですか」


「ただの状況証拠? 充分なの間違えだよ。それを交えて、不自然な点を大きく2つ言わせてもらう。


1.大げさな報道

報道者が学校を大々的にライブ中継する事が出来るのかい?

確かな証拠がなければ、例え報道者でも、誤ったものだったではすまされないものだ。

その前提では確かにいじめはあったのだろう。

学校側も揉み消した真っ黒な物が。発言の否定もなく、あの報道が終わったのだからね。


2.1を加味してのいじめらているという事実の違和感


そうなると、不自然なんだよ。いじめはあった。

だけど、凄惨な内容のはずなのに、自らで行動できるのかと?

報道での証拠も筋違いではなかった。確固たる証拠をわざわざ得るなんてリスクをそう簡単に出来るものでは無い。

寧ろいじめられながら、そんな事出来るなんてドラマだけの話だ。

早々にバレて、いじめがヒートアップするのがオチさ。

何しろ、学校側が肩入れしていることがわかるのだからね。


このことから、ある結論にたどり着いた。君はいじめられていなく、他にいじめられていた者がおり、途中からいじめられているように、演出したと。1と2の違和感は、こう考えれば、辻褄が合う。寧ろこう考えないとおかしいんだよ。そんな事をする者がわざわざこの学校に来たんだ。めちゃくちゃにしないわけがないんだよ」


「呆れるほどの発想力ですね。仮にそれが本当だとして、どうするんですか? こいつは嘘をついていると、裁判で訴えますか?」


「いやぁ、しないよ。いくら優れた状況証拠が有ろうと、物的証拠が無ければ、不利益が出るのは私だ。それが許されるのは痴漢だけだ。本当に情けない国だ」


「状況証拠だけで全てまかり通ったら、たまったものじゃありません。結局何の手立てもない癖に、疑うだけ疑うんですね。それこそ情けないですよ」


「疑う。それは違う。」「はい?」


「別に君を追い詰めて、訴える訳ではないよ。言ったじゃないか。今の現状を壊してみたいのだと」


「勝手にやればいいじゃないですか」


「立場上それは出来ないよ。学校を運営している身として、自らがそれをすれば、働いている教師に面目が立たないよ。難儀な状況なんだよ。だからこそ君には、この学校を破滅へと導いて欲しい。そうでなくは、困る。いや、本当は何か企みがあるのだろ?そうに決まっている。このままじゃ退屈でどうにかなりそうなんだよ」


 狂気的な行動原理に平静が崩れそうになる。

もはや、鏡を見ないと自分の顔をがひきつってないと信じられない。

正直、これ程気圧されるのは、阿多谷父の時以来だ。

自分の立場に重きを置いていながら、それを壊す者を望んでいるなんて、明らかに普通の思考回路ではない。


驚くべきことは、当てずっぽうで喋っているようで、違和感を元に、筋の通った考え方をしていることだ。

現に、大元の真相を当てられている。

当時の関係者ではないので、大した問題にはならなかったが、もしも近しい立場にいたら、確実に障壁となっていた。


計画の破綻もあり得た話だ。これなら、一貫して狂っていた方がまだましだ。

自分の渇望を溢れさせながら、立場というもので申し訳程度にコントロールしている。気色悪さなら、阿多谷の父以上だ。




 身構えていることを悟られたのか、落ち着いた表情に戻り、語りかけてきた。


「そんなに酷い顔だったかい?いやぁ、ごめんね。夢中になると、我を忘れてしまう。別に君をどうこうするつもりはない。かといって、協力も表だって出来ない。言った通り、この状況を壊して貰いたい。その邪魔を私はしない。それがわかっているだけでも君の計画は相当やり易いものになることだろう。その延長線上で、いじめ撲滅委員会を目指してくれ」


「何勝手にやるみたいな流れにしてるんですか?やりませんよそんな事」


「君も強情だなぁ。まぁ、決まっているようなものだ。楽しみしているよ」


「もうこれ以上話しても、意義を感じません。自分はこの周で出ます」


青空校長の言っていることが全て事実であるのなら、確かに言われている計画とやらは遂行しやすいだろう。

元々は敵対するだろうと踏んでいたのだから。

しかし、だからと言って、鵜呑みにするのは、危険すぎる。


もっと言えば、こいつに情報をあまり開示したくはない。

快楽主義者ということで、バレたとしても、痛手になることはないと肌身で感じた。

そこは不思議だが、すんなりと受け入れられる。


では、何故協力を促さないか。奴が協力は出来ないと言っていたからという理由ではない。

そもそも、協力したいと言っていても受け入れなかっただろう。

それは、感情的ものだ。ただ、あいつとは一緒に行動したくない。


あいつは俺とは違う。一緒でたまるかという単純な理由だ。

誉められた人生では無いのは、否定しない。

だが、あいつ程に、自分の欲望に貪欲いや、違うな。

歪では無い。


自分の行動に一貫性はあるつもりだ。

立場だのどうこう気にする癖に、気持ち悪いこと考えてやがるあいつとは違う。

例え、下らない意地だと思われようと、揺るがない。

敵でないというだけで、充分だ。


「それでは失礼します」


「ああ、私も降りるよ。君がいない観覧車に乗っても、退屈だからね」


 観覧車に出た矢先に校長が喋りだす。


「後、向井間君。最後に言いたいことがあった」


「急に何ですか?」


「話し合いの為に観覧車を三周するのはどうかと思うよ」


「…。」


「あれ? おかしな事言った?」


「…至極まっとうです」


「じゃあ何で黙るの?」「仕方ないじゃないですか! ! 他に都合のいい場所が見つからないんですから! ! 急にまともにならないでください」


「あ、ちょっと。ねぇ。…行っちゃたよ」


ああ、本当に調子狂う。


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