自作台本『感情の意味?』
『ごめんなさい』
彼女は私にそう言った。
謝罪……。
『本当に申し訳こざいません』
女の横に立っていた男が頭を下げる。
行動でしめす誠意。
何を謝られているのか?
そんなことはもうどうでもよかった。
謝られているのだからもう許すしかないのだろう。
けれど、彼らは本当にそう想っているのだろうか?
感情とは自然に湧いてくるものだ。
悲しみも
感謝も
そして謝罪も。
けれどこの2人から
私はそういったものを感じとることはできなかった。
それはただ言わされているようにしか見えなかった。
けれど、これ以上言葉を発しても。
帰ってくる答えは
『ごめんなさい』 『申し訳ございません』
その言葉だけだ。それがわかっていた。
こちらが何かを言えば、それは向こうからしたらクレームなのだろう。
こちらに何も言わさないために必死に謝罪の言葉を連呼し、頭を下げる。
その謝罪は本当は私への謝罪でははく、自分たちを守るための行為なのだろう。
そういう空気が読み取れたから、彼らから何も感じ取れなかったのかもしれない。
私が本当に知りたかったのは
なぜ? そうなったのか?
という答えの言葉が聞きたかっただけなのに。
感情の無い繕っただけの謝罪ほど、こちらの心を逆撫でする行為はない。
(……ああ、やっとわかった。これがクレーマーの心理なのだと━━━━━)
謝罪の言葉と頭を下げる2人の男女を背に
私は黙ってその場を離れることにした……。