サイドストーリー~カロン~
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僕は、生まれてからしばらくは孤独だった。
伯爵家出身の母上は僕を産んだ後、すぐに亡くなった。
なので、僕は顔すら知らない。
伯爵側の祖父母は生きていたが、孫ではなく、王子として接してきた。
それ自体は、大変好ましいことである。
孫を利用し、成り上がるつもりがないということだから。
それは頭ではわかっている……だけど、寂しかった……。
父上は優しくはあるが、滅多に会えない。
あまり会うと、第1王妃がうるさいしね。
第1王妃は、第1王子と第2王子の母親だ。
兄2人とは、そもそも会うこともないしね。
つまり、僕だけが一人ぼっちということだ。
そんな時だった、シグルドに出会ったのは。
シグルドは、周りのみんなが遠慮する中、僕を個人として扱ってくれた。
それが、どれだけ嬉しかったか。
一度も言ったことはないが、勝手に兄さんのように思っている。
そしてその後、1人の少年と仲良くなる。
それがアキトだ。
最初は、父親に言われ、とり入るつもりだろうと思っていた。
だが、接していくうちに、そうではないと思い直した。
今では、唯一信頼できる友だ。
そして年頃を迎えた僕は、うんざりすることになる。
女性から見合い話や、告白をされまくることになる。
いや、自慢かよ!と言いたくなるのはわかる。
でも、考えて欲しい。
毎日毎日、見合い話が届く。
これに関しては、僕が母親がいないので、狙い目なのも理由だろう。
そして学校に行けば、囲まれて自由がなくなる。
そして男の子には、妬まれて寄ってこない。
嫌になるのも、仕方ないと思わないか?
そんな訳で、サユリさんの提案を受け入れることにした。
僕にとっては、渡りに船だった。
自分の名誉には興味ないから、振られたことにすればいいし。
その後は、穏やかな日々だった。
相変わらず女性には迫られたが、減りはした。
男友達も、出来なかった。
だが、それでも以前よりは、全然良かった。
そして、彼女に出会った。
ある噂を聞いて、僕は訓練場に入った。
そこには背筋を伸ばし、一心不乱に素振りをする女の子がいた。
僕は初めて、女性に見惚れていた。
そして、興味が湧いたので、話しかけてみる。
すると、どうだろう。
凛々しい顔が一転して、明るく可愛い顔になる。
表情がコロコロ変わり、面白い。
しかも、僕を知らないと。
さらに、知ったあとも女性特有の雰囲気は出さなかった。
もちろん彼女が若く、そういうことを知らないということもある。
だが、なんとなくだが……この子は変わらない気がした。
そして知り合ってからも、エリカさんは変わることはなかった。
どうやら、僕の勘は当たったらしい。
さらに、嬉しい誤算があった。
彼女は、芯も強い女性だったことだ。
嫉妬やイジメの対象になると、心配していたが、自らはねのけたようだ。
最悪の場合、僕が手を引くか、鎮静するか考えていたが……杞憂だったようだ。
そして、僕はエリカさんに惹かれていくことになる。
人の悪口も言わないし、話してても楽しい。
彼女の家のことは、大体聞いた。
なので、疑問だった。
どうして、そんなに捻じ曲がることなくいられる?と。
そしたら、エリカさんは言う。
ユウマお兄ちゃんのおかげだと。
お兄ちゃんは、わたしが落ち込んでいると、いつもそばに来てくれたと。
僕は羨ましいと思った。
僕も出来ることなら、兄と仲良くしたかった。
まあ、これからでも遅くないかな?と思った。
しかし、あの事件が起きてしまった。
兄達と会う事は、二度とない。
その日は、エリカさんをデートに誘った日だった。
僕は周りに人がいないのを確認し、声をかける。
「エリカさん、ちょっといいかな?」
「カロン様?はい、大丈夫ですよ」
「今日、帰りに出掛けないか?」
「ふえ?わ、わたしとですか?」
「ああ、今日はアキトも実家に呼ばれていないしね」
「ふ、二人っきりってことですか?」
「まあ、護衛はつくけどね。嫌かな?」
「そんなことありません!嬉しいです!」
「そうか、良かった。断られたら、落ち込むところだった」
「ふふ、カロン様でもそんなことあるんですか?」
「それはあるさ。可愛い子には特にね」
僕は真っ赤になったエリカさんの手を引き、歩き出す。
そして一度手を離し、2人で街を歩いた。
「わー!ここ初めて来ます!へー、綺麗なドレス……」
エリカさんは表情を輝かせ、マネキンが着ているドレスを見ている。
こういうところは、女の子なんだなと思った。
「あ!今、なにか良からぬことを考えましたね?」
「……よく、わかったね?」
「だって、お兄ちゃんが私をからかう時と、同じ顔してますもん!」
「ははは!そうか、ごめんごめん」
その後も、楽しく過ごすことが出来た。
そして、エリカさんが僕の手を引き言う。
「カロン様、こっちが近道なんですよ!行きましょう!」
「おいおい、行くから引っ張らないでくれ」
僕は満更でもなく、大人しく手を繋ぎついていく。
そして、狭い路地裏を進んでいた時、背中に激痛が走った。
何が起きた?と思った時には、僕は意識を失くしていた。
そして目が覚め、アキトから事の顛末を聞かされた。
父上の信頼の厚い近衛が、一斉に裏切ったと。
さらには、グラム伯爵まで。
兄2人と、その母親も亡くなったと聞かされる。
僕は、何故助かったか聞いた。
そして、何よりエリカさんは無事かと。
ユウマさんの忍びである、シノブさんが助けてくれたそうだ。
さらには、エリカさんとエリスさんが、僕を治してくれたと。
本当に、あの家族には頭が上がらないな……。
きちんと、お返しをしなくてはならないな。
そして、アキトにも涙ながらに謝られた。
私が側にいれば!と。
だが、正直いなくて良かったと思ってしまった。
アキトまで、死んでいたかもしれないのだから。
僕は再び眠り、起きると誰もいなかった。
なので、これからのことを口に出して考えてみた。
「僕しかいないということは……王太子に?まいったな……理解が追いつかない」
「エリカさんとお付き合いをしたいが……王妃ということになるのか?受けてもらえるのか?」
「いや、その前にまずいな……ティルフォング家が動くか。サユリさんと話さなくては……」
とりあえずは回復して、父上と話し合うことだな。
僕はそう思い、焦る気持ちを抑え、眠りについた。
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