シノブはお姫様?
新たにブックマークをしてくれた方、ありがとうございます。
俺は情報の多さに戸惑いつつも、なんとか言葉を発することが出来た。
「い、今なんと?王子?シノブの婚約者?シノブは姫?……もう、何が何だか……」
「ええ、そうでしょうね。とりあえずは、場所を変えましょう」
俺達は衝撃に包まれながらも、大人しくついて行く。
そして、一際立派な茅葺屋根の家に、たどり着いた。
「ここが、長の家です。行きましょう」
「お、お邪魔します」
いきなり、長の家?
姫……まさか、そういうことか?
そして渡り廊下を進んでいくと、門番?らしき人がいて、その横に襖がある。
「これは、ゴラン殿。いらっしゃいませ。貴方が、人族の案内役とは……」
「ああ、ご無沙汰ですな。長に会いたいのだが、良いだろうか?」
「ええ、もちろんでございます。今その話で、もちきりですから」
「だろうな。シノブ殿が、惚れ込んだ男が来るのだからな」
「ええ、そうです。まあ、とりあえずどうぞ」
襖が、開けられる。
和室の大部屋のようだ。
そこには、黒装束の人達が沢山いる。
そして、何やら口論をしているようだ。
「どうする!?もう来るぞ!?」
「どうするもあるか!?姫を拐かした人族だ!滅殺だ!」
「だが、姫様が自分より強いという人族だぞ!?勝てる奴はいるのか!?」
「いや、ここは我等の本拠地だ。長なら勝てる筈だ!」
あー……なんか、すごい事になっている。
滅殺に、拐かすって……物騒なことだ。
まあ、今の俺なら、叔父上クラス以外なら負ける気はしないが。
「静粛に!!お客様がいらっしゃいましたよ」
大部屋の奥の、一段高いところに座っている、着物の女性が言い放った。
俺達は、中央へ歩いて行く。
「どうも、ヤヨイ殿。お久しぶりです」
「ええ。ゴラン殿も、元気そうで何より」
そしてその女性は、俺達を鋭い目つきで見てくる。
「で、私の娘が選んだ男は、どの殿方かえ?」
やっぱり、そうか……。
長の娘で、姫ってことか。
それに、この女性……シノブにそっくりだ。
もちろん、漂う色気は桁違いだが。
シノブも、将来こうなるのか。
いかんいかん、今はそれどころではない。
「お初目にかかります。デュラン国で恐れ多くも、伯爵の地位を承っている、ユウマ-ミストルと申します。シノブには、よく助けられています」
「ほう?そなたが、そうかえ?……強いのう。妾でも、勝てるかどうか……」
「な!?長でも勝てないと!?」
「そんな馬鹿な!?人族だぞ!?」
「だが、さすがは若手最強と言われた、姫が選んだ男か……」
「ええい!静かにせんか!話が進まんわ!」
ヤヨイ殿がそう言うと、静かになった。
うーん、女性が強いのは本当のようだ。
「すみませんが、シノブからは何も聞いていないのです。なので、せつめ」
「ユウマ、お話中申しわけありませんが、よろしいですか?」
「おいおい、ホムラ。今大事なところだぞ?」
「ええ、だからこそです。……もう、シノブったら……これのことだったのね。これ、シノブからですわ」
ホムラは、俺に紙を渡してきた。
「ん?シノブから?申しわけありませんが、少々お時間をいただきたいのですが……」
「ええ、構いません。読んでくださる?」
俺は黙って頷き、中身を読む。
「団長は、今頃どこですかね?わたしの里には着きましたか?えへへ、実はわたしは里の時期長候補だったのですが、家出をした娘なんです。婚約者がいたんですけど、なんかピンとこなくて。良い人なんですけどね。でも、無理矢理進めようとするので、里から飛び出したんです。今まで、黙っていてすみません。団長は、ただでさえ色々抱え込んでいたので、言えなかったんです。でも、今の団長なら大丈夫だと思います。とゆう訳で、喧嘩を売られたら、薙ぎ払っちゃえ!!以上、貴方の愛してやまないシノブより……テヘ、団長頑張って!」
なんじゃこりゃゃゃ!!!
この軽い文章は!?
いや、まあ、あいつらしいけど!!
色々と大事な部分が、欠けすぎじゃね!?
何が大丈夫で、薙ぎ払うの?どゆこと?
テヘってなに?丸投げなの?
「はぁ、あの子らしい手紙なこと」
「あ、やはり昔からですか」
「ええ。奔放で、自由で、わがままな子。でも優しく、明るくて、みんなを笑顔にしてくれる子」
「……ええ、よくわかります。俺は、それに何度助けられたか」
「そなたは、シノブと契りを結びましたかえ?」
「いえ、まだです。シノブは気にしないと言うのですが、私個人としてはそうはいきません。きちんと、ご両親に挨拶をしてからが筋だと思いましたので」
「そう……良い心がけなこと。では、決闘と参りましょう。ゴラン殿、よろしいかえ?」
「ええ、願っても無い。私も、きちんとしないと先に進めませんから」
「うむ。では、外にでましょう。ユウマとやらも、いいかえ?」
「ええ、望むところです。シノブは俺の女です。誰であろうとも、渡すわけにはいきません」
「……我が娘ながら、良い男を捕まえたわ。では、皆の者。行きましょう」
俺達は家を出て、集落の中央広場に着いた.
そこには、大勢のヴァンパイア族が待っていた。
「さて、皆の者!ここにおるのは、シノブが選んだ男!今から、ゴラン殿と決闘をする!決して、邪魔をしてはならぬ!いいかえ!?」
ヴァンパイア族達は、黙って頷いている。
うーん、種族性が出ているな。
獣人族とかだったら、ウオオ!とか叫ぶところだ。
「では、双方距離を取り対峙せよ」
俺とゴラン殿は、言われた通りにする。
「まさか、ゴラン殿と戦うことになるとは……」
「騙したみたいで、申し訳ない。シノブ殿が見込んだ人を、この目で確かめたかったのです」
そうか……ゴラン殿は、シノブのことを……。
「いえ、気にしないでください。で、どうでした?」
「……悔しいですが、尊敬に値する人物かと。部下にも慕われ、自身もその強さに驕ることなく礼儀正しい、頭の回転も速い。認めるしかありません。あとは、実際に拳を交えるだけです」
「はは、それなら良かったです。じゃあ、始めますか」
ちなみに、俺は武器を使わない。
ミストルティンは斬れ味が良すぎて、加減が出来ない。
それに、今回は勝つことが目的ではない。
あくまでも、俺がどのような人物かを、闘いを通して知ることだろう。
「ええ。ですが、肉弾戦ではすぐに終わってしまいそうですね?」
まあ、普通に考えたらそうだよな。
亜人最強と言われる、鬼人族と素手で戦うとか。
どんな無茶振りだよ!?って話だ。
「おや?あんまり舐めてもらっては困ります。まあ、見てて下さい」
俺の魔闘気は実戦を得て、ほぼ完成したと言っていいだろう。
今なら、魔力の移動もスムーズに行えるはず!
俺は静かに膨大な魔力を溜め、それを身体から解き放つ!
「ウラァァ!!」
「な、なんと……魔力を纏うだと?しかも、可視化出来るほどの膨大な魔力……まるで、ヴァンパイア族の真祖化のようだ」
「さあ、これでどうです?勝負になりませんか?」
「ククク、ハハハ!!いいでしょう!では、手加減はしませんよ?」
「ええ、手加減したらミストルティンでぶった斬りますから」
さて、威勢良く言ったものの、剣なしの肉弾戦でどこまでやれるかね?




