ハルカ義姉さんの相談
俺が男爵の爵位を継いで二か月ほど経ったある日こと、別館に住むハルカ義姉さんが珍しく訪ねてきた。
「どうしたんですか?誰か文句でも言ってきましたか?」
義姉さんの立場は微妙だ。
兄貴が死んで未亡人であるが、そのまま我が家に住んでいる。
それを良くは思っていない人もいるようだ。
兄貴は嫌われていたので実際に追い出したらと言ってきた人もいた。
ユウマ様の初恋相手が自分だからって甘えているんだわとか、次はユウマ様を狙っているんじゃないの?とか言われるらしい。
もちろん義姉さんが俺に言うはずないのでシノブが教えてくれた。
まあ俺としては下心はないが、初恋の女性というのは特別なので邪険には扱えないというのが本当のところだ。
俺としてはもっと昔みたいに仲良くしたいが、また何か言われたら可愛そうなのでなるべく関わらないようにしてきた。
ハルカ義姉さんも俺の立場に遠慮をし訪ねてくるのは初めてだったので俺は何か重大なことが起こったに違いないと覚悟してそう聞いてみた。
目を伏せながら「ええ、実は相談があって・・・迷ったんだけど色々な人に聞いたらユウマ君に聞いた方がいいって言われたから・・・」
俺は優雅に紅茶を飲みながら「任せてください!俺にできることでしたら力の限り協力しますから」
「ホント!?じゃああのね・・・思い切って聞きたいんだけどアロイスさんって彼女とかいるのかしら?」
「ぶはぁ!?ゴホゴホ!?」紅茶を飲んでいた俺は咽せた。
義姉さんが近づいてきて「ちょ!?大丈夫!?ほら、じっとして。拭いてあげるから」
「あ、すいません。うー鼻が痛い」
「ふふ、昔はよくご飯やお菓子で汚れたのをこうやって拭いてあげたわね」
俺はドヤ顔で「ええ、俺はそれ目当てでワザとやってたこともありますから」
微笑んで「あら、中々の策士ね。お姉さん騙されたわ」
「まあ、ほとんど素で汚してましたけど。で、えーとアロイスがどうとか聞こえたんですけど」
すると頬を染め「えっとまだ夫が死んで二カ月なのに節操ないと思われるけど、もうあの人とはシズクを妊娠してからその・・・一回もしてないし。私が妊娠中にバルスは使用人に手を出すし夫婦関係は破綻してたしね」
「それについてはミストル家を代表して謝らせてもらいます。ほんとにどうしようもない奴で。そういえば一度も聞いたことがないというか、当時は聞きたくなかったですが政略結婚なのは知っていますが断ったりはできなかったのですか?」
「いえ、私のほうこそユウマ君が家を出る一因を作ってごめんなさいね。そうね、幼馴染ではあるけど完全なる政略結婚だったわね。ただ私は準男爵の出だし、私の父はランド義父様の部下だったし断れないでしようね。もちろん、私もそのままだと大分年上の伯爵様や子爵様の後妻か側室としてめとられていたでしょうから、バルスなら一応正妻だしってことで受け入れていたわね。初恋相手のお姉さんがこんな女でがっかりさせてごめんなさいね」
「いえ!そんなことはありません!俺の中ではハルカ義姉さんはいつだって俺やエリカに優しくしてくれました。親父と兄貴が良い顔しないのに。でも、そうですか・・・そうゆう事情が」
「ふふ、実は今だから言うけど生前父はユウマ君と結婚させたかったみたいよ?ユウマ君のが優秀だし、人柄も良いしと。ただ年齢が離れてることとランド義父様に許可を得られるわけないから断念したみたいだけど」
「え!?そんなことが!?むむ、何故俺はもっと早く生まれなかったんだ!」
「あのー、ユウマ君。自分で言っといてあれだけど後ろのシノブちゃんが物凄い恐い顔してるんだけど」
気配を消して黙って控えていたシノブは「いえ、ハルカさん。気になさらずに。団長のこれは一種の病気ですから」
「そ、そうなのね。まあでも私もユウマ君を弟としか思えなかったからどっちにしろダメね」
「まあ、それは気づいていましたから。諦めはとっくについてます。今はシノブみたいな可愛い子も側にいますしね」
「あらあら、今度はシノブちゃんの顔が真っ赤よ?ふふ、いいわね。若いって」
「ハ、ハルカさん!?赤くなってないですよー。いつもの冷静沈着なシノブちゃんですよー」
「いやお前が冷静沈着だったことなんかないから。えーと、話が逸れましたね。俺の知る限りアロイスには特定の女性はいないですね」
「あら、そうなの?モテそうなのに」
「え?モテそう?アロイスが?なるほど・・・義姉さんはそうゆうタイプですか」
「なんか昔からみんなに変ねーって言われるのよね。何故かしら?逞しくて素敵じゃない」
「ははは・・・義姉さん、アロイスが巷でなんと呼ばれているか知ってますか?」
「いや知らないわ。なんて呼ばれてるの?」
「通称泣く子も黙る鬼のアロイス。あまりの恐ろしさに赤子が実際泣き止んだり、びっくりした人が気絶したりしてます。ははは!でも本人はとても繊細なので傷ついているのです。あーウケますよね」
「団長、気持ちはわかりますがその辺で。確かに私も最初見たときは犯されるー!とか言ってしまいましたが」
「俺も最初声かけられた時はちびるかと思ったよ。てかお前のがひどくね?」
義姉さんは「泣く子も黙る・・・素敵ね」
俺「え?」シノブ「はい?」
「まあ、とりあえずアロイスさんに特定の女性がいないとゆうことがわかってよかったわ。後は私がどう行動するかね。シズクもいるし色々考えなきゃだけど。じゃあ、そろそろお邪魔するわ。相談に乗ってくれてありがとね」
そう言って義姉さんは去って行った。
「団長、物好きというかなんというか・・・そうゆう人もいるんですねー」
「言うな・・・流石の俺も少なからずショックを受けてる」
そして2人で「あのどうみても山賊にしか見えないアロイスをねー」と声を揃えた。




