親父と兄貴戦死する
「え?親父と兄貴が戦死したって・・・」
俺は急に実家に呼ばれ、母上に開口一番にそう告げられた。
「そうです。夫ランドと長男バルスは此度の魔法国ウィンドルとの戦争において、昨夜亡くなったと連絡がありました」
「そうですか・・・ちなみに原因は?」
「敵の敗走に見せかけた罠にかかり、魔法による奇襲にあったそうです」
「そうですか・・・母上には申し訳ないですが、知ってのとおり俺はあの親父と兄貴には散々な目に遭わされたので特に悲しいとは思いませんけどね」
俺はもちろん死ねば良いのにとは思ったことはないが、自分でも驚くほど悲しくはなかった。
「ええ、わかってます。貴方が私やエリカのためにずっと我慢してきたことは」
母上は複雑な顔をしながらそう言った。
「そうですね、親父は剣の腕前はなかなかだけどすぐ怒鳴るし殴るし威張るし。しまいには母上みたいな美人で気立ての良い奥さんがいるの浮気ばっかだし。兄貴もやれ口をひらけば爵位は譲らんぞ、おまえは俺のスペアだ、いくらおまえが優秀でも次男だからなと似たような内容を物心ついたときから言われてきましたし。しかも俺の初恋のハルカさんと結婚するし」
俺は昔を思い出しながらそう告げた。
「ええ、わかっています。あの人も昔はあんな人じゃなかったんですけれどね・・・。恐らく剣一本の人だったので準男爵から男爵に昇格したことにより慣れない貴族間の政争や軍の内部闘争により少しずつ変わっていってしまったんでしょうね・・・。バルスも悪い子ではないのですが貴方の方が明らかに優秀だったので不安だったのでしょう・・・。私もそんなつもりはなかったのですが私と同じ回復魔法の才能がある貴方を特別可愛がっているようにみえていたでしょうしね・・・まあハルカさんついてはなんとも言えないけど」
母上は目に涙を浮かべながらそう呟いた。
「ごめん、母上にとっては夫と息子だもんな。俺の言葉が悪かったよ」
「いいのよ、あなたにとっては良い父良い兄ではなかったものね」
母上はそう言うと涙を拭って、この話はおわりと言った。
そして真剣な表情で俺にこう告げた。
「それで戦死した父と兄に変わり、貴方にミストル男爵家を継いでもらいます」