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身内の尻拭い、妹の悩み

俺は昼食を終えたあと、ある特定の使用人達を執務室に呼び出した。後ろにはセバスとシノブが控えている。


「えーと、よく来てくれた。まあなぜ自分が呼ばれているか理解してない人はいるかな?」


俺は理解してるのを確認し、できるだけ穏やかな口調で告げた。


「そう、ここにいるのは親父か兄貴が手をだした人達だ」


「え?あなたも?」「え?どっち」「やっぱり叱られるのかしら?」とざわざわした。


「はい、静粛に。別に罰を与えようって訳じゃない。俺の個人的な感情は別として貴族にはありがちなことらしいからな。あと調べたところ、自分から積極的に言い寄って関係を持ったわけではないというのはわかっている。親父と兄貴から手をだした・・・。すまん、ちょっと俺も昨日母上から聞いたばかりでな・・」


セバスが「心中お察しいたします」と飲みものをくれる。


「ふう。それですまないが皆解雇ということにした。そもそも親父が見栄をはっただけで、当家は使用人こんなには必要ないからな」


「そしたら生活は?」「明日からどうすればいいの!」とまたざわざわ。


「静かに。確かに親父と兄貴から手をだしたがそれを享受した貴方達にも責任がないとは言わせない。中には美味しい思いもした人もいるみたいだしな」と言うと何人か俯いた。


「だが、それではあまりにもということで俺の懐から退職金としていくらかの現金と他家への紹介状を渡すのがこちらが最大限提示できるものだ。そもそも親父や兄貴がいない状態で母上やハルカ義姉さんと暮らすのはそっちが嫌なんじゃないか?」


「それならなんとか」「助かります」「確かに気まずいです」


「はい、じゃあそうゆうことでいいかな。詳しいことはメイド長のクリスから後で各自に連絡がいくと思うのでそれまでは待機しててくれ」


皆がそれぞれ複雑な顔をしながら出て行った。


そして人気がないのをシノブに確認してもらい「セバス、あれでよかったのかな?やっぱりあんまり気分のいいものじゃないな」


「ユウマ様、確かに一件冷たいようにも見えますがこれが双方にとって一番いいことだと私は思います。今はよくても後々問題が起こることもございますし。このセバスも微力ながらお手伝いいたしますので少しずつ慣れていきましょう」


「セバスがいてよかったよ。うちがギリギリのところで破綻しなかったのはセバスのおかげだな。ありがとな。これからも頼む」


セバスは微笑み「はい、では厳しくいきますんで覚悟なさってくださいね?」


「はは、ほどほどで頼む」


俺はそのあとセバスに書類の書き方などを教わったり。赤字をどうすればなくなるかを相談したり。妹が可愛すぎる点について相談した。最後とても大事!


あっという間に時間は過ぎていき、日が沈むころ王城専用の配達人がきた。


「ふむ、継承の件了承します。つきましては3日後の昼の鐘が鳴った後王城にこられたし」


俺は確認をしてすぐに了解の旨を認めた返事を配達人に渡した。


「ユウマ様、家庭教師の方も明日から来られるそうですがいかがなさいますか?」


「それじゃ、明日の午前中に頼む」


「かしこまりました」


そのあとは親父と一緒に亡くなった家臣の遺族達に生活の保障のためのお金を算出したり、何人か解雇したので一か月雇用にいくらかかるかを確認したりした。


するとドアを叩く音がきこえ「お兄ちゃん、入っていいー?」「もちろんだ、可愛い妹よ」


セバスがドアを開けてあげ「えへへ、お邪魔します」と言いソファーに座った。


シノブがエリカさんもお菓子たべます?とか聞いてる。いたのかお前。


「わぁーい、いただきます。おいしー」


「おーい、夕飯前にあんまり食べるんじゃないぞ。それでどうした?」



「はーい、分かってます。えーとね、ちょっと相談があって・・・」


セバスとシノブが顔を見合わせて私達は席を外しましょうかと聞いた。


「あ、2人なら大丈夫です!あのねお父さんとバルス兄さんがいなくなったでしょ?それで私はこれからどうしたらいいのかなぁって・・・うーん」


俺たちはエリカの言葉をじっと待った。


「お父さんはわたしを爵位の高いおじさんと結婚させようとしてたでしょ?お母さんとお兄ちゃんが反対してよくお父さんと喧嘩してたよね。だけどわたしはわたしの所為で家族が喧嘩するのは嫌で、でも知らないおじさんと結婚するのも嫌でいつもどうしていいかわからなかったの。でも最近もう諦めてたの。だってじゃないとお兄ちゃんがわたしのためになにをするかわからなかったから・・・」


「エリカ・・・」「まあ、団長ならやりかねないですねー」「お嬢さま・・・」


「あ、でも違うの!それ自体はすごく嬉しくて・・・でもわたしが嫌だったの。大好きなお兄ちゃんの重荷になるのが」


「バカ言うな。おれがおまえを重荷に感じることなんかあるわけがないだろ」


「えへへ、お兄ちゃんならそうゆうと思ってたけど。でもそれが無くなったでしょ?そしたら自分がこれから何をしたらいいのかわからなくなって・・・」


「ふむ、エリカはこれまで流されて生きてきた。だが、それはエリカの所為ではない。全ては俺を含めた家族の所為だ。エリカが家族の仲をどうにかしようと自分の希望や願いを押し殺して頑張っていたのを俺は知っている。だから俺もギリギリのところで我慢できていた。エリカがもしいなければ母上には申し訳ないが俺はとっくに縁を切っていただろう」


エリカは顔を歪め「お兄ちゃん・・・わたしもお兄ちゃんいたから頑張れたよぉ」


「あーつまりだ。俺が言いたいのは好きに生きろってことだ。親父達に女には必要ないって言われた勉学に励むのもよし、剣術に励むのもよし、適性はないが回復魔法覚えるもよし。ただひとつ言えるのはこれからは全部自己責任ということだ。自分で決め、自分で行う」


エリカは顔を伏せ「自分で決めて、自分で行う。自己責任・・・そうか」


「そうだ。そして俺はエリカが決めたことを全力で応援する。それだけだ」


エリカは顔を上げ「うん、なんとなく見えてきたかも。お兄ちゃんありがとう!」


「ふ、可愛い妹のためだ。なんてことはない。いつでも相談に来なさい」


「うん、じゃあまた後でね。お仕事中にごめんね!」


「ああ、気にすんな」


妹は多少スッキリした表情で部屋から出て行った。


「団長、かっこよかったですよ」「ユウマ様、ご立派でした」


「よせよ、照れるわ。んじゃ俺もこれ書いて食事にするかね」


俺はその後夕飯を食べたあと風呂に入り、自室のベットに寝転んだ。


シノブが横に立ち「ふふ、話にはよく聞いていましたが人の気持ちを考えられるとてもいい子ですね」


「だろ?自慢の妹だからな」


「自分で決め、自分で行うか・・・」


「どうした?」「いえ、なんでもありません。ちょっと考えさせられただけです」


「そうか、んじゃおやすみ」「ええ、お休みなさい」


そうして夜は更けていった。





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