叔父上に胸中を吐露する
俺は叔父上を連れて人気の無い一室に入った。
「なんつーかお疲れさん。すまんな、押し付けちまって」
「いや、いいですよ。確かに大分予定とは違うけどこれはこれで。俺が当主なら妹も変なオッサンと結婚することも無くなったし」
「くくく、相変わらず妹思いだな。まあ確かに久々に会ったがエリス義姉さんに似て可愛くなってたな。ありゃそのうち周りがほっとかなくなるわな」
「やっぱりそう思いますよね!?むむむ、今のうちに当主権限で変な虫がついてないか調べるか?」
俺がブツブツ言ってると、叔父上が話しかけてくる。
「おーい、帰ってこーい。たく、しょうがねぇーなお前は」
「ええ!これだけは叔父上であろうとも譲れません」
「わかったよ。でなんか俺に話があるんだろう?」
「いやこんな話叔父上にしか言えないけどさ、俺2人が死んで喜んだりはしないけどどっちか片方が生き残らなくてよかったと思ってさ・・・」
叔父上は険しい顔をしている。
「ふむ、それはどうしてだ?」
「だって親父が残るにしろ兄貴が残るにしろ家中で揉めること間違いなしじゃない?」
「まあ、それは間違いないな」
「で、親父が生き残った場合俺に継がせたくはないだろうから妹に無理矢理婚約させてそいつを跡継ぎにするとか言いそうだし、バルス兄貴が生き残った場合、兄貴も家臣や使用人に対して態度悪いから好かれてないし、家臣たちは今までは親父がいたから言えなかったけど俺を跡継ぎにって言い出すだろうし。でも俺兄貴はともかくハルカさんやシズクとは争いたくないしさ」
「うわー、ランド兄貴言いそうだな。バルスも兄貴に似て性格ねじ曲がってるしな」
「俺からしたらなんで何かしてもらったらありがとう、悪いことしたならごめん、家臣が良い仕事したらよくやったとか当たり前のことが言えないのか不思議でしたよ。まあでもどっちか生き残らなくよかったなんて思う俺もろくなもんじゃないかもね」
「ユウマ、ろくなもんじゃないってことは違うぞ。あくまでお前は皆に争ってほしくないという優しさからきてるんだからな、そもそもあの扱いされたらそう思うのもしょうがねぇし」
「叔父上・・・」
「くくく、いやしかしお前は息子じゃないが俺に似てるな」
「どうゆうことですか、叔父上?」
「今まで話したことないがな、実は俺も状況は大分違うが似たようなことで悩んでた時があったんだよ」
「俺は知ってのとおり兄貴と13も歳が違う遅くに出来た子供でな。母上は高齢出産で体調を崩し俺が5歳の時に亡くなった。んで、遅くに出来た子供だったんで親父は俺を可愛がったわけよ。おまけに剣の才能まであったからな」
叔父上は真剣な表情で告げる。
「俺は一生忘れないだろが、俺が13歳のときに、病に侵され死期を悟った親父に生涯で一度だけお前爵位を継ぐ気はあるか?って聞かれたよ」
俺は初めて聞く話に息を呑んだ。
「それで、叔父上はなんと?」
「そんときはさすがに決められず、一日時間くださいって言って自分の部屋で色々考えたよ。兄貴はもう結婚してバルスもお前も生まれてたから爵位継げないってなったら生活どうすんだとか、エリス義姉さんには可愛がってもらったしとか、あの頃はお前はもちろん可愛いがバルスもまだ可愛かったしな」
叔父上は一度大きく息を吐いた。
「でも俺が当主になれば不当な扱いを受けている家臣や使用人を助けることができるのかとか思ったり。実際是非当主に!と何回か言われたしな。でも間違いなく骨肉の争いになると思って最終的に親父には断ったんだけどな。んで、その時の俺も思ったわけよ。兄貴はともかくエリス義姉さんやユウマとは争いたくないってな」
「叔父上もそうだったんですね・・・」
「まあその1年後に親父が死んで14歳で家を追い出されるとはさすがに思ってなかったけどな。まあ兄貴も俺が15歳の成人を迎える前に追い出したかったんだろうな。いやーあれは結構ショックだったなぁ。俺は爵位さえ継がなければ兄貴と仲良くまではいかないが適切な距離感をもって付き合えると思っていたからな」
俺は頭を下げた。
「それはなんというか親父の器が小さくてすいません」
「いやいや俺も若かったし考えが甘かったんだろう。で、どうだ?少しはスッキリしたか?どうせお前のことだ、自己嫌悪にでも陥ってたんだろうが」
「叔父上にはお見通しですね。ええ、おかげでスッキリしました」
「そりゃ俺はお前の師匠でもあるしな。ほらもう良い時間だからそろそろ行くぞ。俺はクリスの飯久々で楽しみなんだぞ」
「ええ、俺も叔父上ほどではないですが久々で楽しみです。。では行きましょう」
俺達は部屋を出た。
俺は先に歩く叔父上の背中を見ながら思った。
照れ臭くて絶対言えないけど、父性を知らない俺にとっては貴方が父親みたいなものですと。