二日酔い剣聖シグルド叔父上参上!
初めての魔法が二日酔い直し・・・
俺が皆解散と言いかけたところ、ドアがバーン!と開いて、とある人物が入ってきた。
突然だが、デュラン王国には剣の国だけあって、剣が強いことが一種のステータスになる。
そこで初代国王が定めた、三年に一回15歳から参加可能な、剣のみ使用可能な大会がある。
そこで優勝した者は、剣聖の称号を与えられる。
初代国王の遺言で、次の大会である三年後まで衣食住を保障され伯爵相当の扱いを受けることができる。
だが次の大会の優勝者と戦い負ければ剥奪。勝てば防衛となる。
そして大会を三連覇した者にはその偉業を称え、死ぬまで剣聖の称号と、一代限りだが名誉伯爵を名乗ることを許される。
ちなみに建国500年の間にそれを成し遂げた者は5人しかいない。
そして何より初代国王の遺言で、三連覇するほどの人物を腐らせてはいけないということで、三連覇した者には命令拒否権が与えられる。
それは、たとえ国王であろうとも例外はない。
俺の親父もそうだったが、剣一本で生きてきた人が政治のドロドロとした部分や、軍内部のゴタゴタに巻き込まれて歪んでしまうのを防ぐためだと思われる。
なんでこんな長々と話したかというと、今まさに現れた人物がその剣聖であり、俺の叔父上でもあるシグルドその人だからだ。
シグルド叔父上は入ってくるなり、怒鳴りだす。
「ランド兄貴とバルスが戦死したって!?兄貴は弱っちいんだから無理すんなっていつも言ってたのによ・・・バカヤローが!」
「叔父上落ち着いてください。ところで叔父上に使いを行かせたところ、出なかったとゆうのですがどうなさったんですか?」
「すまん、昨日朝まで飲んでて、さっき起きて一階の飯屋に行ったら、女将に手紙預かってるよって言われて、それ見て飛んできた」
俺はため息をついた。
「叔父上、酒好きもほどほどにと申しましたよね?とりあえずそこで動かないでください」
俺は近づいて二日酔いの叔父上に唱えた。
かの者に宿る異物を取り除け、リムーブ。
「お、スッキリしたー!相変わらずお前の回復魔法は便利だなぁ」
叔父上はそう言った後、周りを見渡した。
「ところでこれは知らん顔もあるがなんの集まりだ?」
「俺が爵位を継ぐことになる予定なので、これから付き合いがあるだろう俺の家族と、冒険者仲間の顔合わせと、自己紹介をし終わったところです」
「なるほど。まあそうなるわな。兄貴とバルスが散々継がせないって言ってたお前が継ぐことになるとは、人生分からんものだな・・・」
「じゃあ、一応俺も言っておくか。俺の名はシグルド。年齢は30歳独身。剣聖の称号を持っている。ユウマの叔父で剣の師匠だ。好きなことは食うこと、寝ること、酒を飲むこと。それと強い奴と闘うことだ」
「いや叔父上を知らない奴なんているわけないでしょ?まあ、いいけど」
ちなみに叔父上は身長185センチほどで無駄な贅肉などない筋肉隆々の身体をしている。
黒髪黒目で髪は太ももあたりまであるの布で一本に縛っている。
俺はみんなが突然の乱入者にポカンとしているので、声をかける。
「ハイハイ、みんな起きて」
家族の皆がハッと我に返り「会うのなん年ぶりかしら?」「初めてお会いしました」「あー!シグルド叔父さんだぁ!」
そうなのだ。
叔父上は当主であった親父から絶縁をうけているので、この家に足を踏み入れるのは15年ぶりくらいになる。
まあ理由は至って平凡で、次男なのに自分より剣の腕がよいから跡継ぎの不安と、単純に気にくわないというなんとも情けない話である。
そしてそれこそが、俺が親父に嫌われた大きな原因でもある。
俺も次男なのに兄貴より腕がよかったので被って見えたのだろう。
なにより俺は叔父上に可愛がってもらってたし。まあそのことで叔父上を恨んだりはしていない。
むしろ親父の器の小ささを申し訳なく思うくらいだ。
まあでもまさか親父も絶縁した弟が五年後に剣聖になるとは夢にも思わなかっただろう。
まあそんな人物がいきなり入ってきたので俺以外はポカンとしてしまった訳だ。
「シグルド、久しぶりね。元気にしていたかしら?」
「はい、お久しぶりです、義姉さん。まあぼちぼち元気にやってます」
「今回夫ランドと長兄バルスが亡くなり次男であるユウマにミストル家を継いでもらう予定になりました。絶縁されたとはいえ、本来なら貴方が継いでもよいのですがどうしますか?まあ答えはわかっていますが、一応確認です」
「はは!そりゃもちろん継ぎませんよ。そうゆう柄でもないですし、ユウマなら俺と違って器用なんで上手くやるでしょう」
「ふふ、そうでしょうね。ではそうゆう話で王城へ手紙を出しておきます」
話が一区切りついたところでメイド長であるクリスが言う。
「解散の予定でしたがせっかく何年かぶりに家族が揃ったんですから皆さんで御夕飯でもいかがですか?もちろん冒険者の方々もご一緒に」
「お、いいねー!クリスばあさんの飯食うなんていつぶりだ?楽しみだぜ!」
「ええ、貴方の好物だったものを作りますからね」
皆が「いいわね」「落ち込んでばかりじゃいけないしね」「俺ら平民なんだけどいいんすかね?」
「とりあえずここにいる人の間では問題ない。少なくともこの家の中では身分差は気にしなくていい。まあ無礼講ということだ」
俺は皆が頷くのを確認して言った。
「じゃあ、夕飯ができるまで各自自由にしてくれ。俺は叔父上と話をしてくる」
俺はそう言い、叔父上を連れて部屋をでた。
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