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エピローグ




さて、あの最後の戦いから二年が過ぎた。


少々の小競り合いはあるが、概ね平和が続いている。


俺は今、国王になっていた。


は?どういうこと?と思いになるだろう。


大丈夫だ!俺も未だによくわかっていない!


そうだな……どこから話そうか……。


まずは、兄弟の話からしよう。


ゼノスはセントアレイとトライデントを統合し、初代国王の座についた。


国名は、トライセント王国となった。


あまり変わっていないなと言ったら、ど突かれてしまった。


そして、次はエデンだ。


時代が変わるということで、グランド王は王位を退いだ。


そして本来継ぐはずの長兄が、ゴラン殿を指名した。


理由は明白で、王位には武力がある俺より、知性のあるお前がつけということだった。


これからの世界には、そちらの方が必要だろうと。


確かに、会ってみたが……グラント王そっくりの脳筋だった。


ゴラン殿は、最近結婚をしたようだ。


これに関しては、俺も安心した。


最後に、デュラン国だ。


あと戦いの後、正式にカロン様とエリカが婚約発表をした。


唯一の王子と、英雄である俺の妹の婚約ということで、国中が湧いた。


俺も正式に公爵位を継ぎ、シノブとホムラを妻に迎えた。


アロイスもハルカさんと結婚した。


イージスとアテナは、一年ほど前から付き合いだした。


全く……待たせやがって。


そして、叔父上だ。


諦めないサユリさんの猛アタックに、叔父上が陥落した。


2年かかったもんな……凄い根性あるよな。


まあ、年貢の納め時というやつだ。


叔父上はティルフォング公爵家に婿として入り、当主となった。


サユリさんの父親は反対していたが、バルムンク当主が説得というか……。


ワシも当主を退くのだ、お前も退くいいタイミングではないかといったそうだ。


それでも反対していたのだが、いつの間にか当主の座を追われることになった。


いや、本当に……あの爺さんを、敵に回すのだけはやめようと心に誓った。


ちなみに叔父上が治める土地は、旧バルザールとなった。


本来治めるべき人は、皆死んでいた。


叔父上はアースドラゴンを一掃したことから、バルザールの民の間で英雄扱いされていた。


なのでデュラン王国が併合したのちに、叔父上とサユリさんがそこを治めることになった。


さて、ひとまずはこの辺りだろうか?次は俺の話か……。


俺は公爵を継いですぐに、国王様に呼び出された。


ちなみに、国王様と宰相様にだけは、生まれ変わりなどの説明はしてある。


そして、ウィンドル国内について相談を受けた。


あそこは魔物が消え去り、瘴気も弱まってきた。


さらには、弱まった瘴気を俺が浄化した。


今なら人も住めるだろう。


ただ、このまま放っておけば魔の森から魔物が入り込み、再び荒れた土地になってしまう。


なので、国を建てることにしたのだ。


そして、俺が初代国王になることに……。


ゼノス王、ゴラン王、デュラン王がそれぞれ推薦した。


そして誰からも反対がなく、いつの間にか決定事項となっていた……。


いや!成り上がるとは言ったけれども!これは違うのでは!?


……なんて俺の言葉が届くこともなく、三ヵ国会談であっさりと決まってしまう。


会話はこんな感じだったかな……。


「お!兄弟が隣国になるのか!そいつは、良い!仲良くやろうぜ!」


「なるほど、ユウマ殿なら信頼できます。亜人と人族の親交を深めていきましょう。次世代で崩れないように、強固にね」


「そうだな、やはりそれがいいだろう。我が国の、次期国王の妻はユウマの愛する妹だ。我が国に弓を引くことはあるまい。子孫のことはわからないが、それはその時の人間が解決することだしのう」


大体こんな感じの会話がなされ、俺は一言も喋ることなく決定した……。


いや?あの?俺の意思は?……どうやら、拒否権はなかったようだ。


そこからは、早かった……。


あれよあれよといううちに、何もかもが決まっていく。


セントアレイの難民や、バルザールの難民、そして一部の亜人族の国にすると。


そうすれば、徐々にだが変わっていくだろうと。


ウィンドル自体の広さは大したことはないので、統治も楽だろうと。


俺はもう逃げられないと思い、覚悟を決めた。


ただ、条件だけは言わせてもらえた。


ルイベ少将の引き抜きと、公爵家執事のノインさんの引き抜きだ。


これは通すことができた。


未だに、これは英断だと思っている。


何故なら、現に助けられているからだ。


この2人がいなかったら、俺は過労死していたかもしれない……。


さて、ここで疑問があるだろう。


公爵家はどうするの?領主は?実家は?


まずは領主からだな。


あそこは、イージスに任せることになった。


アテナが側にいれば、大丈夫だしな。


アイツは、人の機微に敏感だし、気配り上手だしな。


ウィンドルからも遠くないし、いざとなれば助けにもいけるしな。


そして、ミストル伯爵家はアロイスに任せた。


もちろん、代理だ。


正式な後継は、エリカの子供か、俺の子供になる予定だ。


最後は公爵家だな。


簡単に言えば、俺とホムラの子供に継がせることになった。


それまでは、オーレン義父さんが代理を務めるそうだ。


まだまだ死ねないのう!とか言っていたな……あの人は妖怪だよ!


幸いにも、今ホムラは妊娠中なので、問題は解決だ。


そう、そうなのだ。


今、ホムラのお腹の中には、俺の子供がいる……!


不思議な気持ちだ……そして、不安でもある。


父親の愛情を知らない俺に、務まるだろうかと……。


けど、ホムラは言った。


そんな貴方だからこそ、立派な父親になれますわと。


不思議とホムラにそう言われただけで、不安は取り除かれた。


現金なものだ……だが、愛する女性にそう言われたら、そうなれるように努力するしかあるまい。


そして、少し遅れてシノブも妊娠中である。


ちなみに、この国は亜人と人族の国なので、架け橋としてもシノブの子が継承者になる。


とまあ、こんな感じかな。


そして今、俺はデュラン王国にいる。


シノブやホムラも一緒だ。


本来ならじっとしてて欲しいのだが、さすがにこの行事は出たい!!と言われた。


まあ、無理もないか……そう、俺にとっては複雑なことだがな。


今日は、カロン様が王位を継承し、エリカと結婚する日なのだ。


エリカもすっかり大人びて、立派な女性になったと思う……多分。


そして今、俺は実家に顔を出して、準備をしている。


「ユウマ!これで、いいかしら!?変じゃないかしら!?」


「はいはい、母上は何を着てもお綺麗ですよ。大丈夫です」


「あら?そう?じゃあ、これね!」


母上は仕上げに向かったようだ。


……母上は、有難いことにまだ生きている。


再生魔法でも寿命は治せない……あと何年生きられるかな……。


でも、母上は幸せそうだ。


息子の俺が、暗くなってはいけないな。


「ユ・ウ・マさん!」


「うお!……おいおい、妊婦が飛びつくなよ!」


「えへへー、いいじゃないですかー。幸せなんですもん」


シノブは腕に抱きつき、笑っている。

俺も幸せだよ……ほんとにな。

ちなみに、子供ができたから団長はやめたようだ。

そもそも白き風自体が解散したようなものだしな。

もちろん、絆は消えてはいない。

皆、いつまでも大事な仲間だ。


「あ!シノブ!ずるいですわ!ワタクシも!」


そう言って、反対の腕に抱きつく。


「おいおい!お前に至ってはもうすぐ出産だぞ!大人しくしてくれ!」


「これくらいなら大丈夫ですわ!ユウマはすっかり心配性ですわね?」


「当たり前だ。大切な女性と、その子供だぞ?心配して当然だ」


「……ユウマは、ずるいですわ。偶にそう言って、ワタクシを喜ばせますわ……」


ホムラは耳まで真っ赤になる。

こういうところは、あの頃のままだな。

……まあ、それが可愛いのだがな。


「ユウマさん!私にはないのですかー?」


「はいはい、シノブも大切な女性だよ。なんなら、耳元で囁いてやろうか?」


「……腰が砕けるので、やめておきます……」


シノブは顔を赤くし、俯く。

こいつは、意外と攻めに弱いからな。

そこが、可愛いところでもある。


「団長、いちゃつくのは後にしてくだせえ。もう、いきますよ」


「あら、アロイス?さっきまで私にデレデレしてたのは、誰ですか?」


「ハルカさん!そりゃ、言わないお約束ですぜ!」


「パパ、顔真っ赤だよー?」


「おお、シズクか。大きくなったな!」


「ユウマ叔父さん、こんにちは!」


シズクはそう言うと、突撃してくる。

俺は受け止めて、抱っこする。


「おおっと……うん、重くなったな」


「あ!叔父さん!女の子に重いとか言っちゃダメなんだよ!?」


「はは、すまんすまん」


俺はシズクを下ろす。


すると、アテナとイージスが到着する。


「団長!!」


「久しぶりだね、元気だったかい?」


「おお、2人共。ああ、元気にやっているよ。お前たちも、元気そうでなによりだ」


「ユウマ様、皆様揃いましたので、そろそろ……」


「ああ、セバス。ありがとう。では、母上が来たら行こう」


そして着替えを済ませた母上を伴い、皆で式場へ向かう。


その途中で、ゴラン殿に会う。


「これは、ゴラン王。ご結婚したようで、おめでとうございます」


「ありがとう、ユウマ王。私には、勿体ない女性だ。これからも、よろしく頼む」


「ええ、こちらこそ」


そのまま、一緒に式場へ向かう。


すると、兄弟に出会う。


「おお!ユウマ王!久しぶり……でもないか」


「そうだよ。お前は暇を見つけては、うちに遊びにくるだろうが」


「いいじゃんよ。堅苦しいこと言うなよー」


「はいはい、言わないよ。全く……」


そのまま、合流して歩き出す。


「ユウマー!!まだ、平気かー!?」


「シグルド様!!止まってください!!私、この格好じゃ恥ずかしいです!」


叔父上がサユリさんを抱えて、走ってくる。


「おっと、すまんな。ほらよ」


「もう!シグルド様ったら!」


「はは……叔父上は、相変わらずですね。サユリさん、こんにちは」


「ユウマ様、こんにちは。なんとか間に合いましたね」


「よう、ユウマ!元気そうだな!腕は鈍ってないか?あとで、見てやるからな!」


「えぇー……こんな日にですか?」


「こんな日だからだ。どうせ、モヤモヤするんだろう?それを発散させてやる。んでもって、2人で飲みにでも行こうぜ!」


「叔父上……ありがとうございます」


やれやれ……敵わないな。

俺がエリカの結婚を嬉しく思う一方で、寂しくなっているのを見抜かれてるな。


そして全員が揃ったので、会場入りをした。


そして、式が始まる。


俺はすでに、涙腺が崩壊している……!


エリカ……綺麗になって……髪と眼の色以外は、母上そっくりになってきたな。


カロン様も青年期を迎え、立派な男に成長した。


そして滞りなく式は進み、終わりを迎えた。






「お兄ちゃん!!」


「おおっと!なんだ、中身は変わらずだな」


「えへへ!良いもん!お兄ちゃんは、お兄ちゃんだもん!」


エリカは、俺の胸に顔をうずめ、グリグリしてくる。


「義兄上、お久しぶりです。今日は来てくださり、ありがとうございます」


「これは、カロン王。エリカをよろしくお願いしますね。もしも、泣かせた場合は……」


「もう!お兄ちゃん!!」


「はい!約束はできませんが、最大限努力します!」


「そうですか……お、お願いしますね……!」


いかん……!また、涙腺が……!


「お兄ちゃん……!うわーん!」


「あらあら?2人して泣き出して……困ったわね」


「そういう義姉さんこそ、涙出てますよ?」


「あら、いけない。幸せすぎて……良いのかしらね」


「良いじゃないですか。貴方は苦労してきました。これからは、ゆっくり楽しみましょうや」


「シグルド……ありがとね。そして、ユウマ、エリカ。貴方達がいて、母はとても幸せよ?」


「お母さん……!」


「母上……!」


俺たちは母上に抱きつき、涙する……!


母上に抱きつくなど、子供の時以来だ……とても安心する。


あとでからかわれるだろうが、今は気にしない。


何故なら、こんなにも幸せに満ちているからだ。


仲間のアロイス、イージス、アテナがいる。


大切な女性の、ホムラとシノブがいる。


敬愛する、叔父上がいる。


その相手であるサユリさん、エリカの相手のカロン王。


そして、目の前には母上とエリカがいる。


この先がどうなるかは、まだわからない。


ただ、皆と協力し、支え合っていこうと思う。


願わくば、子孫達も同じように支えあって欲しい……。










「ねえねえ!この後はどうなったの!?」


「気になるよ!」


「私も気になる!」


「あらあら。まあ、貴方達の祖先のお話ですものね」


「早く、早く!!」


「えっと……その王は中年期を迎えると、他の国から願われて、初代統一王国の国王となる。そこでは、亜人や人族の差別などなく、皆が尊重しあい、仲良く暮らしました。そして、遺言が残されています」


「なになに!?」


「願わくば、子孫達も互いに理解しあい、平和な国を築いて欲しい。もちろん、綺麗事だけでは、そうはいかないのはわかっている。ただ、覚えてて欲しい。お互いが少しでも歩み寄れば、それだけで平和になるということを」


「んー?どういうこと?」


「つまりはね、亜人も人族もみんな仲良くしましょうってことね」


「それなら大丈夫だよ!僕たち仲良いもん!」


「そうだよ!私達友達だもん!」


「ずっと、仲良しだよ!」


「ふふふ……きっと喜んでいるでしょう」


「それで、名前はなんて言うの!?」


「それはね……」


その人の偉業は様々だ。


大陸を覆う闇を振り払った者。


亜人族と人族の和を結びし者。


それぞれの王国との架け橋となった者。


そして、最後には渋々ながらも、統一王国の国王になった者。


その名はユウマ。


今もなお語り継がれる英雄王の名である……。








今まで読んでくださった方々、ありがとうございます!


これにて、完結となりました!


皆さまの応援もあり、なんとか完結、そして毎日投稿が出来ました!


もし、この物語を読んで少しでも面白いと思った方は、下にある☆を押して頂けたら幸いです。

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