王都凱旋
戦いを終えた俺たちが外に出ると、城は崩れ去った。
おそらく、空間を維持していた奴が死んだからであろう。
そして、魔物達も消え去っていた。
召喚者が、1人残らず消えたからだろう。
そして、グランド王、セレス殿、オルガ殿に迎えられる。
「ユウマ!やったのか!?」
「ええ、やりました。これで、もう亜人族が虐げられることはありません」
「ッーー!!……感謝する……!」
「ユウマ、私からも礼を。貴方達に最大限の感謝を込めて……」
「……ありがとう!!これで、これで……」
3人とも、涙を流している……無理もない。
軽く500年以上は、虐げられていたのだから……。
「いえ、皆さんの力があってこそです。月並みの言葉ですが、これからは仲良くやっていきましょう。もちろん、すぐには無理でしょう。それでもお互いに理解する努力をし、少しずつ関係を良くしていきましょう」
「そう言ってくれるか……!まるで、我が王家に伝わる人物のようだな……」
「……それは、どのような?」
「ウィンドルの王家に、1人だけいたそうだ。我らを虐げずに、平等に扱おうとした人物が……」
「そうですか……まあ、俺には関係ないですね」
「おい!いつまで喋っているんだ?転移も出来んし、早く行こうぜ。俺は腹が減ったぞ!!」
「はいはい、叔父上。帰りましょうか」
「今のはどういうことだ?」
「まあ、後日改めて話します」
「……それも、そうだな。では、我らも国に帰るとしよう。また、必ず会おう!」
「ええ、また会いましょう!」
そうして、亜人族は帰っていく。
「さてと……ゼノスはどうする?」
「そうだな……国に帰るとするさ。色々と、立て直さないといけないからな」
「そうか……もし、助けが必要ならいつでも呼んでくれ」
「……ありがとよ。遠慮しないからな?」
「ああ、構わない。こちらも遠慮しないしな」
俺はゼノスから、肩を外す。
「もう、大丈夫だな。よし、帰るか」
「じゃあ、またな」
「ああ、またな」
そうして、ゼノスも国の方向へ帰っていく。
「さて、俺らも帰るとしますか」
それぞれの顔を見て、俺は言った。
「帰りましょー!」
「ヘトヘトですわ……貴方は元気でいいですわね」
「帰ろー!」
「エリカは逞しくなったな。ユウマ、もう必要あるまい?」
「……そうですね。寂しいですけど……」
俺が妹離れをしなくてはな……。
途中、ルイベ少将と合流し、国境付近で野営をした。
兵士達は盛り上がっていたが、俺達は疲れから、すぐに眠りに落ちた。
俺達の話を聞きたい人達を、ルイベ少将が宥めてくれた。
ほんとに、できた人だ。
そして、2日かけて王都へ凱旋する。
すると、王都から歓声が上がる!
「お帰りなさーい!!」「英雄の帰還だ!!」「ユウマ伯爵、万歳!!」
おいおい、すごい人数だな……!
「おい、ユウマ。ぼけっとしてないで、手でも振ったらどうだ?」
「え?俺ですか?いや、これは俺だけの力じゃ……」
「団長がいなければ、私はここにはいませんよー?」
「ワタクシも、大人しく結婚し、妻をしていたでしょう……」
「私は、お兄ちゃんがいたから頑張れたよ!」
「俺は……お前がいなければ、国を出ていただろうな……」
「みんな……こちらの台詞だ……!皆がいたから……俺は……」
クソ……!涙が止まらない……!
「ククク……ほら、待っているぞ?」
「……わかってますよ」
俺は涙を拭き、手を振る。
すると、地響きのような歓声と拍手が巻き起こる!
俺達は門をくぐり、街を歩いていく。
ちょうど真ん中に通路ができていて、そこを歩いていく。
すると、中央広場で国王様と宰相様が待っていた。
国王様が手を挙げる。
すると、歓声と拍手が止み、静寂な空間になる。
「ユウマ達よ!よく、やってくれた!其方らは、大陸を救った英雄である!!この国の国王としてではなく、ただの1人の人間として礼を言う!!ありがとう!!」
「ウォォォォ!!!!」
「ありがとうございます!」「これで、平和がきます!」「もう、不安な日々が終わるんですね!」
俺達は顔を見合わせて、笑い合う。
ちょっとくすぐったいが、嬉しい気持ちで胸がいっぱいになる。
「静粛に!!」
宰相様が告げる。
「どうも、お疲れ様でした。今は、ゆっくりと休んでください。皆さん!良いですよね!?」
「ゆっくり休んでください!」「本当にありがとう!!」「貴方達と同じ国で誇りに思います!」
そうして、鳴り止まない歓声に見送られながら、俺達は家に帰ることにした。
玄関には、皆が勢ぞろいしていた。
アロイスとその恋人のハルカさん。
イージスとアテナ。
セバスとクリス。
カロン様とサユリさん。
そして、母上がいる。
「お母さーん!!」
エリカは、母上に抱きつく。
「あらら?ちょっと成長したと思ったら……」
「えへへ!今はいいの!!」
「母上、ただ今戻りました」
「ユウマ、お帰りなさい。2人とも、無事で良かった……ユウマは、抱きつかないのかしら?」
「母上……勘弁してください……。俺は、大人ですから」
ちょっと迷ったことは、内緒だ。
「あら?残念ね。シグルド、よく2人を守ってくれましたね。ありがとう」
「エリス義姉さん……まあ、俺の役目ですから」
「貴方が負い目を感じることは、もうないのよ?私が頼んだ所為で、ごめんなさいね……」
「何を言うのですか!俺は……義姉さんの家族を壊して……俺が馬鹿で、クソガキだったから……!」
叔父上が、泣いている……初めて見る……。
「母上、どういうことですか?」
「ふふふ……シグルドはね、ユウマが酷い目にあったり、家族が壊れたことを自分の所為だと思っているのよ」
「義姉上!!」
「叔父上……俺は、貴方を恨んだことなど一度たりともありません。貴方は、俺の目標です。その……俺は……勝手ながら、貴方を父のように思っています……」
「……ケッ!俺は……疲れたから飲みに行く!あばよ!」
叔父上はそう言って、去っていく。
「ふふふ……照れ臭いみたいね」
「はは……俺も照れ臭いですね。サユリさん、叔父上について行ってもらえますか?」
「え?え?私でいいのですか?」
「ええ、お願いします。あのままだと深酒して、朝方にその辺で倒れてしまいます」
「そうなのですか!では、行ってきます!」
これで、よしと。
サユリさんは、叔父上を追いかけていく。
そしてエリカを見ると、カロン様と抱擁をしていた。
おい?待て。
いや、認めるけどな?
目の前でやられると……こう……もやっとする……!
「団長!!落ち着いて!殺気出てますから!」
「ユウマ!一応皇太子ですから!」
「全く……我らの団長は相変わらずだな」
「ふふ、アロイスさん。嬉しそうですね?」
「オイラ、みんなが無事で嬉しいです!!」
「そうだな!今度ばかりは、お前に同意だ」
俺は、仲間達とじゃれ合いながら思う。
俺は幸せ者だ。