太陽のようなひと
「せんぱーい! がんばってー!」
下級生の応援の声が飛ぶ。陽子ちゃんはにっこり笑って手を振ってみせる。きゃー、という声があがった。
陽子ちゃんがアンカーの位置につくと、また、がんばってー!という声援が送られる。
スターターピストルのパァンという音。一斉に走り出す第一走者。色とりどりのバトンを振ってみんな疾走する。
どのクラスも並走しているのに、うちのクラスだけ、どんどん置いていかれる。うちのクラスには運動部の人が少ししかいないんだ。
第二走者も第三走者も追いつくことが出来ないまま、距離があいていく。
次々にアンカーにバトンが渡る。うちのクラスだけ置いていかれる。けど、陽子ちゃんは余裕の笑みを浮かべている。
第三走者からバトンを受けとるとき、にこっと頷いてみせた。
キリッと表情を引き締め、先行している他のクラスの走者を見据えて、走り出す!
あっという間に最後尾に追いつく。長い手足は優雅に踊るように動いているのに、先頭との距離はどんどん縮まる。陽子ちゃんのポニーテールにした長い髪がなびく。
二人抜き、三人抜き、先頭の一人と並んだ。ゴールまで二メートル。陽子ちゃんのスピードが、ぐん、とあがった。一気に追い抜きゴールテープを切る。
駆け抜けて、徐々にスピードを落とす陽子ちゃんに、また下級生から声援が飛ぶ。
陽子ちゃんは息をととのえると、その名のとおり太陽みたいに笑って、大きく手を振った。