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カリオスとラメル

カリオスは、書類仕事が終わり食堂で食事をしていた。隣では、シアンとクルト前にはユリスとパゴンが食事をしている。カリオスは、ここ最近は食欲が減っており皆には心配されていた。 


理由は、ユラが姿を消した事と…………


カリオスは、困っていた。アイナン王国、第1王子であるシルバに執拗な勧誘を受けていたのである。


ちなみに、何故アイナン王国の王子から勧誘を受けているかと言うと……。カリオスの父親は、レレット王国の人間だが母はアイナン王国の賢者アレッドの一人娘だったから。アレッドは、王国で働く人間だったためだ。カリオスも、幼い時に母親にアイナンの王宮に連れられた。そこで、アイナン王国のシルバ王子とは幼なじみの関係になった。


つまり、賢者の孫で実力者な魔術師。


カリオスは、アイナン王国にとって喉から手が出るほど欲しい人材であった。しかも、数年前に賢者は亡くなっており、次なる賢者を探していたのも理由の1つとなった。カリオスは、ため息を吐き出す。


シアンは、カリオスを見てから言う。


「カリオス、お前まで消えないでくれよ?」

 

「僕は、レレット王国の民だし行かないよ。」


カリオスは、紅茶を飲みながら不機嫌に呟く。


ユラが、居たときはピッタリと無くなった勧誘。しかし、ユラが消えた途端に勧誘してきた。カリオスは、ユラが弾いていたのだろうと推測する。


「やぁ、カリオス。もう、アイナンに来る覚悟は決まったかい。私は、君の返事を待ってるんだ。」


「……申し訳ありません。私は、レレット王国に忠誠を誓っております。ですので、丁重にお断り申し上げます。お誘い、ありがとうございました。」


シルバは、レレット王国にまで来てカリオスを勧誘してきたのだ。カリオスは、警戒したような表情で冷たい視線を向ける。だが、シルバは満面の笑みでスルー。カリオスは、苦々しく目を逸らす。


「私は、絶対に諦めないよ。君は、僕の部下になるんだ。それに、もうこの国は滅びると思うし。」


「出来れば、私の事は忘れて帰国なさってくださいませんか?私は、この国が大切なのです。」


カリオスは、少しだけ不愉快そうな表情で言う。


「大切なのに、神王ユラ様を捨てたのは誰?」


シルバは、ニヤッと笑い逆撫でする声音でカリオスの耳元に囁く。カリオスは、一瞬だけ後悔が過るが表情を崩さず真剣な表情ではっきりと言う。


「……何を言われても、私は行きませんしレレット王国からは離れません。例え、魔法騎士団長の仕事を辞めたとしても。誰かに、拐われようとも………。」


「まったく、君は相変わらず強情だねぇ………。」


カリオスは、『それは、君もだろうが!』っと思ったが我慢して言葉を呑み込んだ。


カリオスだけでなく、ユリスやシアン達も色んな所から声が掛かっており王宮はパニック状態だった。


「あっ、カリオスさん。こんにちは、かなりお久し振りですね。少しだけ、痩せましたか?」


ラメルは、そう言って首を傾げると、座って食事をする。カリオスも、頷いてから苦笑を浮かべる。


「ラメル、久し振り。うん、少し痩せたかな。」


「主神様から、伝言をお預かりしました。」


ラメルの言葉に、食堂の全員が黙り込んでしまう。カリオスも、思わず食事の手を止める。


「それで?」


「伝言は、全部で3つです。カリオスさん、悲しい知らせと嬉しい知らせとアドバイス………貴方は、どれから聞きたいですか?貴方が、考えて選んでくださいね。それ次第で、大きく運命が変わますよ。」


ラメルは、暢気に笑うとパンをちぎって食べる。


カリオスは、少し考えて周りを見る。ユリス達は、暢気に頷いている。ラメルは、黙々と食事をする。


「ラメル、悲しい知らせから聞くよ。」


「では、神託を与えよう。レレット王国は、1年後の戦争に敗れて滅びる。そして、他国に国土を奪われ民は奴隷のように扱われるだろう。」


カリオスは、青ざめてから息を呑む。周りも、騒がしくユリス達も顔が強張っている。


「嬉しい知らせは……」


「ユラは、2週間後にレレット王国に帰って来る。勿論、神王として仕事で戻るんだよ。そして、レレット王国の国神と話すから王宮に来るはず。」


カリオスは、驚いてから困った表情になる。どういうふうに、声をかけて良いか分からないからだ。


確かに、あの時はユラの存在が怖くて心が揺らいで仕方なかった。けど、ユラは困ったように笑って、黙って主従契約を解除した。そして、次の日には何も残さず姿を消してしまった。ユラは、どんな気持ちだったのだろうか。思わず、考えてしまう。



親友ボクに、拒絶されたのだ。


その、心の苦しみは計り知れない。


もはや、後悔先に立たず…………。


かける言葉すら、一言も見つからない始末。



カリオスは、苦々しくラメルを見てから言う。


「それで、アドバイスは……」


「実は、レレット王国にもあるんだよ。」


ラメルは、少しだけ嬉しそうに言う。


「えっと、何があるの?」


すると、ラメルは驚いてから苦笑している。


「カリオスさん、本当に知らないの?やっぱり、1度もお供え物を見たこと無いのは………。レレット王国の民は、神殿を作って放置とか酷すぎるなぁ。」


その言葉で、その場の全員が理解した。


「待って。ユラの神殿が、レレット王国にもあるってこと?しかも、お供え物がされた事が無い?」


「本当に、知らなかったんだ…………。正確には、竜神ハイリヒの第一要神殿だよ。」


ラメルは、呆れた視線をカリオスに向ける。カリオスは、思わず呻いて冷や汗を流しながら聞く。


「うっ………。ユラは、一言もそんな事を言わなかったし。それで、その神殿は何処にあるの?」


「確か、クレバの森林だよ。」


カリオスは、驚いて目を丸くした。ラメルは、優しい笑顔でカリオスを見ている。


「ユラがね、最初に作るならクレバの森林だって。何でか1番、そこで暮らしてた時が幸せだったからだってさ。カリオスに、こっちの常識を教えてもらったりした、穏やかな日々は幸せだったって。」


「まぁ、僕も気楽だったのは否定しないよ。」


カリオスは、少しだけ赤くなって目を逸らす。


「これで、主神様からの伝言は終わりだよ。」


「そう、ありがとう………。」


ラメルは、暢気に言えばカリオスはゆっくり頷く。


ラメルは、無言で何か言いたげにカリオスを見る。カリオスは、思わず戸惑うようにラメルを見る。


「………………………。」


「えっと、何か言いたい事でも?」


ラメルは、悩むような仕草をする。そして、カリオスを見てからため息を吐き出して言う。


「医療の神として、一応だけど僕から豆知識とアドバイスをあげるよ。要神殿には、意味がそれぞれ存在するんだ。要神殿は、多くて8つ神は持つ。第一神殿は、神様の家だ。第二神殿は、儀式場。第三神殿は、裁きの場。第四神殿は、監視の場。第五神殿は、配下の家。第六神殿は、大地管理の場。第七神殿は、眷族の集い場。第八神殿は、神々の集い場。良いかい、第一神殿はユラのお家なんだよ。」


ちなみに、眷族と配下は別物である。眷族の方が、主従の繋がりが強く配下は繋がりが弱い。


そこで、主神とラメルの言いたい事を理解する。


「もしかして、国に入って真っ先に家に帰るの?」


「まったく、当たり前じゃない!」


ラメルは、イライラしたような口調で言う。カリオスは、思わずビクッと震えるが言う。


「つまり、神殿を掃除して供物を置くべきだと?」


ラメルは、神力を纏いニコッと笑って言う。


「そうすれば、今回はユラが助けてくれるよ。僕達神々は、感謝と礼儀にはそれに見合った祝福や恩恵を必ず与えるからね。それは、ユラも例外じゃないのを忘れないで。今まで、ユラは無償でこの国を守ってくれてたんだ。君達も、掃除くらいしても良いと思わない?ユラの抱える、負担に比べれば軽すぎて重さを感じないようなものだしさ。」


カリオスは、真剣な表情で俯いた。


「何か、僕って薄情者だよね。」


ラメルは、無言でカリオスを見てから言う。その声は、とても冷ややかで怒りがこもっていた。


「僕からしたら、この国の全員が薄情者だよ。ユラが、どんなに愛情を注いでも拒絶して。神殿には、誰も祈りに来ないし。そのくせ、自分達を守れと…裕福にしろと…助けろとほざく。凄く、醜い……。」


『……………。』


ラメルは、黙り込んだ皆を見てから言う。


「ユラは、一時的に自分の身を削ってすらこの国を守っていた。皆は、今の国神が腕が悪いと言うけどさ。普通の神様では、呪われた大地であるこの国をここまでは維持できるものじゃないよ。僕なら、1週間がギリギリかな。ちなみに、彼より神格は上だけど無理だよ。彼も、今は自分の命を削ってる。」


『!?』


ラメルは、食事をしながら言う。


「ラメル、呪われた大地って?」


「…………ユラに、聞いてみれば。僕は、掟で話す事を許されていない。でも、歴史は繰り返される。」


それだけ、言うと食堂から去ってしまった。


「ふーん、2週間後かぁ……。じゃあ、頑張って妨害してみようかな。今は、チャンスだと思うし。」


シルバは、笑みを浮かべて食堂から姿を消した。

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