すれ違う親と子
校長に、呼び出しを受けて校長室に向かった。
「あら、本当に可愛いわね。」
校長は、女性で優しく暖かいイメージのお婆さん。
「ふふっ、実にあたい好みだね。」
隣には、男っぽい赤髪の女性ミアが立っていた。
「それで、何の呼び出しなの?」
「貴方の言葉を、担当のクラスの子が教えてくれたのよ。それで、全体的に生徒が真面目になって嬉しいわ。だから、お礼を言いたかったのよ。」
校長は、嬉しそうに紅茶を飲み微笑む。
「でも、寮だとあんたが危険だろ?主に、信者が多いからな。しかも、徐々に増える一方だし。」
すると、ユラは背筋が寒くなり震える。
し、信者?待って、神様にとって信者は嬉しいものだけど……。それ以上に、胸騒ぎと危機感を感じる。
「まぁ、そうなるわよね。」
「それで、あんたを守る意味で宿を用意した。」
ありがとうございます!少しは、息が抜けるかな。
「本当に、ありがとうございます。」
「でも、高級宿だけど伯爵の息子なんだろ?」
つまり、伯爵なら泊まれるけど、その息子が泊まれるような宿じゃないと。そっか、僕は貴族の男だとしか言ってないや。ちゃんと、説明しないとだね。
「いいえ、侯爵で王宮の医療団の副団長ですよ。ちなみに、あの【医療の先導者】は僕の事です。」
そう言うと、身分証明書を出す。
「「………………。」」
後ろで、クルトとオズが笑っている。
「こほん、私達も貴族で王宮で働いてます。私は、王宮執事副長のオズと申します。爵位は、上級伯爵です。そして、【冷酷の魔王】と呼ばれます。」
「私は、魔法騎士団副団長のクルトです。爵位は、本来は公爵ですが色々あり上級伯爵です。そして、【力技の戦況崩し】と呼ばれますよ。」
すると、沈黙を破るミア。思わず、言ってしまう。
「これは、とんだお偉いさん達だな。」
そうだ、神様として話しておこう。
「実は、僕にはもう1つ名前が有ります。」
「もう、何を聞いてもあたしは驚かねぇよ。」
ふふっ、それは良い事を聞いた。じゃあ、驚かせて差し上げましょう。そして、僅かに神気を纏う。
「私の、もう1つの名は………竜神ハイリヒ。」
「前言撤回!何で、神様がここに?」
これには、校長も真剣な表情を浮かべる。
「この学園は、神々が許せる許容を越えるほどの粗相をした。つまり、神の信仰を妨げ敵対している事を意味する。神々は、責任を今の国神に受けされる事にした。今の国神は、若輩者で国を支えるので手一杯なんだ。だから、救済に僕が選ばれた。このままだったら、国神だけではなくこの学園にも裁きは下ってた。主神様に、感謝して祈るように。」
すると、校長は直ぐに主神に祈りだした。ミアも、それに続いて主神に祈りを捧げる。
ユラは、立ち上がる。すると、祈りを終えた2人。
「「ハイリヒ様、ありがとうございました。」」
「私は、前国神だった。私が、体が弱いから彼に変わったんだ。これくらい、私がしなければ彼に申し訳ない。彼だって、頑張っているのだから。」
すると、初めて知ったのか驚く2人。
「あのさ、どうせなら国神にハイリヒが戻る?」
いきなり、主神が現れてから言う。
「ですが、主神様。彼は、努力してますよ?」
「そうなんだが………。このまま、無茶をすれば彼が身を滅ぼしかねない。ユラは、どう思うよ?」
ユラは、考えてから真剣に言う。
「彼には、言ったのですか?」
「いや、まだなんだよ。」
「なら、案件が終わり次第に僕が行きます。続けるなら、僕がサポートに入れば良い事ですしね。」
すると、主神は驚く表情でユラを見る。
「若手の神にしては、仕事も真面目で努力もしますしね。僕も、多少は評価しています。彼が、国を支えられるようになるまでは面倒を見ますよ。」
「本当に、お前は優しいな。」
すると、ユラは困った表情をして呟くように言う。
「何回も民に、存在を必要とされてないと言われました。そんな僕が、国を支えても無意味ですから。だから、彼にはちょっぴり期待もしてます。」
すると、オズとクルトが心配そうな表情をする。
「そっか、偉いぞハイリヒ。」
「まったく、すぐ子供扱いする。本当に、不貞腐れますよ。一応、年齢的には子供じゃないんです!」
ユラは、思わず抗議するがスルーされる。
「親にとって、自分の子はいつまでもたっても子供なんだよ。そこは、大人対応で我慢してくれ。」
「はいはい、分かりましたよ。」
ユラは、身分証明書をなおしてから歩く。
「宿の件は、ありがとうございました。今日は、初授業で緊張して疲れたので帰りますね。」
「ユラ、外に出る時は男に戻る事。それと、勝手ながらその宿貸し切りにしたから。これも、トラブルを少なくするためだ。あと、俺も泊まるからな。」
最近は主神様の方が、リュー様よりトラブルメーカーな気がする。けど、珍しいなぁ………。
「そうですか、では一緒に宿に行きますか?」
「いいや、残念だけど仕事が残ってる。」
すると、医療神が来てから言う。
「それは、終わらせておきましたぞ。」
「え?トト君、早すぎじゃない?」
思わず、主神はキョトンとして言う。
「ハイリヒ様と、たまには一緒に過ごしなされ。」
「えっと、トトさん?僕は、大丈夫ですよ?」
ユラは、思わず戸惑うが黙って帰る事にした。
「息子を、ずっと放置しててそれでも親かね!」
「あー、ごめん。それには、いろいろと………」
主神は、理由を並べるのを止めてため息を吐き出した。これは、いけないと思うがどうすればと思う。
「ユラ君は、主神様に敬語のままですな。その意味を、ちゃんと理解してくだされ。普通は、子供は親に敬語など使わないのですぞ。良く、ちゃんと考えなされ。あれは、親ではなく主神に敬意を示す対応ですぞ。つまり、このままは良くないのですぞ。」
そこで、主神は苦虫を潰した表情をする。ユラが、敬語なしで言うのは、思わず声に出した時だけ。
主神は、このままでは良くないと決意する。
「今から、宿に向かう。すまない、トト。」
「まったく、行ってらっしゃいですぞ。」
こうして、1日は終了するのだった。




