診察
ユラは、薬の副作用で眠くなり少し考える。暫くして、3時間ほどベッドで休む事にした。ベッドの近くでは、主神が読者をしている。
「失礼します、カリオス様が参られたのですが。」
「まぁ、入れれば良いんじゃないか?」
主神は、真剣にヴァイスを見て言う。カリオスは、主神を見て驚いたが真剣な表情になる。
「最近、神殿を壊す犯罪が増えました。なので、教会の神書を読みました。ユラは、大丈夫ですか。」
「俺からは、何も言わない………言えない。知りたければ、しっかりユラの口から聞いてくれ。」
カリオスは、ベッドに近付いて俯いた。
「でも、ユラは話してくれないです!」
「だろうな。」
主神は、冷静な瞳で静かに言う。
「主神樣が、居るという事はそう言う事ですよね。ユラは、深刻な状態なんですよね?」
「さて、俺にも分からない。何せ、ユラは隠し事が上手いからな。だから、様子見に居るだけだし。」
主神は、苦笑すると眠るユラを見る。
「主神樣なら、ユラから聞き出せるのでは?」
「昔なら、聞き出せただろうな。けど、今のユラは力が強い。聞き出すのは、おそらく無理だろう。」
すると、ヴァイスが入ってくる。
「もう、3時間か。」
「はい。ユラ樣、そろそろ3時間ですよ。」
ヴァイスは、優しく声をかける。
「うーん、良く寝た。ヴァイス、ありがとう。」
「すぐに、紅茶をお持ち致しますね。」
そう言うと、部屋から出ていってしまった。
「あれ、カリオス?」
「ユラ、体調はどう?最近は、良さそうだったけれど。怠さとか、気持ち悪さとか無い?」
カリオスは、真剣にユラに言う。
「ないよ。今回は、暇だから寝てただけだし。」
そこで、一瞬だけ主神が反応したが無視する。だけど、カリオスにはそれだけで充分に分かった。
「ユラは、何が何でも話すつもりは無いんだね。」
「さて、何の事かな?」
「ユラ!」
「仮にあったとして、何の話をするの?」
カリオスは、真剣に此方を見ている。
「君が、死にかけたんだよ。僕の、知らない所で。神殿の役目、その他の事を調べたんだ。」
「でも、僕は生きてる。それで、充分じゃない?」
その言葉に、主神は目を丸くしてユラを見る。カリオスも、言葉の意味を理解して息を飲む。
カリオスは、お茶会の時間になり戻って行った。
「はぁ……、予定を変える。医療神、来てくれ。」
「なんだい?ほぅ、君が医療の先導者か。」
ユラは、驚いた表情をして主神を見る。
「うちの息子は、我が儘でな診察をお願いする。」
「ふむ、まかされた。君に、神力を流すね。」
次の瞬間、思わずユラが悲鳴をあげる。
「防音魔法、かけといて良かったな。」
「あっ、あう………。」
感覚としては、正座で痺れた足をおもいっきり触られる感じだろうか。主神は、満面の笑みである。
「さて、もう大丈夫かな?」
「はい………。」
それから、暫くして医療神は主神に診断書を渡す。
「これは、間違いないのか?」
「はい。良く辛さを、表情に出さずにいられると逆に感心します。普通なら、発狂レベルですから。」
医療神は、苦々しい表情で悲しげに呟く。
「要神殿を1つでも、破壊された神は正気を失い苦しみながら狂い死ぬ。これが、神々の常識だ。」
「確か、2つでしたか?」
主神は、頷いた。しかし、苦笑する。
「だが、他の要神殿も潰されはしないが。」
「亀裂やひび割れ、小さいダメージですか。」
医療神も、苦笑する。
「まだ、要神殿はなおってないしな。」
すると、ユラが部屋に入って来る。
「主神樣達は、お食事はどうしますか?」
「ユラ、お前は辛くないのか?」
「………逆に、辛くないとでも?」
ユラは、真剣に主神の持つ診断書を見て言う。
「だよな。ユラ、仕事を暫く辞めて天界でダメージを癒さないか?俺は、見ていて辛い。」
「それは………、無理ですよ。」
ユラは、苦笑するとベッドに座る。
「そうだな、その立場に縛った俺の言う言葉ではなかった。食事は、俺達はいらないから。」
「そうですか、なら失礼しますね。」
ユラは、暢気に部屋から出ていった。
「パーシェマが、ユラに変わって下界の神王になると発言したらしい。ユラも、神王には興味が無い。だが、ユラが神王を辞めれば……きっと…………」
「うむ、戦争になりますな。パーシェマは、長寿な神々に遊ばれて終わりでしょう。そして、ユラ樣が神王を辞めるのを天界の神々が許すわけがない。」
主神と医療神は、疲れたように深くため息をつく。
「まぁ、それくらいユラが………ハイリヒが優秀過ぎた。まったく、世話のかかる息子だなぁ。」
「しかし、今は身体を癒す事ですな。そちらは、リュー殿に任せれば大丈夫でしょう。もう、病気だといっても過言ではないですからな。医者であれば、自分の体調くらい整えてくだされよ?」
すると、ユラは入って来てから苦笑する。
「そうだね、病気は治さないとね。」
「では、また来ますぞ。失礼。」
そう言うと、部屋から消える医療神だった。
「さて、暇だなぁー。」
「それなら、街に散歩でも行かないか。」
ユラは、頷いて出かけるのだった。




