平和交渉
さて、用事も済んだし帰ろう。
「カリオス、もしかすると吸血鬼の国と戦争になるかもしれない。今から、クルト王子を連れて平和交渉へ行ってくれないか?」
獣人の青年が、少し慌てたように入ってくる。
ユラは、暢気に考える。多分だけど、女王は平和交渉を受けるだろう。でも問題は、賛成と反対の意見が割れてて女王でもおさめられないと言うこと。
カリオスは、ユラを見てから言う。
「ユラは、戦争についてどう思う?」
「現在、平和交渉について意見が別れていてね。戦争をしようとすれば、女王は身内を殺してでも止めると思うよ必ず。けど、女王も完璧じゃない。一部の、反対派が暴走しているのかもね。」
ユラは、鞄を持つとカリオスを見てから言う。
「なるほど、知ってたなら教えても良いんじゃない?まぁ、君にも理由があったんだろうけど。」
「無理。さて、私はこれ以上は関われないので。」
すると、ユリスが止める。
「ユラ君、あちらに詳しいなら同行してくれない?お願いして良いかな?心配だしさ。」
「すみませんが、同行は出来ません。」
ユラは、少し考えてから言う。
「そっか、戦争の話だもんね。」
だが、カリオスは何かに気付いて笑って言う。
「ユラは、同行はしないんだね?」
すると、少し驚いて笑う。
「カリオス、良く気付いたね。」
「ん?どう言うこと?」
カリオスは、ユリスを見てから言う。
「つまり、国の者としてではなく個人で行くって事じゃないかな。それで、話してくれる?」
「多分だけど、国に入る際に絶対邪魔が入ると思うんだ。けど、こっちは交渉を持ちかけてる方。もしかりに、攻撃してきた敵を此方が殺したとしよう。すると、それを理由に交渉を断られる可能性があるんだ。下手をすれば、門前払いされる。」
すると、皆は驚いてユラを見る。
「なるほど、君が冒険者として行けば自衛の義務が発生するからね。目の前の貴族様が、襲われてて自分に来ないとは限らないと理由をつけるんだね。」
「その通り!そして、君らが殺した訳じゃないから咎めもない。最悪は、賢者として滅するよ。」
すると、カリオスは嬉しそうに笑う。
「ユラ、ありがとう。」
「僕は、クルト王子が心配なだけだよ。」
すると、クルト王子はキョトンとする。
「えっと、心配って?」
「吸血鬼は、純血を大切にする種族です。」
すると、クルト王子は理解して頷く。
「半端者は、嫌われているんだね。」
ユラは、ポケットから十字架をとりだし机に置く。
「これは、女王から信頼される者に贈られる十字架です。女王には、言っておきますから持っててください。それを、持ってる限り攻撃はされません。」
すると、全員が驚く。ユラは、苦笑している。
「ユラは、あっちの国では有名人?」
「まぁ、それなりにですかね。」
そう言うと、カリオスを見る。
「良いのかい?」
「うん。それで、いつ出発するの?」
カリオスは、獣人で騎士団長のレオを見る。
「明日の早朝、6時を予定している。」
レオは、ユラを見て優しく笑う。
「そうですか。では、準備があるので失礼しますね。クルト王子、少し辛いでしょうが頑張ってください。城に着けば、女王が動ける範囲ですから。」
「うん、お疲れ様。」
ユラは、丁寧にお辞儀をする。
「ユラ、少し話があるんだけど。準備は、使い魔に頼んで話さない?勿論、無理強いはしないよ。」
「えっと、何でかな?」
キョトンとして、首をかしげる。
「実は、聞きたいことがあって。」
クルト王子とルピア王子は、明日に備えて寝るらしく去っていった。ユラは、少し考えて座る。
「ユラ、賢者について知りたいんだ。」
すると、他の長達も座る。
「賢者について?」
「そう、言いたくない?」
ユラは、少し考えてから言う。
「話せる、範囲内なら良いけど。」
「まず、君らの仕事は何?」
すると、少し驚いてから言う。
「困る人に、知恵を貸し力を貸し未来の為に力を尽くす事。でも、僕の場合は少し違うかな。僕の仕事は、本来触れてはならない国や経済にも関わりを持つから。それで、他には?」
すると、ユリスが暢気に言う。
「君さ、精神年齢は何歳?希に、居るんだよね。」
カリオスは、暢気に笑いながら見てる。
「私ですか?35歳ですよ。」
すると、カリオスはティーカップを落としそうになる。他のメンバーも、驚いている。
「君、成人してたのかい!?」
「うん。一応、お酒も飲めるよ?」
ユリスは、いきなり笑いだす。
「なるほど、そりゃ賢い筈だ……。」
「ユラ、僕らが出会った時は何歳だった?」
すると、ユラは満面の笑みで言う。
「22歳だったよ。だから、一人でも大丈夫だって言ったでしょ?なのに、追いかけてくるし。」
「見た目が、五歳児の君を放っておけるわけ無いでしょう?しかも、森にポツンと居るのに。」
カリオスは、ため息をついてユラを見る。
「それで、賢者だからなのか?」
獣人のレオが、少し言い難そうに問う。
「まぁ、大人にもなれますよ。」
そう言うと、不思議な呪文を呟く。
「へぇー、なかなかのイケメンさん。」
ユリスは、冗談っぽく笑う。
「それは、どうも……。」
少し、声が低くなり身長もそれなりにある。ちなみに、大人用のローブを着ている。ちなみに、年齢は二十歳くらいまでしか出来ない。
「ねぇ、ユラは騎士団長に興味は無いんだよね。」
「無いよ。そもそも、僕は戦いが嫌いだ。」
子供の姿に戻り、少し疲れたように息つく。
「もしさ、僕が死に際にお願いしたら?」
「そもそも、死に際に会えないでしょ。でも、そうだね。それでも、断るかもな。」
少し困った、苦々しい表情で呟くように言う。
「そっか。さて、誰を次の騎士団長にしよう。」
「あぁ、もうそんな時期なのか?」
レオは、カリオスを心配そうに見る。
「さて、私は帰って良いでしょうか?」
少し眠そうに、小さくあくびをする。
「ユラ、良かったら泊まったら?」
「気が休まらないので、お断り致します。」
そう言うと、帰ってしまった。
次の日、いそいそと出発した。
「おい、人間はお帰りいただこう。」
ユラは、素早く馬車の前に出て敵の急所を素早くついて殺す。カリオス達は、ユラの素早い動きに驚いてしまう。ユラは、剣をなおし堂々と言い放つ。
「それは、困った。依頼で、此方に来たのだが。あと、お前達は一般人が貴族の前に居るのに攻撃してきたな。恥を知れ!国の法律は、機能していないのかなルタール騎士団長殿。さて、良いのか?」
「お前達、剣を引け!この方は、森の賢者様だ!」
すると、優しく暖かな声が飛び交う。その場が、一気に歓迎ムードになる。クルト王子は、キョトンとする。カリオスとユリスは、ホッと息をつく。
「さて、人間は入れないのだろ?」
「賢者様、俺だってしたくてしたわけでは……。」
すると、ユラはクスッと笑うと言う。
「知っている。それにしても、ガリスは反対派なのか?だとするなら、少しばかり牽制でもするか。」
「よろしくお願いします。」
ため息をついて、竜神紋の聖杖を持ち白いローブを纏う。そして、一回ぐるりと回ると賢者の正装に服が変わる。フードを、深く被る。
歓迎ムードが、更に強まる。カリオス達も、歓迎されている。ユラは、カリオスの所に行く。
「女王の場所には、私が案内しよう。」
「賢者ユラ、協力ありがとうございます。」
カリオスも、真剣に騎士の礼をする。
「さて、この口調を止めて良いだろうか?」
「もちろん、駄目に決まってます。それに、その口調じゃないと次の女王に襲われますよ?」
騎士のお兄さんが、苦笑しながら言う。
「まったく、私はこの偉そうな口調は好きではないのだが。何で、あの子供も私を好くのやら。」
歩きながら、ため息を吐き出す。
「あの、賢者ユラ?」
クルト王子は、言いにくそうに言う。
「クルト王子、いつもの口調でいいですよ。」
口調を崩し、優しく笑うユラ。
「あの、ユラは皆に人気なんだね。」
「まぁ……。さて、つきましたお静かに。」
ユラは、ノックをしてから言う。
「女王、ユラだ。」
「入れ、久しぶりじゃな。」
こうして、平和交渉が始まった。
さてさて、どうなることやら(´・ω・`)