不愉快なお茶会
さて、会場にはたくさんの貴族達がいる。勿論、僕に近づくのは腹黒い狸や狐ばかり。まったく、舐めないで貰いたい。これでも、嫌々だけど5年以上も貴族生活してるんだよ。ついでに、神眼のせいで心の内が読めちゃうから、尚更に疲れてしまう。
ユラは、ため息を吐き出す。
「おや、これはフリーデン侯爵。初めまして、私はベノン下級男爵と申します。どうぞ、以後お見知りおきを。そうだ、最高のワインでもどうです?」
毒か………。しかも、トリカブトだし。
「おや、ついではくれないのか?」
「では、グラスの中身を飲んでから。」
なるほど、でも知っているかい?
「私に、毒味なしの物を飲めと?」
周りの貴族は、僕に興味深い視線を向けている。
「え?あっ、いや……。」
「はぁ……、言っておくが。私は、これでも医者だ。自分のグラスに、入れられた毒くらい簡単に見つけられるぞ。それと、お前は表情にでやすいな。」
そう言うと、グラスのワインを飲んだ。
「もう1つ、人間用の毒で神が死ぬとでも?」
ユラは、素晴らしい笑みでベノンを見た。
「かっ、神だと!?嘘をつくなら、もっと良い嘘をつくんだな!名誉貴族ごときが、侯爵になったからといきがりやがって!ふざけるなよ!」
はい、アウト。これは、死刑が確定してしまった。
「ポーラ、馬鹿を放置したら駄目でしょ?」
それに、守護神の1人ポーラは真剣に言う。
「もっ、申し訳ございません!ハイリヒ様、この男は直ちに処刑を致しますのでお許しを!」
「まったく、若いから許すけどさ。」
ユラは、親が子供を叱るように言う。ポーラも、本気でユラが怒っていないと分かり安堵する。
「我が名は、竜神ハイリヒ。レレット王国で、国に仕えながら守護神をやっている。人としては、本職は医者で休日は冒険者として活動する。友好国として、これからも良き関係を保てたら嬉しい。」
雰囲気が、いきなり変わって驚く貴族達。
「私は、財の神ポーラです。下級神ですが、守護神をしております。こちらこそ、お願いいたします!それと、天界で2番目に偉いハイリヒ様に会えた幸運に感謝を。凄く、感激でございました。」
「私は、風の神リフと申します。まず、ハイリヒ様に会えた幸運に感謝を。下級守護神として、こちらこそよろしくお願いいたします。」
すると、聞いていた貴族達は驚いている。
「さて、固い話はおしまい。」
「ハイリヒ様は、医者として有名なのですか?」
リフが、治癒女神に聞いたらしく言う。
「そうだね、医療の先導者と呼ばれているよ。」
うん、貴族達が黙ってしまった。まぁ、それくらいのパワーワードなんだよねぇー。これで、狸と狐は僕には近づかない。いやはや、便利だよねぇー。
おっと、現実逃避は後にしようかな。
「ハイリヒ様、冒険者の階級を聞いてもよろしいでしょうか。ハイリヒ様は、人間の頃からかなりの凄腕でいらしたと神々が。ちなみに、私も冒険者を隠れて致しますが恥ずかしながらDランクでして。」
え?この流れ、言わないと駄目かな?カリオスは、頷いたから大丈夫って事だよね。うん、了解だよ。
「その前に、リフは鬼神って冒険者を知ってる?」
「はい、姿は存じませんが。確か、3人しかいないSランク冒険者達に選ばれた鬼才。年若く、様々な実績を残した伝説の冒険者でしたね。」
そして、ハッとして僕を見るリフ。大正解♪
「Sランク冒険者、鬼神のユラは僕だよ。」
「さすが、素晴らしいですハイリヒ様。しかも、当時は人間でしたよね?それで、Sランク冒険者。」
キラキラと、瞳を輝かせて称賛するリフ。
これで、貴族達は下手に近づかないだろう。広い分野で、凄腕でなおかつ顔が広いとなれば、敵対して良いことはないし。暫くは、平和だと良いな。
「はぁ………、やっぱり無理か。」
ユラは、小さくため息を吐き出す。
「おいお前、我が国の守護神になれ!」
もう、本当にやめて?
お花畑は、お庭だけで充分だからさ。これ以上、感情をコントロール出来る自信はないよ?
あちゃー、神気が溢れて空間が歪んじゃってるよ。
「ユラ!」
そう、深呼吸だよ。カリオスも、心配してるしね。
「我が主よ、申し訳ない。少し、取り乱した。」
その言葉で、貴族達はカリオスに注目する。
「……………。」
「疲れて、コントロールが甘くなっただけ。」
ユラは、苦笑する。しかし、カリオスは無言だ。
「ユラ様、主神樣からの伝言でございます。言いますね、『馬鹿は、スルーしとけ。それと、ストレスは絶対に解消すること。それと、後で話がある。』だそうです。それと、元竜神樣からの伝言もお預かりしました。『ユラ、馬鹿はスルーするのだ。それと、邪神は封印された。それと、後で大事な話があるので起きといてくれ。』以上でございます。」
「ねぇ、ヴァイス。これさ、逃げても良い?」
ユラは、嫌そうな表情で言う。
「逆に、逃げ切れるとお思いで?」
「うん、ですよねー。無理だ、タイミング同時とか死ねるレベルだよ。片方は、明日に出来ない?」
ユラは、すがる思いで苦笑して言う。
「出来るなら、私の方でそうしてますよ?」
「だよねぇー。となると、大人しく待ちますか。」
ユラは、カリオスを見てから言う。
「さて、そろそろ私は失礼しますね。」
そして、宿に戻るのだった。




