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縛るもの

さて、今日は休みで予定も入れてない。そして、布団が温かすぎて起きたくない。


「おはよう。君が、この時間まで寝てるなんて珍しいね。君に、会わせたい人が居るんだけど。」


カリオスは、部屋のドアにもたれ掛かり言う。


「カリオス、鍵は掛けていた筈だけど?」


起き上がり、身だしなみを整える。


「ごめんよ。少し急ぎだったから、鍵を宿の女将から借りてきた。それで、準備万端?」


「それで、誰に会わせるのさ?」


ため息をつき、伸びをしてカリオスを見る。


「クルト王子のお兄さん。」


「初めまして、君がクルトの言ってたユラか。」


ユラは、暢気にルピア王子を見てしっかり頷く。


「初めまして。はい、私がユラです。」


「君は、あの子の事が怖くないのか?」


ユラは、薄く笑って本音を告げる。


「全く、怖くありません。私は、クルト王子より恐ろしい存在を知ってますしね。それに、こう言っては怒るかも知れませんが。クルト王子は、お人形のように整っていて美しい。と言うか可愛いです。」


すると、ルピア王子は笑い出す。


「すまない。とても、嬉しくてな。」


ユラは、首を傾げキョトンとしてしまう。カリオスは、ルピア王子の後ろで優しげに笑っている。


「それで、ご用件は?」


「私は、弟を殺すべきだろうか?追い出すべきだろうか?出来れば、別の方法が有れば……。」


ユラは、少し驚いて考える仕草をする。


「ちなみに、ルピア王子はどのような判断をなさるおつもりでしょう?もしや、殺すとか?」


「…………。」


なるほど、クルト王子は半分は吸血鬼の血筋。国のイメージの為に、死んで貰おうと言う事か。


「止めた方が良いですよ。彼の母を、怒らせるべきではないです。この国を、本当に思うのならば。」


すると、二人は驚いて此方を見ている。


「ユラ、君はクルト王子の母を知ってるのかい?」


「うん、知ってる。と言うか、クルト王子に力の使い方を教えるように言ってきたのは彼女の部下なんだよ。しかも、僕の恩人を通してお願いしても来るしさ。なかなか、抜け目のない人だよ。」


苦笑して、ため息混じりに言う。


「この国を、思うのならばとは?」


「強いですよ?怒り狂えば、カリオスでもただではすまない。止められるのは、竜王だけです。」


カリオスは、真剣にユラを見てルピア王子は黙り込む。ユラは、疲れた表情をしている。


「なら、君はどうするべきだと思う?」


「第3の選択、クルト王子を鍛えてルピア王子の直属の護衛にする。護衛なら、身分種族は問わないお約束ですからね。それに、クルト王子は王位に興味も無いご様子。なので、血で血を洗う王位継承争いも起きないと思われます。まぁ、馬鹿な貴族が騒がない限りですけど。例えば、クルト王子を王位に立たせて裏で操りたい馬鹿な貴族どもとか。」


すると、二人はキョトンとしてから言う。


「「それだ!」」


「貴族の牽制は、私が何とかするから大丈夫だ。」


「なら、僕はもう一人の護衛を選びだね。」


ユラは、大人しく成り行きを見守る。


「ユラ殿、クルトは少し天然で抜けている事もあるのだが。弟を、頼んだ。私は貴方を信頼の出来る人だと思った。全く、何で城使えを断ったのだ?」


ユラは、苦笑すると悪戯っぽく言う。


「誰しも、心の内に秘密を抱えるものです。申し訳ないのですが、秘密にさせてください。」


「貴方は、少し訳ありなのだな。まぁ、言葉に裏はないし構わないのだが。もし、その秘密があばかれたら貴方はこの国を去るのだろうか?」


すると、ユラは真剣な表情で躊躇う事なく頷く。


「はい。私も、道具として利用されるのはごめんですからね。自衛の為に、この国を去ります。」


すると、カリオスは驚いて少し考える。


「ユラは、秘密主義なのだな。」


「私も、出来れば話したいのですが……。信頼していた、友人に殺されかけ生死をさ迷ってから秘密を打ち明ける事が怖くなってしまったのです。」


すると、カリオスは息をのみ固まる。ルピア王子、思わず目をそらし言う。


「ユラ、その……すまない……。」


「お気になさらずに。」


ユラは、自分が前世に殺された理由を思い出した。そして、思わず深い悲しみと死の恐怖そして絶望感を思い出し……。全力で、振り払った。


カリオスは、初めて語られたユラの過去に言葉に詰まる。自分が、いない間にそんなことがと思って。


「さて、そろそろ失礼しよう。朝から、押しかけて済まなかった。あと、王城にもたまには遊びに来てくれ。あの子は、いつも一人だからな。」


「そうですか、取り敢えず分かりました。」


すると、ルピア王子は嬉しげに笑う。


「言質は、取ったからな?」


「畏まりました。」


ユラは、苦笑しながら笑う。




王城の、魔法騎士団団長室にて……


椅子に深く座り、書類の束をめくりながらため息を吐き出すカリオス。次期、魔法騎士団団長をそろそろ決めなければならない。何かなぁ……。


カリオスは17歳にして魔法騎士団団長になった才能ある言わば天才だった。しかし、そんな天才がゴロゴロと居る筈もなく。その結果が、書類の束を見つめてため息を吐き出すカリオスの姿だ。


現在、カリオスは23歳だが戦場では何が起こるか分からない。若くして、死ぬ騎士団長も少なくない為にすぐに騎士団を引き継げる人員を用意しないといけないのだ。書類を机に、半ば放り投げるように置いて考える仕草をするカリオス。


「いっそうの事、ユラが引き受けてくれたら僕も素直に喜んでこの席をあげるのだけどね。」


思わず、苦笑混じりに呟いてしまう。


「それは、多分だけど無理じゃないかな。ユラは、戦いが本当は嫌いだからね。それに、不自由なユラを更に縛るのは。ユラも、辛いだろうしね。」


クルト王子は、真剣な表情でカリオスを見てからノートに目線を戻し筆を動かす。隣では、同意するようにルピア王子が頷いて苦笑して言う。


「たぶんだが、彼を引き込むには彼を縛る何かから彼を解き放つ必要がある。でも、あの彼を縛れるほどの秘密もしくは存在なら間違いなく勝ち目はないと思う。だから、保留するしかないかな。」


すると、ユリスが入ってくると言う。


「何で、二人はユラ君が何かに縛られてると?」


カリオスも、気になりふたりを見る。


「ユラ、時々だけど行動を躊躇う事があるんだ。」


「行動を躊躇う?」


クルト王子は、頷くとカリオスを見てから言う。


「戦闘では、魔法を使うとき。勉強では、何かを教えるとき。躊躇って、少し考えてから行動する。」


それは、実は正解である。神の王に、見張られているために行動と思考には縛られる。更に、竜神や竜王と関係が有り強すぎる故に更に縛られている。


「それなら、本人に聞いてみたら?」


シアンが、書類を運び込みながら言う。


「あっ、今から勉強を教えて貰うんだった。」


クルト王子は、ノートを閉じて立ち上がる。


「あの、失礼します。クルト王子?」


ユラは、皆の視線を受けてキョトンとする。


「ごめん、お兄さんに勉強を教えて貰ってた。」


「そうですか。おっ、もう終わってますね。」


暢気に、笑いながら確認する。


「えっと、ユラ……。気を悪くしたら、本当にごめんだけどさ……。その、ええっと……。」


ユラは、クルト王子を見て素っ気なく言う。


「クルト王子、それは私自身についてですか?」


「うん、ごめん……。」


ユラは、苦笑するとクルト王子に言う。


「まぁ、特殊な身なので色々と制限がかかるのですよ。それで、聞きたい事は何ですか?」


「君を縛っている者または事は何?」


ユラは、キョトンとして笑う。


「それは、今は話せません。命を預けて、良いと思えるほど信頼出来たら教えますね。」


「わかった!」


カリオスは、ユラを見てから書類をまたみだした。

さて!ヴァンパイアの国へgo!

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