若年寄で苦労性
この作品は、シリアス多目でお送りしております!
(・_・;
昼間だけに、人通りが多い。さてさて、周りはやはりクルト王子を怖がっている。
「ユラ、気にしないで。分かってた事だから。」
「クルト王子、諦めてはなりませんよ。」
ユラは、優しく笑う。その瞬間、石が飛んでくる。クルト王子は、ハッとするが回避に間に合わない。
パシッ
ユラは、石を片手でキャッチする。そして、投げ返す。もちろん、ちゃんと手加減はしてますよ。
例え、投げた石が最初に投げた者の足元にめり込んでてもね。ユラは、暢気にその者を無視して歩く。
「ユラ、ありがとう。」
もちろん、めり込んだなんて周囲の人もクルト王子を気づかないので普通の対応が返ってくる。
「どういたしまして。さて、少し急ぎましょう。」
「そうだね、最初から遅刻は不味いしね。」
そして、学園に入り教室で二人で話す。
「あのさ、クルト王子と居るけど怖くないの?」
堂々と、クルト王子の前で言う少年。
「俺は、オズ。お二人さんと同じクラスだ。」
「うん、怖くないよ。だって、もう暴走する事は無いからね。話してみると、とても面白い方だし。」
すると、驚きクルト王子を見るオズ。
「へぇー、それはおめでとうだな。」
「えへへっ、ありがとう。」
「そうだ、オズは冒険者ギルドが何処にあるか知ってるかな?この国に、来たばかりでさ。」
すると、オズはニコッと笑い言う。
「なら、学園が終わったら案内するよ。」
「えっ、良いの?ありがとう、助かるよ。」
暢気に笑い、オズに優しく笑いかける。
「ついでにさ、二人とも余り外に出てないだろうしいろんな所を案内するけど良いかな。」
「もちろん、行く!」
まぁ、良いかな。そう思い、同意するよう頷く。
「やった。俺さ、これでもCランク冒険者でさ。周りが、遠慮して遊んでくれないんだ。」
「そうなんだ。僕でよければ、いつでも遊ぶよ?」
クルト王子は、笑顔で言う。
「おう、よろしくな。」
「あと、ユラもタメ語で話してよ。」
僕は、キョトンとしてから首を傾げ断る。
「お断り致します。」
「何でっ!?オズ、ユラがいじめるぅ~。」
冗談で、泣く振りをしてオズに振る。
「あははっ、ユラは真面目そうだしな。諦めろ。」
「オズ、それは僕を誉めてるの?貶してるの?」
ジト目で、冗談っぽく言い返すユラ。
「ふっ、黙秘するぜ。」
すると、先生が教室に入って来て話し出す。3人は、それぞれの席に急いで戻る。
そして、放課後になる。
「クルト王子とユラ、行こうぜ!」
「じゃあ、行こうか。」
鞄を持って、立ち上がり歩き出す。
「あっ、二人とも待ってぇー。」
わざとゆっくり歩き、走ってくるクルト王子に歩幅を合わせる。二人で、苦笑しながら。
「まずは、ユラの冒険者登録からだな。」
「えっと、付き合わせてごめんね。」
冒険者ギルドにつき、オズは用事を済ませてくると言ったので一旦別れる。ちなみに、王子もついて行った。オズは、少し迷い連れていった。
カランッ カランッ
「ようこそ、どのような用件ですか?」
「冒険者登録を、お願いします。」
すると、男達は下品に笑い出す。
「お前みたいな、ちっこいガキがか?」
そう言って、殴ってくる。僕は、当たらないのを分かってたのでそのまま拳を待つ。
「ははっ、ロンバさんの拳にびびって動きもしないなんて。やっぱり、帰ったらどうだ?」
しかし、ロンバと呼ばれた男は酔いが覚めたように僕を見る。そして、苦笑しながら謝る。
「すまねぇな。それにしても、お前さん強いな。」
その言葉に、酒場の冒険者達は首を傾げる者と納得する者の2つに別れる。すると、カリオスが入ってくる。そして、ユラを見てニコッと笑う。
「ユラ、冒険者登録は出来た?」
「いいや、今からだけど?」
すると、カリオス相手にタメ語で話した事に驚く冒険者達。カリオスは、キョトンとする。
「えっ?君なら、あっさり登録出来そうだけど。」
「カリオス……。君は、僕を過大評価し過ぎだよ。」
ため息を吐き出し、カリオスを見る。
「それで、忙しい君が何でここに?」
「今日から、3日間だけ休みが貰えてね。それと君が、冒険者になったら信頼できるし指名依頼をしようかと思ってね。てっ、そんな嫌な顔しないでおくれよ。僕だって、好きで依頼してるんじゃないんだからさ。君が、王宮仕えの件を断ったからこういう形で依頼する事になったんだから。」
僕は、不機嫌そうにため息を吐き出し言う。
「仮に、僕が王宮仕えの件を断らなかったら?」
「たぶん、次の魔法騎士団の団長にさせる為に僕の直属の部下として城に閉じ込められてた。僕は、人間で他の団長よりも短命だからね。」
カリオスは、無表情に素っ気なく言う。
「うわぁー……。断ってて、良かったよ。」
「でも、ユリスはまだ諦めてないみたい。」
カリオスは、ため息を吐き出し困ったように言う。
「それは、もしかすると……やばい?」
カリオスに、やや控えめに窺うように問う。
「はっきり言えば、かなりやばいかな。彼は、エルフだし僕より長く王宮に居るから僕より発言力が強いんだよ。しかも、彼は王宮暗部のリーダーだ。」
僕は、思わず苦々しい表情になる。
「なるほど、行動には気を付けるよ。あの、冒険者登録をお願いします。えっ、カリオスのせいでAランク冒険者になってるじゃんか!お馬鹿!」
すると、カリオスは真剣な表情で言う。
「現役の騎士団長と、互角の実力を持ちながらHランクからスタートさせる訳無いだろう。」
すると、周りは騒ぎ出す。カリオスは、無表情に周りに素っ気なく釘を刺す。
「ちなみに、今の会話や情報は漏らしたら打ち首だからね。国王の許可、ちゃんと貰ってるし。」
「カリオス、僕の平和を返してくれ。」
カードを直し、苦笑混じりだが真剣に言う。
「僕にも、予想外だったんだ。まさか、ユリスがあんなに食いつくだなんて。それに、シアンも徐々にユリスの味方に傾いてるし。5人の長のうち、二人も傾いてるからね。あと1人賛成派に行けば、君を取り込むべく長達が全力で動き出す事になる。そうなれば、僕でも押さえられないし動くしかない。」
苦々しい表情で、後悔の混じった声で言う。
「そうなれば、僕はこの国を出ていくよ?」
「僕に、君を止める資格はないよ。」
頷きながら、カリオスは頷く。
「それなら良い。さて、指名依頼の件だけど。」
僕は、深くため息を吐きあえて明るい声で言う。
「もうしていると、思うけど第2王子であるクルトの護衛と戦闘訓練をつけて欲しい。」
「うん、それくらいなら良いよ。」
こうして、指名依頼は終わった。
「さて、久しぶりの休暇を楽しむかな。そう言えば、明日は学園は休みでしょ?クルト王子は、お茶会で護衛の必要は無いし。暇かな?」
「ん?とくに、用事はないけど?」
暢気に、首を傾げる。
「じゃあ、お昼ご飯を食べに行かない?」
「カリオス、君は貴族で僕は平民なんだけど?」
呆れたように、カリオスを見ながら言う。
「違うでしょ?森の賢者さん。」
僕は、思わず目を丸くする。カリオスは、やはり本当かとばかりに苦笑してユラを見る。
「賢者ねぇ……。そう僕を呼ぶのは、精霊と悪魔と竜達だけだよ。僕は、そんな凄い者じゃない。」
何処か、遠い目で苦々しく呟くように言う。
「君が何で、正体を隠しているのかは知らない。けど、君の目的は知りたいな。」
「そうですね。普通に、平和な生活をして冒険者としていろんな土地を見てみたいです。」
すると、カリオスは黙り込んでしまう。
「大丈夫、無理なのは分かってる。」
カリオスは、苦笑すると姿を魔法で消す。
「悪い、遅くなった。それで、カード貰えたか?」
「うん、貰えた。さて、行こうか。」
すると、オズはクルトに耳をふさぐように言う。
「ユラ、さっきカリオス様を見た。」
「カリオス様が?へぇー、クルト王子が心配で見に来られたのかな?何にせよ、珍しいね。」
キョトンとして、少し考える振りをしてから笑顔で言う。オズは、ため息を吐き出し言う。
「まぁ、そう言う事にしとくよ。けど、賢者。悪魔であり、賢者を尊敬する者として言う。お前は、いろいろと溜め込みすぎだ。少しは、話してくれ。」
「オズ、その賢者ってやめてくれる?」
すると、ニヤニヤしてから満面の笑顔で言う。
「若年寄な、お前にはピッタリだと思うけど?」
若年寄って……。精神年齢的には、35歳なんだからおじさんって歳なんだけど……。まぁ、良いか。
「オズは、何で知ってるの?」
「え?それは、秘密かな。あっ、お前の本当の年齢を教えてくれたら教える。」
暢気に笑い、クルトに耳をふさぐのをやめさせる。
「僕は、正真正銘13歳なんだけどなぁ。」
年齢はね……?精神年齢は、別の話しだよ。
「お前、相当に苦労の多い人生だったんだな。」
僕は、沈黙で返す。そして、クルト王子を見る。
「それより、二人とも遊びにいこう!」
「そうだな。ユラは、ここに来たばかりで何も知らないんだろ?何でも、俺に聞いてくれ。」
そう言うと、歩き出す二人。
「うん、ありがとう。」
ユラは、途中で立ち止まり振り向いて頭を下げる。
「ご迷惑を、お掛けしました。」
「気にしないでくれ。君が、特殊な身なのは分かったからね。でも、出来れば素材とかをなるべくギルドで売って欲しいかな。」
ギルドマスターである、コリアは優しく笑い言う。
「ありがとうございます。もしかすると、また迷惑をお掛けする事になるかも知れません。」
「君は、若いのに苦労するね。」
ユラは、苦笑してから心から言う。
「えぇ、互いに苦労しますね。」
こうして、オズ達を追いかけて歩き出した。
さて、更に厄介に。そして次回、ついにカリオスの心が揺らぐ。そして、クルトのお兄さん登場!