化け物と呼ばれた王子
さて、どんどん厄介事に巻き込まれます。
(´・д・`)
事の始まりは、竜王からのお願いから始まった。明日の昼から、学園に行く前にして貰いたい事があると言ってクルト王子について話してくれた。
竜国と吸血鬼の国は、同盟を結んでおり仲が良い。
そして吸血鬼の真祖である、吸血鬼の王がレレット王国の第2王子がハーフの吸血鬼だと知り救いたいと言ったらしい。なるほど、でもいったい何故?もしかして……。青ざめて、過った予想を隅に置く。
もしかして、真祖様は女性でクルト王子の母親なのでは?いやいや、何を考えて……
『いや、それがだな。』
はい、合ってるんですね?
『そう言う訳だ。』
僕は、ため息を吐き出す。具体的に、どんな風に救うのさ。相手は、王子様だよ?
『ユラ、お前は何歳だ?』
「それは、前世も含めて?」
『いいや、この世界でのだ。』
「13歳だけど?」
暢気に、呟くと水浴びでびしょびしょな髪をタオルでふく。さすがに、少し寒くて震える。だが、すぐに温かくなる。竜王が、気をつかってくれたのだ。
魔法で髪を乾かし、ベッドに座る。
「それで?歳が、どうかしたの?」
『15歳までに、吸血鬼の力を使いこなせなければだな。力に振り回されて、周りを巻き込んで自爆する。だから、力の使い方を教えてほしい。』
「なるほど、クラスが同じなのは君が?」
すると、竜王が目をそらした気がした。犯人は、君なんですね。まぁ、良いけどね。ため息を吐く。
さて、どうやって第2王子に接触するかな。
『ユラ、カリオスの奴に頼ってみればどうだ?』
カリオスか……。今なら、少し話せるかな?分からないし、取り敢えず使い魔を出そうかな。
しばらくして、繋がった。そして、王宮が僕をスカウトしたさそうな件を聞いて不愉快になった。けれど、何とか会える約束を取り付けられた。
失敗すれば、真名を明かし奴隷になっても良いと言う条件で。こうすれば、王宮に招きたい奴らは食いつくだろうし。もちろん、失敗は絶対に出来ない。
でも、何でか緊張感は全くない。
次の日の朝……。
「おはよう、ユラ。」
カリオスが、馬車の中から笑いかける。僕は、丁寧な礼をしながら柔らかく笑い言う。
「おはようございます、カリオス様。」
カリオスは、少し驚いてからため息をつく。
「他人行儀は、止めておくれ?」
「カリオス様は、国のお偉いさんですからね。言葉ひとつ、間違えれば首が飛びますゆえ。」
カリオスは、チラッと近くの兵士を見る。剣を抜きかけてる者、槍に力を込めている者もいる。カリオスは、悲しげにため息をつくと諦めたように言う。
「ごめんよ、ユラ。僕は、別に普通にして欲しいだけなんだ。兵士は、気にしなくて良いよ。」
「「カリオス様!?」」
すると、兵士のリーダーらしき人が言う。
「カリオス様、なりません!泥臭い、平民と対等に話すなど名が穢れます!おい、貴様!カリオス様、自ら参られたのだ。光栄に、思えよ!」
本音、このおじさん殴り飛ばしたい。けど、クルト王子の為にグッと我慢して笑顔を張り付ける。
「はい、誠に光栄でございます。」
「ユラ!何で、君は我慢してるの?」
見かねた、カリオスが思わず怒ったように言う。
「クルト王子の為ですが?」
「!?」
すると、カリオスは驚いてハッとする。兵士が、剣と槍で攻撃してくる。竜王は、影から出て来そう。お願いだから、少しだけ我慢してね。
僕は、避けない。腕と足を、剣と槍でやられる。悲鳴を、グッと我慢してその場に崩れる。
「ユラ!?」
「あの、化け物の為だと?」
そう言って、また剣を振りかざす。だが、その剣が僕に届く事はなかった。ユリスさんが、兵士を物理的に止める。その目は、とても冷たい。
まぁ、民間人の目が有る所で民間人を泥臭いと罵り殺そうとしたのだ。その民間人によって、貴族や騎士団は生かされてるにもかかわらず。
やばい、今日は学園に行けないかな?
カリオスは、ハンカチを破り止血する。ユリスは、何処かに連絡をとってるみたい。あれは、シアンさん?あっ、あの武器は魔剣と魔槍だったんだ。
「まさか、お前さんとこんな再会するだなんて。」
シアンは、医療魔術で傷を治していく。
「ありがとうございます。」
苦笑して、ゆっくり立ち上がる。少し、まだ痛い。けど、動けない程じゃない。
「ユラ、無理しないで。」
カリオスは、真剣に言うと僕を抱える。
「え?ちょっ!?」
「怪我人は、大人しくね。お兄さん、怒るよ?」
いや、この歳でお姫様抱っこは恥ずかしいよ!
「怪我は、もう治って……っ!?」
「他人行儀にした、罰だよ。」
やっぱりか……。カリオス、もう少し察してくれても良いんじゃない?こっちは、丸腰だったんだよ?
僕は、小さく静かにため息をつく。
馬車に乗せられて、ユリスさんとシアンさんとカリオスが乗ってくる。おぉー、国のお偉いさんが3人も。とか、ふざけてる余裕は有りません。
「さて、ここなら態度を変えないで良いよ。」
「やっぱり、敬語は他人行儀なのか?」
カリオスが、満面の笑みで言ってシアンは良いなぁー。とばかりに笑う。ユリスは、苦笑している。
さて、敬語は止めたいけど刺されるのは嫌だな。
「さっき、止められなくてごめんよ。まさか、君が抵抗しないなんて思わなかったんだ。」
「あそこで仮に、私が手を出しても丸くは収まらなかったはずです。なら、お三方には申し訳ありませんが……。周りを取り込んで、経済的に攻めるしか有りません。さらに、武力的に私を殺そうとした時点で騎士団の信頼と知名度は地に落ちましたからね。それが例え、騎士見習いの兵士せいだとしても。」
すると、3人は驚いて僕を見る。
「お前さん、本当に13歳か?」
シアンは、思わず口に出してしまう。
「はい、見た目通り13歳ですが?」
「カリオス、本当に何者だいこの子。」
苦笑して、疲れたように言うユリス。
「さぁ、分からない。ユラは自分の事を、全く何も話してくれないからね。ね、ユラ?」
カリオスは、少し困惑気味に僕を見て考えている。このままだと、無駄に時間が過ぎる。申し訳ないけど、無理矢理に本題に入らせて貰おう。
「残り2年………。」
僕は、カリオスに答える事なく呟く。
「え?何が、残り2年なの?」
「第2王子が、理性を失い力に振り回されて周りを巻き込んで自爆するまでのカウントダウン。」
僕は、カリオスを静かに見つめて言う。すると、3人は驚いて此方を見る。僕は、真剣な表情である。
「一つ良い、その情報はいったい誰から?」
「この街に、たまに現れる吸血鬼から。あっちも、クルト王子の事を気にしてるみたい。」
カリオスは、悲し気で苦し気な表情をしている。他の二人は、何か考えているようだ。
「君なら、クルト王子を救えるの?」
「うん、確実に。だからこそ、真名と命を賭けたんだ。そうしないと、カリオスにも迷惑がかかる。」
すると、ユリスとシアンは視線で会話する。
「君は、敵では無いんだね?」
「そうですね。今は………」
すると、3人は含みに気付いて苦笑する。
「さて、着いたよ。ユラ、歩ける?」
ルシアは、手を振り別れる。ユリスは、馬車に指示を出してそのまま去る。あれぇー、もしかしたら今後は敵になるかも宣言したのにカリオスだけ?いやまぁ、カリオスに勝てる訳無いけどさ。
こうして、第2王子の部屋に案内されるのだった。
「初めまして、私はユラと申します。」
「あの、初めまして……。」
オドオドと、此方の様子を窺うように見る。
「さて、本題に入らせていただきますね。クルト王子は、その力が怖いですか?」
すると、泣きそうな表情で頷く。
「なるほど。しかし、それは貴方の力。きちんと、使いこなし楽しい学生生活にしましょうね。」
優しく、落ち着かせるようにはっきりと言う。
「彼は、僕の友達だから大丈夫だよ。」
カリオスは、そう言うと近くの椅子に座る。
「カリオスの、友達?」
「それに、彼と君は同じクラスだよ。」
「えっ、良かった……。」
もしかして、友達が出来るか不安なのかな?
「さて、まずは質問させていただきます。力を使いこなす為に、クルト王子はどんな訓練をしたか具体的に教えてください。忘れた内容は、無理に思い出さなくても構いません。では、どうぞ!」
「えっと、瞑想して精神統一して体に魔力を纏わせる練習と体力をつける練習をしてた。」
うん、なるほど。さて、では始めますか。
「クルト王子、イメージしてください。貴方の周りに、白く淡い光が現れて貴方を守るイメージを。」
クルト王子は、キョトンとしてイメージする。カリオスは、驚いて思わず立ち上がる。
「嘘っ、魔力を纏えてる!?」
「えっ、出来てる?」
驚いて、自分を見るクルト王子。吸血鬼や悪魔は、魔力に愛される種族だ。だから、瞑想による精神統一は無駄な努力で逆にイメージの妨げになる。
精神統一すると言う事は、一度頭のなかみを真っ白にすると言う事だから尚更にイメージの妨げになるからだ。思考すら、真っ白にしてしまうから。
ちなみに、吸血鬼が瞑想をするときは魔力を回復させる時のみで基本は本能的に魔力を扱える。
「まずは、基本中の基本である魔力を纏う事に成功しましたね?次は、魔力操作を覚えましょう!」
努めて明るく、励ますように笑いながら言う。
「はっ、はい!先生っ!」
「あの、クルト王子。先生は止めてください……。」
「じゃあ、師匠!」
「クルト王子、普通に名前で呼んでください。」
カリオスは、口元を手で押さえ顔をそらし肩を震わせて笑っている。僕は、ため息を吐き出す。
「カリオス、何がそんなに面白いの?」
「おっと、ごっ……ごめんよ。」
すると、クルト王子は羨ましそうに僕らを見てる。
「さて、話が逸れましたが魔力操作です。さっきのように、イメージすれば魔力や魔素は答えてくれますからイメージしてください。」
二時間かけて、魔力操作が成功する。
「おめでとうございます!これで、暴走の危機は去りました。これで、自由に街を歩けますよ。」
「ありがとう、ユラ。あっ、あの。一緒に、学園に行ってくれないかな?あの、準備は出来てるんだけど勇気がなくて。ユラが、嫌なら……」
おどおどと、目をそらしながら俯いて言う。
「構いませんよ。」
魔法で、学園の制服に着替える。
「ほっ、本当に?」
嬉し泣きする、クルト王子に少しだけ力になりたいと思う。こんな、普通の事をこんなに嬉しそうに。
「では、参りましょう。」
カリオスは、制服姿の二人を優しく見守った。
二人が部屋を去り、カリオスは部屋から出ようとするとユリスに声をかけられる。待ってたらしい。
「それで、成功したのかい?」
「うん。もう、暴走の危機は去ったって。」
「そっか、良かった。ユラだったか?素性を調べたけど、全く何も調べられなかった。そんな奴と、クルト王子を二人にして良かったのかな?」
ホッと安心しながら、少し意外そうに言う。
「友達だからね。僕は、彼を信頼してるよ。」
「あっちは、自分の素性を明かさないのに?」
すると、カリオスは優しい笑みで言う。
「何か、理由が有るんだと思う。でも、クルト王子の事は安心しても良いと思うよ。彼、本気の目をしてたから。何がなんでも、守りきると思うよ。」
「その、根拠は?」
すると、懐かしげな表情をして言う。
「僕も、あんな顔したユラに何度も助けられたからね。国の命令で、精神的にも肉体的にも疲れてた僕に毎日無言で紅茶を入れたり家事をしてくれたりして気を使ってくれてた。彼は、優しい人だよ。」
「そっか。カリオスが、そう言うなら安心かな?」
すると、シアンが話に入ってくる。
「大丈夫だと思うぞ。さっき、城門で見かけたけどクルト王子が心から笑ってた。あんな、楽しげなクルト王子は初めて見たかも。そしてユラは、周りの警戒もしてたから護衛もこなしてくれるらしい。」
「それは、ラッキーだ。実は、ルピア第1王子の護衛はやりたがる人が多いけさ。クルト王子は、皆やりたがらないんだ。まだ、怖がられててさ。」
ユリスは、心からユラに感謝する。たぶん、クルト王子に護衛がついてない時点でユラは騎士達がクルト王子をどんな目で見ているのか悟ったのだろう。
それに、迎えの騎士見習いがクルト王子を化け物と呼んでいたしな。正直、立場じょう自分が護衛する事が出来ないのでかなり困っていたのだ。
ユリスの言葉に、カリオスとシアンは表情を曇らせる。だが、ため息を吐き出しカリオスは言う。
「でもまぁ、ユラの事だからどうにかしちゃいそうだなぁ。あの子は、人の心を掴むのが上手いし。」
カリオスは、暢気に笑って言う。
「なら、クルト王子の事は申し訳ないけどユラ君に丸投げしても良いかな?手をつけられない。」
ユリスは、申し訳なさそうに言う。
「大丈夫だと思うよ。」
「それじゃあ、そう言うわけで。」
カリオスは、外に出る。久しぶりの外だ!クルト王子が、学園にいてユラが近くに居るのだからカリオスは城から出れるわけだ。
「カリオス、3日くらい休暇をとれば?」
ユリスが、心配そうに言う。休暇か、良いかも。
「でも、騎士団は大丈夫なの?」
「私が、面倒を見ましょう。貴方は、少しは休みなさい。貴方は、私達と違って短命な人間なのですから休まないと死にますよ?」
「おいおい、盗み聞きかベイル?」
ベイルと呼ばれた、青年はカリオスを心配そうに見てからシアンに苦笑を向けて言う。
「人聞きが悪いですね。たまたま、通りかかったら話が聞こえたので聞いていただけですよ。」
同じでは?と思ったが、なにも言わない3人。
「それと、ユラ君について私も少し調べました。分かったのは、隣国プルーゼ王国の迷いの森の出身で賢者と噂される少年らしいですよ。」
「「「賢者っ!?」」」
驚きに、思わず大きな声で聞き返す。
「はい、魔国や精霊国は彼を賢者だと。」
「カリオス、ユラ君が学園に行く理由はある?」
ユリスは、苦笑しながら言う。
「あるよ、一応クルト王子の護衛だし!ユラが、冒険者登録したら正式に依頼する予定だよ。」
カリオスは、複雑な表情で言う。
「でもさ、あくまでうわさなんだろ?」
「はい、あくまで噂です。」
四人は、ため息を吐き出し解散した。
さて、ユラさん大丈夫ですかね?(;・∀・)