SS:僕の師匠は、超美形で天才で……
僕の名前は、ノスタルジアと言います。長いので、師匠にはノアと愛称で呼ばれています。真名になるので、今の本名はノアなのだろうと思う今日この頃です。さて、それはさておき……
今日は、師匠はお仕事がお休みの日です!
「ノア君、ユラ様を起こしてくれる?」
「え?珍しく、お寝坊さんですね。」
僕がキョトンと言えば、ラメルさんは申し訳なさそうな表情で苦笑する。はい、わかりました………。
師匠は、とても忙しい人で徹夜で仕事をする事もあるそうです。僕は、寝ないと師匠に怒られるので勿論ですが寝てますよ。まぁ、ラメルさんが言うには『本来、彼は寝る必要も無いのだけど。本音は、少しでも眠って疲れを取って欲しいなぁ。』らしいのです。うーん、言葉が矛盾してます。
とにかく、師匠が珍しく寝ているのなら………。
師匠は、黒髪に黒い瞳の超美形なのです。ぜひ、寝顔を拝見したいと思うのはダメですかね?でも、最近じゃ一緒にも寝てないし………。
僕は、部屋の扉をノックして入ります。勿論、反応が無いので失礼します!相変わらず、部屋は綺麗に片付けられているのですが資料の束や研究の本がやまのように置いてあります。うん、凄いなぁ~。
「師匠、起きてください!」
そう言うと、僕はベッドに一直線に向かう。寝ている師匠は、見た目相応の美しい寝顔です。僕は、少し躊躇ってから寝ている師匠を揺さぶる。師匠は、小さく呻いて目を開く。本当に、申し訳ないです。
「うーん、どうかしたの?」
その瞳は、まだ眠そうで表情には僅かに疲労を感じて本当に起こすべきか悩んでしまう。
「その……、おはようございます。」
師匠は、キョトンとして僕を見ている。ごめんなさい、笑っては駄目ですけど師匠の寝癖が可愛い。
「おはよう。もう、7時なのかぁ~。」
師匠は、手で押さえながら小さく欠伸をして時計を見てから言う。そして、起き上がるとニコッと笑って僕の頭を優しく撫でてくれる。嬉しい……。
「いつもは、寝ても5時には起きているのに珍しいですね?疲れて、いらっしゃるようですし。もしかして、師匠こそ何かあったんですか?」
師匠は、着替えながらも優しく笑って言う。
「まぁね、リュー様に無理難題を押し付けられて。少しだけ、魔力を使い過ぎて疲れてそのまま寝ちゃったんだ。まぁ、今日から3日は仕事が休みだしねぇー。ゆっくりと、回復していく予定だよ。」
つまり、休日なのに僕の相手はしてくれない?
ガーーーン!!!
「ん?」
師匠は、落ち込む僕を見て首を傾げる。
だが、大丈夫だろうと思ったのか、寝癖を整えて顔を洗うと部屋から出た。僕も、慌てて追いかける。
「おはよう、ラメル。」
「ユラ様、おはよう。少し、疲れているね。」
すると、師匠は暢気に笑って言う。
「別に、竜神様……リュー様に、厄介事を持ってこられるのはいつもの事だよ。本当に、トラブルメーカーなのは、昔も今も相変わらずって感じだよね。」
その言葉に、ラメルさんは笑ってしまう。僕も、当然だけど元竜神様リュー様には会ったことがあります。僕にとって、おじいちゃん的な存在です。
「それで、ご飯を食べたらどうするの?」
「ノアを連れて、城下町に遊びに行こうかな。」
僕は、思わず満面の笑みを浮かべる。やったー!
師匠は、小さく笑うと食堂に歩いていった。
師匠、ありがとうございます!
「まぁ、楽しんでおいで。」
ラメルさんは、のほほんと笑うとその場を去った。
師匠と外へ出て、王都の城下町にやって来ました。
「ノア、はぐれないように手を繋ごうか。」
「はい。」
実は、城下町に来るのは3回目です。でも、個人的に来たことは無いので楽しみです。
「さて、何処に行こうかな?」
え?もしや、ノープランなのですか?
僕は、思わず戸惑い師匠を見上げると師匠は暢気に笑う。うーん、どうやらノープランみたいです。
「師匠は、何か用事があったのでは?」
「僕は、暫く君と遊んでないからお出かけしようと思っただけ。だから、好きな所に行って良いよ。」
え?師匠が、僕の事を気にしてくれてた?うっ、嬉しすぎる………。でも、良いんだろうか?僕は、ユラ様の養子とはいえ、甘えて良いんだろうか?
すると、師匠は困ったような表情をする。
あっ、困らせるつもりは無かったんです!どっ、どどどどうしよう!あわわ………。
「君は、僕の子だよ。例え、誰が何を言おうと……今は、僕の可愛い息子だ。さて、仕方ないから君の服でも買いに行こうか。まだ、1日は長いしね。」
そう言うと、僕の手を引いてゆっくり歩き出した。僕は、師匠の顔を見ることが出来なかった。
でも、たぶん傷つけてしまった。最悪だ………。
「ノア、君はまだ子供だ。難しい事は、僕ら大人に丸投げしとけば良いんだよ。今は、楽しむ事と甘える事と遊ぶ事だけ考えなさい。」
「………でも、申し訳なくって。」
すると、師匠は僕を見て苦笑する。
「ノア、何が申し訳ないの?」
「僕は、師匠から貰ってばかりで、何も返せていません。どうやって、恩を返せば良いのか、感謝を示せば良いのかわからないんです。」
すると、師匠は優しい笑みで言う。
「そういう恩返しは、大人になってからするものだよ。今は焦らず、自分の出来る事だけを確実にしていけば良いのさ。だから、今を楽しもう。」
「はい!」
僕は、申し訳ないと思いながらも嬉しくて笑う。師匠の事、まだ『お父さん』とは呼べないけど呼んだほうが良いのかな?でも、師匠ならきっと……君が、呼びやすいようにすれば?……って言いそう。
「そう言えば、ノアは将来は何になりたいの?何か、やりたい事はある?」
師匠は、話題を変えると興味津々に聞いてくる。
「あの、僕は………その、師匠みたいな医学術師になりたいです。そして、師匠みたいに皆を助けるのが夢です。えっと、恥ずかしいよぉー。」
すると、一瞬だけ師匠は驚いて悲しい表情をする。
僕は、何か悪い事を言っただろうか?僕には、師匠が何故そんな表情をするのか分からなかった。
「そう……。ノアが、なりたいなら僕は応援するよ。けどノア、救うだけが僕ら医学術師の仕事だとは限らないんだよ。良く、覚えておいてね。」
僕は、師匠が何を言っているのか分からなかった。
「師匠?」
師匠は、何でもないと首を振り笑顔を僕に向ける。
洋服を買い、街を探索する。
「さて、買い物も終わったし何しようか。」
「あの、楽士団とサーカス団が来てるので行ってみたいです。駄目ですか?」
「じゃあ、チケットを買って来るから待ってて。」
僕は、師匠を見て言う。師匠は、優しく笑うとサーカスのチケットを売るテントへ歩いていった。
すると、悲鳴が聞こえて振り向けく。そして、固まって目を閉じた。何故なら、魔物がちょうど僕に襲いかかる所にだったから。けど、痛みは感じない。
ゆっくり、目を開くと急所にナイフが深く突き刺さり息絶える魔物。僕が振り向けば、絶対零度の視線で、ナイフを2本を油断なく構えながら息絶えた魔物を見ている師匠がいた。
しっ、師匠って強かったんだ………。
普段、師匠は武器を持たない。いや、今回でわかったけど隠していただけなんですね。でも、こんなに強いだなんて………格好いい…………。
師匠は、僕に近づき目線を合わせて心配そうに見てくる。そして、ようやく自分が泣いてる事と震えている事に気づいた。そう言えば、師匠と出会った日も魔物に襲われて助けられたんだっけ………。
「ノア、怪我は無い?よしよし、怖かったね……。」
僕は、思わず師匠に抱きついた。師匠は、少し驚いてから頭を撫でた。僕は、まだ7歳。怖いものは、やっぱり怖いし感情がごちゃごちゃで、パニック状態でしたと言い訳させて欲しいです。
その後、無料でサーカスを見て帰るのでした。
師匠は、ずっと僕を心配していたけど。
僕の師匠は、超美形で天才で………優しい人だ………。




