時代の変わり目
すみません、いきなり少年から青年になります。
m(_ _;m)三(m;_ _)m
この国で、最近一番の人気を誇るスイーツショップに来た。ユラは、カリオスを振り向くと聞く。カリオスは、困った表情でユラから目を逸らす。ケーキが皆に、渡されるとお店の人は外へ去る。
「ねぇ、何で貸し切りにしたの?」
「………その、聞きたい事があってね。」
カリオスは、歯切れが悪く言う。何を、躊躇しているのか?ユラは、不機嫌そうに眉をひそめる。
「カリオス達は、僕に何を聞きたい?」
「それは、えっと………。」
ユラは、フォークを止めてため息を吐き出す。
「なら、質問を変える。君達は、何を知りたい?」
「君の………、真の名を知りたい。勿論、僕達も真名を明かすし真名に誓って誰にも言わない。」
ユラは、驚いた表情でフォークを落とす。
「え?」
そして、複雑な表情をして言う。
「………何故?」
「真名を互いに知る事は、この国では命を預けられる人。信頼できる人。そして、真の友を意味するんだよ。………まぁ、無理には聞かないけどね。」
ユラは、困ったよう悩むような表情をする。
「えっと、榊さんって名字しか知らないから。でもでも、そんなに困るとは思ってなくて………。」
クルトは、アワアワッとアタフタしたように言う。
「…………。」
無言で、沈黙するユラに戸惑う。
「やっぱり、出会って1年じゃ………」
「………暦。」
ユラは、そう言うと何事もなかったような様子で紅茶を飲む。小さくて、聞こえなかったらしい。
「え?うーんと、何て言ったの?」
「前世の名は、榊 暦。それが、僕の真の名。」
ユラは、面倒だと言わんばかりに言う。すると、全員が驚いて嬉しげに表情を緩める。
「何て言うか、可愛い名前だね。」
カリオスが言うと、ユラは思わず吹き出しそうになり慌ててハンカチで口元を押さえる。
「何か、女の子の名前でもいけそうだね。」
それを聞いて、ユラは『だから、言いたくなかったんだ……。』と言うと少しムスッとしてしまう。
「さて、僕の真名を言うね。僕の真名、リオレ。」
カリオスは、暢気に真名を教える。
そして、ユリス、シアン、レオ、ベイルが言う。
「僕は、オーヴィンだよ。」
「俺が、メルシア。」
「俺は、スワーだ。」
「私は、ゼペルです。」
そして、視線はオズとクルトに向けられる。
「俺は、アケノだ。」
え?アケノ?あけの?明けの?もしや、明けの明星………有名な悪魔だね。えっと、もしかして?
「オズ、本当にアケノなの?」
すると、オズは驚いてこちらを見る。
「いや、アケノミョウジョウだ。でも、言い辛いからアケノで通してる。でも、何故?」
うはっ!やっぱり、明けの明星ルシファーだ!
ルシファー、明けの明星を指すラテン語で光をもたらす者という意味をもつ。勿論、悪魔であり堕天使の名なんだけど。堕天使の長である、サタンの別名で魔王サタンの堕落前の天使としての呼び名で有名なんだよねぇ。うん、日本でも有名な悪魔だよ。
まぁ、サタンとルシファーは別々の悪魔だと言っている人もいるけどね。たまに、同一視される。
ちなみに、明けの明星とは金星の事。
「いや、昔読んだ本に似た名前があったから。」
「僕は、ブラッド。」
ブラッド……。原初の悪魔と契約した、最も古のヴァンパイアに近い吸血鬼だよね?確か、クルトの母親はヴァンパイアの真祖だよね?これは、奇跡かな?
今更だけど、真祖とは吸血鬼としての始祖。魔術等によって、吸血鬼へ変化した者の事である。他の吸血鬼から、吸血されて吸血鬼化した者じゃない。
うん、友人の真名がヤバい件………。
ユラは、こっそりため息を吐き出した。
それから、2年の時が過ぎた。僕は、Sランク冒険者となり貴族としては活動せず暮らしていた。
勿論、かなりの厄介事を解決したと思う。
「じゃあ、5年後に会おうねヴァイス。」
「はい、行ってらっしゃいませ。」
ユラは、15歳になり成人した。そして、レレット王国を静かに去る予定だった。
「ユラ、何で黙って行こうとするの?」
「カリオス………。」
驚いて、後ろを見ると知り合いが全員集合。
「なんだい、一人寂しく旅立たせる気はないよ?」
「………ありがとう。じゃあ、暫くさよなら。」
ユラは、レレット王国から去るのであった。
カリオスは、少しだけ寂しげに笑うとため息を吐き出す。5年後、僕は生きているだろうか?
事がおこるのは、それから3年がたった頃だった。
ユラ、18歳で『医療の先導者』のあだ名を持つ。
カリオスは、26歳『王国の守護神』の異名を国王から授かる。だが、古竜から城を守る際にカリオスは致命傷を受けてしまう。命は、何とかシアンのおかげで取り止めた。だがその傷で、カリオスは魔法騎士団からおろされてしまう。後がまに、クルトが座るにはまだ青く……ついには、魔法騎士団じたいがいらないのでは?と言い始めるしまつ。
カリオスは、日に日に口数も減りユリス達も困った様子を見せていた。こんな時、ユラが居てくれたらと思わずにはいられなかった。
その頃、ユラはレレット王国の状況を知りつつも患者から手を放す事ができずにいた。
ユラは、ため息を吐き出し疲れた表情をする。そして、眼鏡をかけ直して苦笑する。
「全く、親友の危機だと言うのに……情けないよね。カリオスは、大丈夫だろうか………。」
すると、幼い少年が覚悟の表情をして言う。
「あの、代わりに僕が行きます!確か、カリオス様は魔脈が傷付いて魔法が使えないんですよね?」
すると、ユラはキョトンとして優しく笑う。
「そうだよ。」
「なら、医療魔草クラルと神秘聖草レスレクシオンの合成粉末薬はどうでしょう!師匠も万能薬の、劣化版みたいなものだって言ってましたよね?」
医療魔草クラル
魔力と相性がよく、大抵の傷や魔力関連の障害にも使われる希少な魔草。魔物さえ、薬として食べるため医療魔草と呼ばれる認定薬草。採取ランクはSSSランクの中でも真ん中あたり。実は、球根が種なので引き抜かず上を刈り取るのが採取の常識。
神秘聖草レスレクシオン
実は、魔法名リザレクションと同じ意味を持つ聖域にしか生えない聖草。ちなみに、僅かに甘いのが特徴である。育つ条件が、未だに不明で神秘的たと言う事から神秘聖草と言われるようになった。穢れを払い、傷つけた細胞を復活させる作用がある。しかし、死んだ細胞は復活しない。
「うーん、もう1つ薬草グロウスを混ぜよう。君が行くのは、心配だけど証明できるように手紙と香水を渡しておくよ。彼らなら、多分だけど放置できないはずだから。でも、気を付けて行くんだよ?」
「はい、師匠!あっ、調合とか手紙を書くんですよね?僕は、何か準備する事は有りますか?」
すると、ユラは少し考えると幼い少年に何か言う。
ちなみに、薬草グロウス。言わば、成長剤。漢字が違う?いいえ、これで合ってます。死んだ細胞は、生き返らないので細胞を増やす必要がある。死んだ細胞は、細胞が増えれば必要ない物とされて体の本能で排出されるしね。うん、そうしよう。
これ、粉末の飲み薬より軟膏にした方が効果が良さそうだね。さて、作りますか。
「師匠?」
「うん、出来た。はい、お薬と香水と手紙ね。追い返されたら、この国は英雄殺しだと言ってやれ。たぶんだけど、殺されないから。ちゃんと、僕がそう言うように言ったって手紙にも書いてあるから。」
そう言うと、お菓子の箱も入れて頭を撫でる。
「はい、師匠!」
ユラは、少し考えて首にかけていた神竜のアミュレットを外して幼い少年にかける。
「まぁ、僕には必要ないものだしあげるよ。」
「え?良いんですか?」
「うん、同格だから効果がいまいちなんだよ。」
と小さく、ため息を吐き出す。ちなみに、今のユラは人間ではない。竜神である。
回想………
「ユラは、どっちになる?」
主神は、暢気に笑うユラ見つめる。
「ふむっ、竜で良いです。」
「よし、竜神だな!」
すると、ユラはぎょっとして主神を見る。
「いや、ただの竜で………」
「竜神だよな。」
素晴らしいほど、素敵な笑顔で押し切られるユラ。
「うっ、はい………」
ユラは、幼い少年を旅に出すならと思ったのだ。ちなみに、これが過保護だと判明するのは後の話。
「わーい。」
「一応、これも持っていて召喚のタルマリン。これで、万が一は僕を呼び出せるから。」
「はい、行ってきます!」
「行ってらっしゃい、ノア。」
ユラは、ノアを送り出し竜王を見る。竜王は、頷いてノアの影に潜り込んだ。ユラは、部屋に戻ると机に積まれたカルテと書類に視線を向ける。
「はぁ……、あと2年かぁ……。」
「そうだね。レレット王国に、腕をあげて帰るために武者修行とか……。どんだけ律儀なのさ。」
ラメルは、苦笑しながらもお茶を机に置く。
「別に、律儀ではないけど。」
「君は、本当に素直じゃないよね?」
ラメルは、笑うとお茶を進める。ユラは、ソファーに座るとムスッとしてお茶を飲んでから言う。
「どうせ、僕は性格や根性がひねくれてますよ。」
すると、ラメルは吹き出しそうになる。
「ねぇ、まだ気にしてるの?」
「別に?どうせ、この国に後2年間居るかもわかんないんだし。気にしても、意味がないからね。」
ユラは、素晴らしい笑顔であっさり言い切る。
「ユラ様、この国を見捨てる気なんだね……。」
「まぁね、僕は道具にされるつもりはない。本来なら、滅ぼしてやりたいくらいだ。」
一瞬だけ、怒りで黄金の瞳になる。ラメルは、暫く動けなくなってしまう。ユラは、ハッとして笑う。
「まだ、ノアを殺そうとしたのを怒ってる?」
「あの子は、僕が親になる覚悟で拾った子だ。我が子を、殺そうとしたのを怒らない親はいないよ。」
ユラは、本格的に不機嫌になったのを隠すこともなく言う。ユラは、ため息を吐き出す。
「ユラ様は、この国を出るべきだよ。僕も、そろそろだけど出る予定なんだ。魔女チルダに、挨拶でもしてくれば?でっ、どう思う?」
「そうだね、強制的に辞表を押し付けるか。ラメルの辞表、ついでだから一緒に渡してくるよ。」
ユラは、有言実行だとばかりに立ち上がる。
「ありがとう、よろしくね。」
2人は、荷物を纏めるとラメルは先に去る。ユラはと言うと、お偉いさんに辞表を出して問答無用で強制的に強引であっても認めさせた。
ユラは、ノアが帰るまで魔女に会いに行く。本来なら、すぐにでも駆けつけたいがノアを出した手前に自分が行くのもどうかと思ったのだ。
「さて、身軽になったし僕の研究資料は全て燃やした。これで、この国も廃れて消えるよね。」
ユラは、そう言うと魔女の森を目指して歩き出した。




