公爵殺人未遂事件!
名探偵 ユラさん、頑張りますww
ヾ(ゝω・`*)ノ
カリオスは、用事の為に会場の近くで別れる。
「ユラは、ジュース?それとも、お酒かな?」
「一応、こっちでは13歳だからジュースで。」
ユラは、さっきの醒めた雰囲気を感じさせない表情でグラスを受け取る。俺達には、今のユラが演技をしているのかさえ分からない。けど、本当の笑顔がユラにあるのなら見てみたいと思った。
「ごめん、お待たせしたね。」
「いいえ、カリオス様。私達も、今からでした。」
ユラは、口調を変えて暢気に笑う。
「うーん、ユラ……。いつもの、口調に戻ってくれないかな。凄く、違和感が有るんだけど?」
「申し訳ないのですが、なれてください。」
満面の笑みで、ユラはカリオスの言葉をバッサリと切り捨てる。カリオスは、苦笑してワイングラスに口をつける。ユラは、それを見て少し安心する。
そして、ユラは不愉快そうに近づく男達を見る。
カリオスは、ユラの視線を追いかけ男達に視線を向ける。ユラは、不愉快そうで無表情になっている。
「カリオス様、ベザリ公爵様が先程ですが何者かに王宮図書館にて襲われました。貴方に、その罪がかかっております。大人しく、捕まってください。」
カリオスは、驚いて首を傾げる。ユラは、男に聞こえないように皆にこっそり言う。
「今から、演技をするからカリオスを頼みます。」
『了解……』
全員が、呟くように言う。ユラは、衝撃的だと言いたげな表情をしてカリオスを見る。カリオスは、困ったように苦笑する。演技が、凄すぎたからだ。
「あの、本当にカリオス様が?」
「そうだ、公爵様もそう言っていた。」
ユラは、鞄から白い花を取り出すと男に投げる。
「成る程、テナコ様は素晴らしい方ですね。」
魅力的な、子供らしい笑顔で言う。すると、男……テナコは花を受け取る。ユラは、その瞬間に笑みを消してテナコを見る。そして、醒めた声で言う。
「それで、カリオスがやった証拠は?」
「これを、見てくれ。公爵が、いた時間にカリオス殿も王宮図書館に入っている。」
ユラは、本を受け取り書かれた文字と時間を思わず見て笑う。さて、反撃開始だね。
「でも、カリオス以外にもこの時間には王宮図書館に居た人もいますけど?それでは、証拠にならないのでは?何故、そう思うのでしょうか?」
「それは、公爵様が……」
ユラは、冷たい笑みを浮かべて言う。
「知ってますか?人の証言ほど、信用できないものは無いんですよ。何故なら、大金を掴ませれば嘘の証言なんていくらでもつくれますから。ですから、そんな曖昧な証拠ではなく物理的証拠をください。今の貴方は、私からすればカリオスを犯人に仕立てあげようとしているようにしか見えませんよ?」
すると、テナコは怒りに此方を睨む。ユラは、落ち着いた雰囲気で暢気に笑う。だが、目は全然笑っていない。ユラは、テナコに容赦するつもりはない。
「それに、その時間に王宮図書館に居たのは商人と料理人で戦闘力は無いのだ。だから、私は……」
「知ってます?この国の料理人は、冒険者で表せばBランクの実力を持つんですよ。それに、王宮に来る商人がただの守られるだけの商人だとでも?」
ユラは、ニコニコしながら逃げ道を塞ぐ。
「しかし、武器を持つのはカリオス様だけで……」
「だから、物理的証拠を僕に示してよ。」
ユラは、口調を元に戻した。後ろで、カリオスが青ざめたけど気にしない。こいつ、絶対に許さない。
「それなら、時間さえ貰えれば持ってくる。」
「つまり、確実な証拠が無いのにカリオスを捕らえようとしてた訳だよね?その責任は、勿論だけど君が取るんだよね?だって、君がした事だし。」
すると、テナコは冷や汗を流している。
「時間さえ有れば、確実にその物理的証拠も集める事が出来る。ユラ様、落ち着いくれ。」
「そうだね、君がこの大人数の場所でさ。カリオスを犯人と、決めつけた発言を堂々と話さなかったらここまで僕は激怒しなかったと思うよ?」
ユラは、無表情になりテナコを威圧する。
「ひっ、ひぃいい………っ!?」
「あのさ、お前の間違いは僕……俺を、敵にしたのが悪い。カリオスは、俺の親友だ。無罪なのに、有罪にしようとした君を絶対に俺は許さない。冤罪であっても、かけられた人は人生を失う事だってあるんだ。君は、カリオスの人生を奪おうとした。なら、俺も手加減はしない。これは、立派な名誉毀損だよ?」
そこには、Aランク冒険者として名を馳せた鬼神のユラが立っていた。いつもの、ほのぼのしている雰囲気は消えて恐ろしい雰囲気を纏っている。
「ならユラ様も、カリオス様が無罪だと言う証拠を見せろ!そしたら、私も処罰を受けるとしよう。」
すると、ユラはキョトンとしてニコッと頷く。
「うん、良いよ?それと、言質は取ったからね?」
カリオスは、心配そうにユラを見るがシアンは何故か嬉しそうである。皆は、そんなシアンを見る。
「お兄さんに、もう1つお花をあげるよ。」
テナコは、花を持たない。いや、持てない。
「これは、トゥルーフラワー。別名、真実の花。採取ランクは、SSSで取り扱いの最も難しい薬草の1つだと言われている。ちなみに、大昔の法律の無い時代にはこの花で罪の有無を決めていたんだよ。だから、この花を持てない時点で貴方は黒だ。」
国王は、興味深げに成り行きを見ながら言う。
「テナコよ、これは王命だ。何も、無いのであればその花を持て。それで、分かるのだろう?」
「植物は、本能のままに生きるので嘘はつきませんと申し上げます。トゥルーフラワーは、岩場の多い場所で育ち飛翔する魔物から狙われます。トゥルーフラワーは、悪い感情が近づくと枯れるのは本能的に子孫である種を残す為だと言われていますし。トゥルーフラワーが、黒くなり枯れれば彼も裏で事件に関わっているかもしれないですね。」
薔薇のような見た目で、棘の変わりに空気中の水分を吸収するための小さく短い毛がはえている。
そして、黒髪で幼さの残る色白なユラがそれを持っているのだ。思わず、赤面する女性貴族達。
「さて、テナコよ。持たなければ、犯罪に関わった者として裁く。私は、カリオスの性格を知っているし神聖賢者ユラ殿の事も息子達から聞いている。だから、信じている。それに、これを切っ掛けにカリオスに居なくなられればこの国の大きな損害になるし困るからな。」
「お褒めに預かり、誠に光栄にございます。」
カリオスは、騎士の礼をしてからユラに優しく笑いかける。ユラは、小さくため息を吐き出す。
これは、長引きそうだ。と言うか、しゃべりすぎて喉が渇いた。早く、この茶番を終らせないとな。
ユラは、疲れたようにもう一度だけ小さくため息を吐き出した。カリオスは、そんなユラを見て申し訳なささと嬉しさの混じった笑みを向けるのだった。




