お仕事
2つの騎士達は、立ち止まり一方は戸惑い一方はニヤニヤとして立っていた。一方の前には、異国の服を着た黒髪の少年少女達7名。皆、震えて剣を構えている。その目は、どこか虚ろで泣いている。
「カリオス様、このままでは攻撃が出来ません。」
「わかってる。ユラ!居るんだろ、ユラ!」
カリオスは、真剣に大声でユラを呼ぶ。
「勿論、居ますけど?」
ユラは、大人の姿でフードを深く被り賢者の服装でゆっくりとした足取りで両国の間に立つ。
「welcome in different world!」
すると、少年少女達は驚いてユラを見る。
「ようこそ、異世界へ!まぁ、神々は君らを呼んだ覚えは無いんだけどね。初めまして、僕は榊と申します。ここでは、ユラって呼ばれてるけどね。」
すると、両国から驚きの声が聞こえる。
「ユラの、前世の家名………。」
カリオス、ポツリ呟き成り行きを見守る。
「神は、俺達を呼んでないだって!?」
「嘘よ!嘘だって、言ってよぉー!」
悲痛な叫びに、ユラは真剣に答える。
「君らは、この世界に来るにはまだ未熟過ぎる。それに、この世界に魔王は現在は居ない。君達は、戦争の道具として召喚され良いように利用されたんだよ。本当に、残念な事にね……。」
「何で、もっと早く助けに来てくれなかったの!」
ユラは、冷静にその質問に答える。
「君らが、真名を既に喋っていたからだよ。」
「!?」
「この世界では、真名は魂そのものだ。名字だけなら、早く助けられた。けど名を教えて、魂を縛られていたから下手に手を出せば死んでた。ましては、神々が直接に手を出すのは禁忌だ。となれば、機会をうかがい君らを安全に助け出す必要があった。」
ユラは、真剣に言うとニコッと笑う。
「その機会が、今だって言うの?」
「僕は、神の代理人。そして、神聖国アダマスよりもうえの権限を持つ神聖賢者だ。そして、神々より君達を元の世界へ送る役目を命じられた。」
すると、焦った声で神聖国アダマスの騎士が言う。
「そのガキを、殺せぇ!」
7人は、武器を持ち襲いかかる。
「はぁ……、やっぱりこうなったか………。」
二人の攻撃を回避して、ため息混じりに呟く。
「逃げて!お願い、逃げて!」
泣きながら、叫ぶ異世界人を見て表情を消す。
「ごめん、少し痛いかも……」
フードが、風で脱げる。黄金の瞳は、全てを見抜き全てを理解する。対価に、その者の命を削る。
「竜神様、貴方のお力をお借りしたいのですが。」
『ユラ、良いのか?お前、最悪死ぬぞ?』
竜神が、姿を現すと両国の騎士達は祈り出す。竜神は、見向きもせずユラを見て言う。すると、カリオスはユラを止めようとする。
「ふふっ、それを僕以外の神聖賢者に言えますか?言えないですよね。神聖賢者の、最後の使命は命を散らして神命をやりとげる事ですからね。」
『だがそなたは、半ば強制で神聖賢者になったのだぞ。我が、そなたをこちらに呼んだばかりに。』
ユラは、無視をして話は終わりとばかりに言う。
「彼らの呪縛を、一時的に解除します。竜神様は、彼らの真名を書きかえてください。」
『………良かろう。』
少女二人が、魔法を使って少年達は此方に向かってくる。ユラは、被害を最小限に押さえるために傷つき二の腕を押さえる。傷は、深いらしく血が滴る。
「さすがに、全ては回避出来ないか。なら………」
ユラは、剣を抜くとため息を吐き出す。
「さすがに、もう手加減は出来ないかな。」
素早く峰打ちを、少年に入れて剣を直し少女2人に手刀を入れて気絶させる。後、4人か……。
ふぅ……、早く終わらせないと……辛い………。
少女は、詠唱して3人の少年は襲いかかる。
「竜神様、真名の書きかえは終わりましたか?」
『あと、一人だけじゃ。』
「了解……。」
『ユラ、神眼の酷使は身を蝕む。手短に、終わらせるのじゃ。でないと、そなたがもたぬぞ……。』
ユラは、敬語やめる。神眼は、神の御技でつくりだされた。故に、酷使すればその凄まじい力に身がもたず体が崩壊する。強い力は、身を滅ぼす。とは、良く言ったものだと思う。まさに、その通りだ。
「わかってる。〈我が血を対価に、万物を縛る枷となれ。我の言葉に、偽りは無し。我の意志に、偽りは無し。我が行動に、偽り無し。正義は我にあり!〉」
さて、動きは縛れたけど……もう、神眼は使えない。
「竜神、このまま真名の書きかえは可能?」
『うむ、暫し待て………可能じゃ。』
だはーっ、凄く疲れるし辛い。
「そっか、なら終わり次第に時間稼ぎよろしく。」
そう言うと、神眼を消して詠唱を開始する。
「〈神々の創りし、神秘なる天界の門よ。かの者らを、全てあるべき場所へ導きあるべき場所へ送りたまえ。神々の契約に従い、神聖賢者であるユラがこい願う。対価は、この身に有り余る魔力と寿命を捧げる!〉さて、帰る時間だよ。お幸せに……。」
7人は、魔方陣の光に包まれ消えてしまった。
「かはっ……!」
血を吐き出し、苦し気にうずくまり子供の姿に戻ってしまう。竜神は、驚いて人化になる。そして、子供に戻ったユラを抱えると耳元で呪文を呟く。
ユラは、少し楽になり気を失った。
王宮の病室にて……
あれから、ユラは目を開くことなく12日が過ぎようとしていた。ルシアが言うには、急に魔力を枯渇ギリギリまで奪われた反動とごっそり寿命を食われた為に暫くは目覚めないらしい。ユラ………。
そして、竜神様が毎日微量ずつ魔力を与え回復は早まるだろうとの事。早く、目を覚まして。
「ん……。げほっ、こほっ……」
ユラは、目を覚まし咳き込む。手は、血で汚れてしまう。シアンは、真剣にユラを見てから言う。
「大丈夫、吐き出した血は古い血だ。」
カリオスは、ホッとして思わず笑う。
「峠を越したな。けど、体が弱ってる。」
今のユラは、声を出す事も起き上がる事も出来ないほど弱っていた。故に、黙って聞く事にする。
「なに、1週間すれば動けるようになる。」
竜神は、笑いながら言う。
それから、竜神の言う通り回復していくのだった。
「出席日数、たりるかな………。」
ユラは、ベッドの上で苦笑して呟く。
「まぁ、ギリギリ大丈夫じゃね?」
オズは、器用に林檎を剥きながら言う。
「それで、オズはここに居ても良いの?」
「おう、大丈夫だ。今日は、依頼を受けてない。」
すると、走る足音がする。
「ん?」
「ユラ、寝とけ。たぶん、クルトが来たんだと思うぞ。そうなると、シアンさんも居るはずだしな。」
「そろそろ、外に出たいんだけどな。」
渋々と、ベッドに横になりゆっくり目を閉じる。
やっぱり、まだダメージは消えてないか……。
オズは、ユラに毛布をかけてやり考える。
「俺には、何も出来ないのが歯痒いな。」
夜になり、オズとクルトは帰り竜神とカリオスそしてシアンがユラの所に居る。
「ユラ、実は主神がだな……」
「嫌だ。」
ユラは、真剣に即答する。
「まだ、何も言っていないぞ?」
「その選択は、僕にはないよ。」
竜神は、困った表情でユラを見る。バレておる……。
「まぁ、良く聞けユラ。」
「だから、嫌だって言って……むぐっ!?」
シアンが、ため息を吐き出すとユラの口にオズが剥いた林檎を突っ込んだ。カリオスは、シアンの行動に驚き顔を青ざめさせている。
「ゆっ、ユラ!?しっかりして!」
「あのさ、俺らに分かるように言ってくれ。」
ユラは、口に突っ込まれた林檎をムシャムシャ食べている。なので、竜神が話す事にする。
「今のユラは、例えるならばロウソクの火だ。僅かな風なら、消えることはないが少し強い風が吹けば消えてしまう。次に魔力が、ギリギリまで枯渇すれば一瞬で消えてしまうだろう。」
「「っ!?」」
息を呑み、思わずユラを見るがユラは竜神を呆れたように一瞥しただけで何も言わない。
「主神は、ユラに二択の選択を示した。もう一度、転生するか人間を捨てるかのな。」
「はぁ……、過保護ここに極まりだね。あのさ、カリオスは人より魔力が異常なほど多いんだよね?けどさ、僕の魔力は君の魔力量を遥かに凌駕する。魔力量だけなら、竜神よりも多いからね。」
そう言うと、林檎をムシャムシャ食べる。
「は?」
「え?」
「そうだな、僕が世界が滅びるような魔法を使えば死ぬかもね。けど、そんな魔法を日常じゃ使わないでしょ?まぁ、次に魔力を枯渇ギリギリまで使えば死ぬのはあってるかな。けど、枯渇した記憶が無いんだよね。強い風?邪神でも、降臨しない限り大丈夫だよ。竜神の逆鱗で、体は丈夫だからね。」
ムシャムシャ……
「ユラ、君はもう人間やめてない?」
「やっ、やめてない!ステータスには、まだ種族が人間って書いてあるし。うん、大丈夫!」
こうして、ユラは日常に戻って行った。
さて、ユラさん冒険者活動を開始!




