表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/115

隠れた戦い

さて、今日は疲れたな。少しぼんやり、窓の外を見つめてベッドに倒れ込みため息を吐き出す。


コンコン……。ノックの音がして、ドアに視線を向けてから起き上がりベッドに座る。


「クルト王子、開いてますよ。」


「うん、お邪魔しまーす。」


クルト王子は、ユラの隣に座る。ユラは、二人がいない事が気になりクルト王子に問いかける。


「お二人は、どうしたんですか?」


「うーん、大人の話は疲れるから来ちゃった。」


キョトンとして、思わず笑ってしまう。


「ユラは、本当の年齢は何歳なの?」


ユラは、少し考える仕草をして言う。


「35歳ですよ。もう、心はおじさんです。」


すると、クルト王子は儚げに笑う。


「なるほど、だから安心するんだ。」


「??」


首を傾げて、クルト王子を見つめるユラ。クルト王子は、何でもないと首を振り窓の外の月を見る。




ユラは、クルト王子より一足先に国に戻る。


『ユラ、神聖国アダマスがレレット王国を攻める兆しがある。クルト王子が、王位継承権を断り攻める理由を失って止める未来に分岐点がでた。』


ユラは、驚いて思わず足を止める。


竜神、それは本当なの……だとしたら………。


『あぁ、戦争は起きる。確実に……。そして、犠牲になるのはおそらく………そう言う事だろう。』


なるほど、クルト王子が危ないな……。


「竜王、居るかな?」


『話は、聞いていた。だが、ユラは大丈夫か?』


ユラは、僅かに頷くと魔法を発動させて走り出す。




レレット王国王宮


「クルト王子を理由に、宣戦布告か。」


「陛下、やはりクルト王子を殺すべきだ!」


すると、ルピア王子は言った男を睨む。


「言ったはずだ!私は、クルトを殺させない。それにだ、クルトを殺せば森の賢者を敵に回す事になるのだぞ。彼だけは、敵に回すべきでは無い!」


森の賢者、その言葉に全員が黙り込む。


「信頼されてて、光栄の極まりですね。」


ユラは、暢気で大人な笑みで言う。


「ユラ!」


ルピア王子は、嬉しそうに笑って歓迎する。


「僕も、クルト王子を殺すのは反対ですね。もしクルト王子が、死んだら大変な事になりますよ。」


「大変な事?」


ルピア王子は、キョトンとしてユラを見る。


「はぁ……。やっぱり、気付いていなかったか。」


ユラは、ため息をついて小さい声で言う。


「ユラ、教えてくれ。何に、気付いていない?」


ユラは、真剣な表情でルピア王子に言う。


「貴方達は、クルト王子に守られている。それなのに、クルト王子を殺すべきだと馬鹿な事を言う。」


「守られている?ぶざけるな!」


とある貴族が、素早く立ち上がり抗議する。すると、ユラは珍しく怒りを滲ませた声で言う。


「ふざけているのは、貴方達の方だ!何故、神聖国アダマスがすぐに宣戦布告しないと思ってるんですか!クルト王子は、吸血鬼の女王の血縁者。つまりは、吸血鬼の国の王位継承者でもあるのですよ。だから、神聖国アダマスはクルト王子が吸血鬼国の部隊を連れて攻めて来ないよう今は動かないだけなんです。もしも、クルト王子を殺せば喜ぶのは神聖国アダマスだけです。貴方は、死にたいんですか?」


すると、誰も何も言えなくなる。


「あわよくば、吸血鬼の国とレレット王国をぶつけて利益を得ようという考えも透けて見えます。」


「だが、吸血鬼女王は国王陛下の妻だからぶつかる事は無いのでは?噂では、ベタ惚れだったとか?」


ユラは、氷点下の雰囲気で一刀両断する。


「吸血鬼女王は、女である前に国王です。国のためなら、その気になれば大好きな夫も殺せますよ。」


国王も、この言葉には思わず苦笑して頷く。


「確かに、それは私も同意見だ。」


周りは、ざわめきユラを見る。


ユラは、ためを息吐き出してその場から去ろうとする。これは、クルト王子があんな顔をする筈だ。


「クルト王子は、すぐにこの結末を導きだしましたよ。その結果、予定より帰りが遅いでしょう?クルト王子は、貴方達が気付いてくれるのを祈って時間稼ぎを身を削ってやっているのです。」


去り際に、そう言うと姿を消した。




クルト王子は、疲れた体を休める。クルト王子は、天然な性格だが馬鹿な訳でもない。戦争の兆しも、素早く感じ取り自分の役割を決めて動いていた。


「クルト王子、王宮に着きましたよ。」


クルト王子は、激しく消耗した魔力を取り戻そうと深い眠りについて目を覚まさない。


「カリオス、お疲れ様。」


「ユラ、少しクルト王子を頼んで良いかな?」


カリオスは、迎えの騎士を見て言う。


「仕方ない、ここは寒いし部屋に運ぶよ。」


「ごめん、よろしくお願いするよ。」


大人の姿になり、優しくクルト王子を抱えてクルト王子の部屋に向かいベッドに寝かせるユラ。


「クルト、お疲れ様。もう少し、頑張ろうね。」


ユラは、優しい笑みで呟くと子供に戻り椅子に座って読書をする。少し、クルト王子が嬉しそうに笑ったのを雰囲気と勘で感じ取りながら。




学園の旧校舎


「ユラ、一緒に帰ろう!」


クルト王子は、ユラに追い付き隣を歩く。


「クルト王子、そうですね。」


ユラは、暢気に笑って言う。


「……昨日は、敬語じゃ無かったのに……。」


少し、残念そうに言うクルト王子。


「きっと、空耳か何かでしょう。」


ユラは、笑いながら言う。


「ユラ、ありがとう。」


「ん?」


すると、クルト王子は笑って言う。


「僕のために、貴族相手に本気で怒ってくれてありがとう。僕は、独りじゃ無力だから………」


クルト王子は、ポロポロと涙を流す。


「えっ?くっ、クルト王子!?」


「おいおい、クルト王子を泣かしちゃ駄目だろ。」


ユラは、オロッとしてクルト王子を見つめる。オズが、優しい笑みで話しかけてくる。


「こっ、これは嬉し泣きだもん……。」


「取り敢えず、場所を移しましょう。」


「そうだな。」


3人は、場所を変えるべく歩き出す。



王宮の魔法騎士団団長室にて……


「いやはや、ユラ様の怒りながらクルト王子を守る為に貴族相手に会話なされる姿は素敵でしたよ。」


ベイルは、カリオスに笑って言う。


「あの子、僕に内緒でそんな事をしてたのか。」


カリオスは、少し優しく笑う。


「だが、問題は山積みだ。」


レオは、苦笑しながら紅茶を飲む。


「確かに。クルト王子が、専属護衛になる件がやりにくくなったね。どうやって、クルト王子を殺さずに殺したように見せかけるか。偽の公開処刑とか、周りに人がいる状況でするとかは?」


ユリスは、カリオスを見て聞く。


「それだと、クルト王子の影武者が死ぬけど。そうなれば、たぶん悲しむよねクルト王子は。」


「確実に、泣いて悲しむな。クルト王子は、自己犠牲な人だし。だから、あの坊主ユラがバランスを取って守ってくれている。本当に、良い奴だよ。」


シアンは、本を閉じながら暢気に笑う。すると、クルト王子とルピア王子が入って来て暢気に笑い言う。後ろには、ユラとオズが居て入って来る。


「カリオス、ユラに知恵を貸してもらえば?」


「確かに、ユラなら何か良い案が有るかもな。」


皆の視線は、ユラに向けられる。


「一応は、有りますよ。」


ユラは、暢気に笑い皆を見るのだった。

クルト王子を、何とか殺さないようにしたユラ。しかし、今度はどうやってクルト王子を殺したように見せかけるかの問題が。しかし、ユラは笑顔で対策を告げる。そして、神聖国アダマスとの開戦が……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ