手からお米を出すだけの簡単なお仕事です
「ステータス1…だと…」
「なんと、その様な事が…」
瞬間、僕の立場はどん底に落ちた。いや、そもそも底辺だから変わらないか。
クラス丸ごと異世界に転移した、って時は驚いたけど、夢にまで見てた異世界転移と言うこともあって、それなりに期待していた。
勇者たち、ってのも手伝って、この国から今まで受けたことの無いような豪華な食事も出来た。米が無かったのが残念だったけど。
召喚された勇者達には特殊なスキルと圧倒的なステータスが有る。そう聞いてクラス底辺からいよいよ、って思った時に…
「どうする…?」 「戦えないって…」
「見た目は良いけど、なんの役にも立たないって…ちょっと…」
嗚呼、もうやめてくれ、解ったから、僕が何かを望むのは間違いだって、そんなのよくわかったから。
「でも、可哀想じゃね?」「まあ言うなよ…」
「でもさ、あいつどうなるんだ?」
「だけどさ、スキル何なのかまだわからんぜ、もしかしたら、レアスキルかもしれんし」
「どちらにしてもまあ、守ってやれば良い話だろ?」
「お、やっぱ学校一のイケメンは違うねぇ!」
「茶化すのはよせよ、お、どうやら解ったみたいだぞ」
「ふむ…どうやら食料系のスキル…珍しくは無い…ですが、無いわけではない。ハズレですな」
国外追放、軟禁。色々大臣達の相談し合う声が聞こえる。
ああ、糞みたいな人生だったな、と思った時ーー
「しかし、何ですかな、この《米を出す》、とは。食料系のスキルなのだろうが、【米】とは聞いた事もありませんな」
「ん?米?」
大臣達の話を聞いたクラスメイトの空気が変わる。
「米…?」「おい、今…」「…ああ…」
失望は期待に、希望に変わる。
米のない世界で、米が食える。
これ程までに重要なスキルは無い
「ふむ…おい!衛兵!この男をつまみだ…
「待ってください!」
「何ですかな?勇者殿」
「彼も自分たちの大切な仲間です、そんな事は認められません!」
「彼を追放するのでしたら、私も一緒に出て行きます!」
カッコいい人が叫ぶ、カッコイイ台詞だが、内心は米が食えると言う期待でいっぱいである。
「そうだ!彼を追放するんだったら、俺も一緒に追放しろ!」
「あ!おい、ズルいぞ!俺もついてくぞ!」
「私も!」「僕も!」
(言えない…実はパン派なんて言えない…)
米が食いたい日本人は口々に叫ぶ。
全く現金な話である。
「…解った、追放は無しとする!これは失礼な事をした、詫びよう」
「いえ、追放されない、とあればそれで良いんです。彼の面倒は僕らで見る、米は…彼は僕らが責任を持って守ります」
「そうか…わかった」
「……チッ」
「何か申されたか?」
「いえ、何も(早々に出る必要があるな…)」
「そうか、なら良い」
その後、米がスキルレベルが上がらないと出せる量が増えない、と知って殴り合いの取り合いになるのは、また別の話。