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もっと味わえ、そのさびしさを。

作者: 藤沢悠

いろいろと一段落したので、滞っていた投稿を再開します。

誰も待ってないだろうけど。

地道にいきましょう。

赤い鳥居の下で私は幼馴染の彼を待っています。


地元の神社が開催する夏祭りはすでに祭囃子が鳴り響き、往来する人々の賑わいで活気に溢れています。

私は夜店を満喫したくてうずうずしていますが、彼がやってくるまで、辛抱強く我慢しているのです。

「待ってる時間も、デートの内でしょ」とどなたかが仰っていました。

大いに賛同します。

浴衣の袖を金魚の尾ひれのようにひらひらと揺らして、大好きな人に想いを馳せるのも、れっきとしたデートに違いありません。


ご近所だったこともあり、私たちは生まれたときからずっと一緒でした。

彼は幼いころから仏頂面でちょっぴり乱暴者でしたが、とても優しい人でした。

引っ込み思案で消極的な性格の私をお外へ連れ出してくれましたし、教師から頼まれた山積みの日誌を抱えて廊下をよたよた歩く私を見かねて代わりに日誌を運んでくれました。

助けられるたびに「ありがとう」とお礼を述べると、彼はそっぽを向いて「別に」とぶっきらぼうに返します。


でも、彼は照れているのです。

耳を真っ赤にしていますから。

それが身悶えするほど可愛らしく、愛おしくて、私は何度も「ありがとう」を言うのです。


そんなシャイな彼ですから滅多に褒めてくれることはありません。

唯一、褒めてくれたのが、この夏祭りの日でした。


十六歳になった年にふたりで地元の夏祭りへ出かけました。

初デートというやつです。

浮き足立った私は蘭鋳柄の浴衣を母におねだりしました。

当日は少し早く神社に着いたので入口の赤い鳥居の下で彼を待ちます。

約束の時間ぴったりに彼はやってきました。

いつも通りに口をへの字に曲げて、周囲の老若男女を威嚇しているみたいにしています。


私は袖を広げて、新調した浴衣を自慢しました。

彼はきっと耳を真っ赤にして「別に」と素っ気なく応えるでしょう。

いたずらをしかけたようにわくわくします。


ですが、期待は裏切られました。

彼は今までの仏頂面をほころばせ、見たこともない微笑みで「よく似合っている」と言ったのです。


驚天動地な出来事でした。

全身の肌がぽっぽと熱くなり、ぼうっとします。

お酒はまだ嗜んだことはありませんが、酔っ払いさんはこんな感じなのかもしれません。


この瞬間、私は本当の恋に落ちたのだと思います。

心臓がどきどきして、恥ずかしくなってしまい、その場から逃げ出したくなりました。

胸の中も頭の中も彼でいっぱいになって、それがどんなものよりもかけがえがなく、どんなことよりも幸せに感じたのです。


私は両手で紅潮する顔を隠しながら心底思いました。


「もう死んでもいい。このまま、この一瞬さえあれば、死んでしまっても生きていける」


そう思ったのがご利益のある神社であったためでしょうか。

私はこうして生き続けています。

もうすぐ待ち合わせの時間です。

彼がやってきます。

私は母にねだった蘭鋳柄の浴衣を自慢するでしょう。

そして彼は優しく微笑みます。


「よく似合っている」


何度だって、私を褒めてくれるのです。


あらすじがくさすぎて気分が悪いです。

びしっとはまるタイトルが思い浮かびません。

読んで頂きありがとうございました。

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