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〝―――〟はふと目を醒ました。
周りを見渡すと、そこは薄暗い路地裏で今が昼なのか〝―――〟には判断することができなかった。だが傍にあった生を輪生したセミの死体で、今の季節が夏ということだけは分かった。目醒めて間もなく未だ意識が朦朧としていた〝―――〟であったが、自分が今まで何をしていたのか思い返す事にした。
〔ああ……〕
手に纏わりつく肉と血の匂い。自分は掃除をしていたのだ。頭が悪く、仲間を作り、群れて自分のような弱い人間をいたぶり財布の中身を奪い取ることばかり上手い連中の。
少し前までは自分は弱かった。だが今の自分は違う。
奴らを掃除してやった。あんな連中、他の人間に迷惑を掛けるばかりで生きていたって大した価値はないだろう。
〔ああ……〕
〝―――〟は恍惚した。自らの〝力〟に。
〝―――〟はゆっくりと立ち上がる。
自分を嬲ってきた連中と同じような人種を求めて。
やつらはゴキブリのようにいくらでもいるのだから。
掃除をしなければならない。
立ち上がり、歩き出す。
そのとき、近くの水溜りが〝―――〟の姿を映した。
その姿はもはや人のモノではなかった。
だが〝―――〟はソレに気づくことはなかった。




