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夢宵桜  作者: maon
9/14

...避けてる



------------



昼休みが終わり教室に戻ると、入口に淳が立っていた。とても神妙な面持ちで、通行人の妨げになっていることすら気付いていない。



「ちょっとバカ淳、こんな所に立ってちゃ邪魔でしょ」



いつも通りの様子で結衣が声を掛けてやっと、淳は私達の存在に気付き、壁にもたれ掛かっていた体を起こす。



「おい、お前ら...」



と言いながらも視線は私に向けられていて、私は笑顔で頷いた。相当心配してくれていたのか、淳の顔が途端に明るくなる。



「やったじゃねーか、由奈」



そう言って、拳を軽くおでこにぶつけてきた。その様子を結衣と芽衣は訝しげな顔で見つめている。



「...まさか、あんた知ってたの!?」

「淳くんだけずるい!」

「別にずるくはねーだろ!」



いつも通り結衣が淳にゲンコツをお見舞いし、芽衣が笑ってその様子を見ている。



「...ありがとう」



誰にも聞こえないぐらいの声で、そっと呟く。皆を信じて良かった、こんな素敵な友達が居てくれる私は...とても幸せ者だ。



開け放たれた窓から風が吹き寄せ、私を心地よく包む。今日、私に本当の友達ができたんだ---------



-------------



「遅くなっちゃった」



皆で昨日のカラオケのリベンジをしていたお陰で、時刻はかなり遅くなり...補導時間ギリギリになってしまっている。


私には身元引受人になってくる親も親戚も居ないため、補導なんてされた日には大変である。小走りで路地を走るが、



「やっぱり夜は嫌だな...」



路地には多くの死者の魂が浮遊している。自分が死んだことに気付かず、延々と飛び降り続ける人。何度も何度も車にはねられる人...ただその場に立ち尽くしている人。


本当はこの道を通りたくはないが、いつもの道を進んでいたらかなり遠回りになってしまう。息を止め、できるだけ目を合わせないように道を進む。


すると、目の前に人影が見えた。まだ遠いのでよく見えないが、その服装から同じ学生であることがわかる。



「変なおじさんとかじゃなくって良かった...」



そんなことを呟きながら、周りに浮遊する霊達に怯えながらも小走りを続ける。目の前の人物との距離が縮まり、ようやくその姿が見えた。特に意味は無いが、目線を上に上げて学生の姿を見る。



学ランを着ているが、その雰囲気から見て中学生ではなく高校生だろう。黒髪できちんとセットされていて、身長はそれなりに高身長だと思う。


何より、切れ長な目と整った鼻...この距離から見てもかなりのイケメンであることがわかる。芸能人だと言われても納得するほどの、独特なオーラを発していた。



(...淳もイケメンだけど...タイプが違うよね)



淳がアイドル系イケメンだとすると、目の前の男子高校生は限りなく正統派イケメンだろう。ただ、そのイケメンはやけにフラフラと歩いていた。



「...!!」



気になってその様子を見ていると、私は目の前の光景に驚愕する。この際、容姿なんて目に入らない。



「...避けてる」



そう、目の前の人物はただフラフラ歩いているのではなく、明らかに『何か』を避けて歩いているのだ。その『何か』が、どういった類のものであるかということは、私がよく知っている。



私は確信した、

この人は...見えている!



今までに感じたことのない感覚が私を襲い、どういった感情なのか小刻みに体が震えてしまう...。



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