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政争学園 ~生徒会長への道~  作者: 大野外記
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第3話

「この部費の私的流用問題は、到底許されるものではありません。監査委員会としてはこの問題にどのような態度で臨むのかお聞かせください」


 新学期となり最初の定例代議員会において、現生徒会長に対しての野党勢力ともいえる文化部系の代議員が先日発覚した、サッカー部における部費の流用事件について、各部の部費の使い方について監督する監査委員のトップである監査委員長に対して、問題をどのように扱うかについて詰問している。


  生徒会長は選挙後に生徒会執行部のメンバーとなる、副会長1名、会計1名、会計代行1名、書記2名を任命する。他にも、生徒会長は会長補佐官を2名まで任命でき、こちらは必ずしも任命する必要はない。

 この執行部メンバーはほぼ、自分に近いメンバーや所属政治会派からの推薦に基づき任命される。しかし、常設委員会は数が多いため、また議会を正常に運営する上での譲歩策としても何個かのポストは、野党勢力にも席が渡ることになる。


 白鷺学院の常設委員会は、学生評議委員会、風紀委員会、監査委員会、選挙管理委員会、議会運営委員会、財務予算委員会、図書委員会、放送委員会、総務委員会、美化環境委員会、運動委員会、生活委員会、司法委員会の13を数える。

 常設委員会以外には、体育祭や文化祭、合唱コンクール、球技大会などが行われる際に各種実行委員会が特別委員会として設置される。他にも、各生徒会長が自身の目指す政策の遂行のために特別委員会を設置し委員長を任命することもある。

 この12+αの委員長のうち、議会会派の構成にもよるものの3~5の委員長ポストが野党勢力にわたることになる。しかし、各部活や委員会の予算の使い道を監督する監査委員長、校則に則り違反者を取り締まる風紀委員長、校則違反者への処分の決定に関与する司法委員長、校内備品の整備などで扱う予算の多い総務委員長などの重要委員長は与党勢力がポストを守るのが一般的である。


 そのため、与党勢力に問題が発覚しても、監査委員長が問題の深い追及を拒否したり、調査が行われてもおざなりで終わったりするのが多く、過去には司法委員長が指揮権を発動し、当時の生徒会長の疑惑の捜査を中止に追い込んだこともあった。

 特に、現在の監査委員長は、生徒会長との関係も近いことから、今回の問題についても詳しく調査することなく、残り約1ヶ月の任期を乗り切るものと思われていた。

 だからこそ、監査委員長の発言は質問した代議員だけではなく、与党勢力、そして代議員会を傍聴していた一般生徒らにも衝撃を与えた。


「ええー、この問題については私も遺憾に思っています。真相を解明して生徒の皆さんにきっちりと説明したいと考えます」


 監査委員長の発言により議場は喧噪に包まれてしまう。


「参考人を招致しろー」

「サッカー部を活動休止にしろ」

「うるさいぞ」

「代議員は除名だー」


 会派を問わずそれぞれ発言をし、会議は混乱に陥ってしまう。


「静粛にしてください。席について」


 代議会の進行役である代議員会議長が止めようとするものの混乱はなかなか収まらなかった。







「おやおや、やっぱり執行部側はあいまいにごまかして収めずに、サッカー部を売ることにしたみたいだねえ」


 現在僕は文芸部の部室で放送されている代議会の様子を見ていた。

 代議員議会はほぼ毎回、重要な事案を審議する場合の委員会審議会は、放送委員会と放送部が中継放送している。(ちなみに、放送委員会は常設委員会なので執行部よりに、放送部は文化部なので反執行部よりになってしまうものの、放送に関しては教職員と一部生徒による検閲が入るのである程度の中立は保たれている)

 いつもの代議員議会は、ほぼだれも見ないが今回のように問題が起こったときや選挙前には視聴率が上がる。僕たちも昨日の新聞の記事が気になったので今日は部室のテレビをつけてみている。


「でもなんで今回の問題は執行部側も擁護しないんだ」

「ああ、それはねえ、今の生徒会長というより運動部内の政争だよ」

「どういうことだ。同じ運動部内で争ってる場合じゃないだろ」


 今回の不祥事は少なからず運動部にダメージを与えるはずだ。

 運動部にも文化部にも所属していない人だってかなりいるし、運動部内にもそこまで政治活動に携わっていないひとや興味をもっていない人だっている。そんな人たちが不祥事のイメージを嫌って文化部系候補に投票してしまったら運動部が負けることになってしまう。


「昨日、サッカー部の次期部長が生徒会長候補予定者だっていっただろう」

「ああ、たしか福島ってやつだっけ」

「もう選挙まで1月を切っているけど、彼はまだ正式に運動部連合の生徒会長候補の公認をもらったわけでも内定されたわけでもないんだよ」

「あっ、候補者として正式に決まったわけじゃないってことはこっから変えられるかもしれないってことか」

「ご名答。運動部は会長候補を野球部とサッカー部交互に選んでいるんだよ」


 確かに今の会長は野球部だし、去年の前期の部長はサッカー部だった。


「会長というか執行部が擁護しなかったのはサッカー部からの会長候補を出さないためか」

「そうだろうねえ。ついでにこの問題ももしかしたら会長ー野球部サイドからリークされたのかもしれないねえ。」


 いくら強大な力を持つとはいえたかだか高校の生徒会長になるためにここまでするかと僕はあきれてしまっていた。


 

読んでいただきありがとうございます。

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