第2話
久々の投稿です。
夏休みが終わって初めての登校日。始業式やら夏季休業の確認のテスト、そして帰りのショートホームルームを終えた僕と千鶴は、文芸部の活動を行うために部室に向かっていた。
「はあ、何も夏休みあけ初日に確認テストをやらなくてもいいよなあ」
「おや、テストに文句を言うということは結果は芳しくなさそうなのかな」
「別にそういうわけじゃあないんだけど」
僕は学生ならだれでも不満に思うであろう長期休業明けすぐのテストに文句を言いながら部室のドアをあける。
「あら、二人ともこんにちは」
部室に入るとすぐに声をかけられる。
「ああ、部長こんにちは」
「こんにちは」
俺たちに挨拶をかけてきたのは文芸部の部長である3年の小幡多可子先輩だ。
部長は、新聞を読んでいたのか机に新聞を広げ、椅子に座っていた。
「二人とも夏休みは楽しく過ごせたのかしら?」
「楽しくというかまあ適当にゴロゴロとしてたら終わってしまいましたよ」
「私は親戚の家に行ったりしましたが、それだけでしたね」
「あらー、せっかくの高校2年の夏休みなのにもったいないんじゃない?」
小幡先輩は、ポワポワとしたお日様のような人だ。しゃべり方もどこかのんびりしていて可愛らしい。
まあ、ちょっと天然な人でもあると思うんだけど。
「特に、やりたいこともありませんから。ところで部長、何か面白い記事でもありましたか?」
話を変える意味もあったが、実際どんな記事を読んでいるのか気になったので、新聞の記事をのぞき込みながら聞いてみる。
まあ、この新聞ってのは読〇新聞や朝〇新聞、産〇新聞みたいな本物?の新聞ではない。
あくまで、学校の新聞部が発行している学校新聞である。とはいえ、壁紙新聞のような簡単なものではなく6~8ページの本格的な新聞で毎週1回発行している。一応地元の商店街などから広告料をとって広告を載せている。他にも3月から5月頭頃までは部員獲得のためいろいろな部活も広告を出している。
それにこの新聞も校内の売店で売られている。うちの部活では一応文章を書く部活なので部で定期購読という形で新聞を取っているので部室に新聞がいつもあるのだ。
今部長が読んでいる新聞は文化部系の新聞だ。新聞部といえば文化系の部活動で当たり前と思うかもしれないが、この学校では文化部系と運動部系で対立している以上、文化部の新聞部が発行する新聞の内容は親文化部系、反運動部系の記事になってしまう。
これはまずいと思った運動部系の部活動が部員を兼部させる形で親運動部系の新聞を発行する部活を作ったのだ。その結果、現在うちの学校には文化部系の「新聞部」が発行する『白鷺新聞』と運動部系の「白鷺新聞研究会」が発行する『学院新報』、そしてこの対立とは距離をおく所謂中立派という学生が独自に発行する『白鷺タイムス』の3紙が発行されているのである。
「うーん、新聞部さんも新学期最初の号だからか、大きいスクープを飛ばしてきたみたいね」
「おや、スクープと言われれば気になりますねえ」
今まで会話に混ざらなった千鶴も気になったのか新聞をのぞき込んでくる。
記事には確かにスクープともいえる内容が書かれていた。
「サッカー部部長ら部首脳4人が部費を流用して豪遊って、さすがに豪遊は言い過ぎなんじゃないですか?」
「まあ、これは反運動部の新聞だからね」
「ええ、ですがサッカー部の部費を部長たちが勝手に使ったていうのは事実ですからねえ。明日からの代議員定例議会で攻められるだろうね」
記事の内容をざっと説明すると、サッカー部の部長らが昨年度の3月に残った部費でお菓子やジュースを買い、遊興したってだけだ。まあ校則で遊興費は報告しなければいけないし、そもそも部費の中で使えるのは、大会等の打ち上げや新入部員の歓迎会などの部員がほぼ全員出席するような会だけだ。だから、部長ら一部メンバーだけの今回は私的流用ということになるわけだ。
「でも、こういうのって他の部活でも結構やってるんじゃないか。そんなに大事にはならないような気がするけど」
「それはそうなんだけどね、そのメンバーがまずいんだよ」
「えっ、どういうことだ」
僕は、記事をもう一度読み直す。
「なになに、『今回問題となっているのはサッカー部部長大引賢治氏(当時2年)、運動部連合・サッカーを通じ明るい校内を目指す会所属角田勝代議員(当時2年)、同三村洋介代議員(当時2年)、サッカー部副部長福島正智氏(当時1年)の4人…』て確かに、代議員はまずいかもしれないけど」
「問題は、そっちじゃないよ。副部長さんのほうさ」
「この福島ってやつか」
「そうだよ。君だって名前くらい聞いたことあるんじゃないのかい」
「ええと、確かサッカー部の主将で次期部長だっけ」
うちの学校では、部長の代替わりは10月からと決まってるから、すでに大会で敗退し3年生が引退しているサッカー部でも、部長等の首脳陣はまだ代替わりしていない。
「うん。ただね、これはまだ公にはなっていないが、彼はサッカー部次期部長で有るとともに実は運動部連合の生徒会長候補予定者でもあるんだよ」
「なんで、お前がまだ公になっていないことを知っているのかは気になるが。なるほど、サッカー部だけじゃなく運動部系の会長候補のスキャンダルなのか」
「そういうことさ。今回の選挙は案外激戦になるかもしれないねえ」
千鶴が、めずらしく選挙に興味を持っているようだが、もし選挙に首を突っ込むつもりなら、僕は巻き込まないでほしいな。
読んでいただきありがとうございます。