お題もの、その一
「どぅありんぐさまーばけーしょんなう」
学生にとっての夏休み。
ジリジリと肌の焼けるような日差しに早くも涙が出そうだ。
母親に「暇なら高知のおじいちゃんの家行ってきたら?」と。
父親に「悪いけど俺の代わりに遊びに行ってきてくれ」と言われ。
一人っ子の僕は断れる筈がなかった。
手伝ってもらったためか、手早く済んだ荷造り。
暑いだろうからと被らされた帽子、短いズボン。
それら全てが煩わしく、鬱陶しい。
どんなに表を見直しても一時間はこないバス。
みーんみーんと鳴きまくるセミ。
一週間も持たずに死に絶えろ、なんて柄にもなく思ってしまう。
「生きてるのって、大変だー」
誰もいない、舗装すらされていない道の真ん中で独り叫ぶ。
ほらほら、誰か気づいてくださいよって、見えないものに話しかける。
心の中で。
無駄に声を出して水分を失った喉を潤そうと水筒に手を伸ばす。
あと少ししか残っていない。
こんなのでたどり着けるだろうか。
パカっと開いたガラケーを開くと丁度おやつの時間。
「甘いアイスが食べたいぞっ」と父親にメール。
返信がされるのは日付が変わるころだから、到底間に合わない。
母親に電話。「只今電話に出ることが・・」ぶち。
留守電なら入れる必要なし。
ガラケーじゃなくてスマホだったらネットやアプリで紛らわせるだろうに。
・・・・うに、うに。
セルフエコーで嫌いな食べ物の名前を連呼。
あんなもの食べ物じゃない。
あれが高いなんてふざけている。ぼったくりだ!
段々頭がぼんやりしてきた。
もうダメかもしれない。
「どうでもいいから早くバス来てー」
その後僕がおやつにありつけたのは二時間後だった。