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奇妙な下宿人

『小説家になろう』初めての作品投稿でまだかってがわかっていませんが、楽しんで読んでもらえれば嬉しいです

私の家には下宿人がいた。


いつ頃、家に来たのかなんてことはとうに思い出せず、唯一覚えていることは祖父が死ぬ前に連れて来たということだけだ。


下宿人は常にスーツを着て、朝から晩まで死んだ祖父の書斎に篭り、何やら怪しい書物や機器を書斎に持ちこんでいた。下宿人の頼みで私たち家族は書斎には一切入らなかった。


夕食前になると決まって私が下宿人を呼びに行った。ドアを叩くと下宿人は顔を出すが、書斎の様子を覗き込もうとすると中が見えないように起用に身体で隠したものだった。


夕食の際、男は私の目の前の席に座るのだが、滅多に口を開くことはなかった。誰よりも早く食べ終わると食器の片づけを母に任せて、また書斎へと姿を隠す、それが下宿人の一日の行動だった。


私は下宿人を異常に恐れた。


夜、トイレに向かう際にこの世のものとは思えない声を書斎から聞こえ、下宿人が時折り口から洩らす言葉が私を恐れさせたのだ。


ある日、一通の手紙が下宿人宛に届いた。手紙の内容を見るや、下宿人は荷物を纏めて慌ただしく出て行ったのだ。


この時、下宿人が書斎に鍵を掛け忘れていたことを目撃した私は下宿人が中で何をしているのか好奇心を抑えることができずにはいられなかった。


書斎の中は本棚の本や書類で散らかっており、本棚の本があった場所には蓄音機のような機械や何を入れるのかわからない円筒が本の代わりに置かれていた。最後に見た祖父の書斎とは全く違っていた。


机の上に下宿人宛の手紙があることに気がついた。慌ただしく出て行ったので、忘れたようだった。


この手紙にこそ下宿人が何をやっているのか、そして、下宿人の正体につながるものがあると考え、手紙を手にとった。


手紙に目を通すと、その内容は――意味のわからない文字の羅列だった。単語にすらならない文字が手紙一面にびっしりと書かれていて、暗号であることは間違いなかった。


解き方を考えていると書斎に悲鳴が響き渡った。入口に目を向けると下宿人が青い顔をしてこちらを見つめていたが、また悲鳴を上げると家を飛び出して行った。


この出来事以降、下宿人は家に戻ってはこなかった。連絡もなく、家族はただただ困惑した。


そう言えばと家族に下宿人の名前を聞いたが誰一人として、下宿人の名前を知らなかった。


そして、いつの間にか書斎にあった円筒も消えていた。


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