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1話 魔王VS勇者

 読者方へ。


 基本ギャグテイストを目指します。

 テンドン(繰り返し)要素があります。

 理論とか深く問われても困ります。

 諸事情により、登場人物の女性は全て“男装”です。


 以上を踏まえまして、よろしければお進み下さい。

 作者より。






 昔々の話で御座います。

 ラ・ダバダバ大陸と言う、それはそれは大きな大陸がありました。

 穏やかな気候に肥沃な大地、恵まれた水源が至る所にあり、多種多様な生き物を(はぐく)みました。

 そして、多くの生命を、これまた多くの神々が暖かく見守っていたのです。

 神々の恩恵は、あまねく大地に行き渡り、生命はそれらを『マナ』と言い習わしました。



 マナは非常に便利な存在でした。

 料理に、裁縫、土木、建築、鍛冶、治療、果ては育児にも便利なマナは活用されました。

 誰でも使える上に、世界に満ちるマナは際限がなく、尽きる事がありません。

 おかげで、生命はとても高い文明を築き上げ、千年万年と繁栄は続くだろうと、誰もが信じて疑いませんでした。



 しかし、その光景を見守っていた神々の内の一柱が、疑問を持ったのが始まりだったのです。

 闇を司る神が、本当にこのままでいいのだろうか。と、他の神々に訴えました。

 この頃になると、生命は爪を切るにもマナを使う有様で、昼も夜も区別がつかない程の世界を作り上げていたのです。

 闇の神の心配も、実に最もな事だったので、賛同する神々が多く集まりました。

 けれど、今まで生命を見守ってきたのだから、今更何を言うのだと、闇の神の考えに反発する神々も多くいました。

 その筆頭が、光を司る神です。



 最初は小さな討論だったのが、多くの神々が集まった事で派閥が出来てしまったのです。

 次第に熱を帯びていく議論に、言い争う事が増えていきました。

 闇の神が率いる『改革派』と、光の神が率いる『保守派』が度々衝突を繰り返します。

 お互いに考えが変わらぬ両陣営は、等々、口先ではなく力を振る寸前までに発展してしまいました。



 さすがに全員で乱闘をする訳にはいかず、お互いの陣営から代表者を選出し、一騎打ちにて結論を決める事に落ち着きます。

 これは、中立派の神々の、精一杯の仲裁方法でした。

 了承した両陣営は、お互いに言いだしっぺの神が代表として出陣します。

 言いだしっぺの法則に付け加えると、神々の間には『格』と言うモノが存在し、上下の仕切りがありまして、闇の神と光の神は高い格を備えていた事があげられます。



 闇の神と光の神は、激しい戦いを繰り広げました。

 二柱の力は、他の神々が考える以上に拮抗していまして、次第に泥仕合を呈していきます。

 戦いに集中する二柱は、闘争の昂揚も手伝い、エスカレートしていく力の余波にとんと気が付きませんでした。

 これはマズイと、見守っていた神々が慌てましたが、どうする事も出来なかったそうです。

 両陣営のどちらの神が間に入っても、一騎打ちの規則を破ったと不利益を被る事になり、中立派はもともと気が弱い神の集まりでしたので、絶好調で生き生きと力を振るう二柱の間に飛び込む勇気はありませんでした。

 平時でしたら、中立派は数の多さで交渉に立てましたが、それは闇と光の神が話を聞く理性を持ち、二柱が話を聞き入れる余裕を持っていた事が大きかったのです。



 光の神がマナを波状に放出すると、闇の神は飛び退(すさ)ります。目標を失った力の大波は生命の都市を蒸発させました。

 闇の神がお返しとマナを篭めた球体を撃ち出すと、光の神は払い除けます。目標を失った力の球は生命の都市を飲み込み無に還しました。

 接近戦にて攻防を繰り広げると、一合で森が薙ぎ倒され、二合で河川が逆流し、三合で地にヒビを入れます。



 拉致があかないと二柱は距離を取り、世界中のマナを掻き集めるようにして力を練り上げます。

 白と黒の極大の力の帯が衝突すると、まず空が砕けました。砕けた空の破片が地表に降り注ぎます。

 すでにボロボロになった大地は、まるでビスケットを割ったように、巨大な大陸はバラバラに砕けてしまいました。



 これには二柱、無言で見つめ合い苦笑いしたそうです。



 『ビスケットが砕けた日』、この時を境に地上から神々は姿を消しました。

 生き残った生命は、砕けた地にしがみつき、懸命に日々を生きる事を強いられたのです。

 大小数百の島を住処にしまして、途絶えた文明に懸想(けそう)を抱く事が、決して叶わぬ復興と知りながら、涙を濡らし生きたのでありました。



 この世を去った神々でしたが、神としての矜持が残っていたのでしょう。

 『ビスケットが砕けた日』以降、生命に不思議な事が起こりました。

 世界から消えたマナが、再び復活を見せたのです。

 けれどもそれは、以前のような世界を満たす程の無限ではありませんでした。世界から汲み上げていたマナは、神々が殆ど使い果たしてしまったので空の桶です。

 何処に蘇ったかと言いますと、生命の内側に秘めるように現れました。極わずかに湧き出る清水のような小さき力でしたが、生命には希望となったのです。



 それから数十年の月日が経ちました。

 奇跡のマナを操り、生命は辛うじて営みを繋げましたが、世界のマナと違い、奇跡のマナは個人の素質にその量を左右されるモノでした。

 それに、内側から湧くので使用が限られます。何度も試行錯誤を繰り返し、確かな技術として奇跡のマナを昇華させていきました。

 魔法の誕生です。



 ある時、魔法を得た生命の中から、とても強大なマナを身の内に宿す者が出てきました。

 その者は『神々より啓示を受けた』と言い、自らを『闇の神の代弁者』と名乗りあげました。

 一線を画す力は、まさに神の代弁者を騙る事に、なんの不足もなかったそうです。



 力弱い他の生命は、強い指導者を歓迎しました。過酷な生活を、今もって続けているのですから、強者の保護を受ける事に不都合はなかったのです。

 しかし、独裁を許す事に不安がない訳ではありませんでした。もし、強い指導者が間違ってしまったら? その力を弱い者に向けるようになったら?

 懸念が形となり始めた頃に、再び『神々より啓示を受けた』と言う者が現れました。『光の神の代弁者』を名乗る者は、『闇の神の代弁者』へと挑戦状を叩きつけます。



 ようやく生命は理解します。

 ――――神々の戦いは終わってないのだと。



 『光の神の代弁者』を退けた『闇の神の代弁者』は、細かく割れた島の王として、名を『魔王』と改めました。

 密かに驕りが出始めていた魔王は、僅差で勝った争いに心を正したそうです。同列の力は魔王に抑制を与えた為に、他の生命は果敢にも挑んだ『光の神の代弁者』を勇気ある者とし、『勇者』と称賛しました。

 数多くの島で、この様な戦いが繰り広げられ、その多くの戦いで魔王が勝利します。

 中には勇者が魔王を打ち破った島もありましたが、全体を見渡すと圧倒的に魔王が優勢でした。

 そうして、この世は『魔王時代』を迎える事となるのです。



 地上とは別の場所、神々が住まう世界。

 闇と光の神の争いは、『ビスケットが割れた日』より、一旦は収まったかのように見えましたが、闇の神が地上に干渉した事で、光の神を突き動かしました。

 それは、水をかけて鎮火させた木材が、炭の内に熱を持ち何かの拍子に火を吹き上げるように、闇の神と光の神の闘争と言う熱は再燃します。

 闇の神は、『我々が世界のマナを使い尽くしてしまった責任の為、生命に直接、神の加護を授ける』と言う手段を取った事に、大変怒りを覚えたのです。

 対抗して光の神が、闇の神の取った手を真似ましたが、一日の長は闇の神に勝利を齎しました。



 光の神は挫ける事なく、勝利に酔いしれる闇の神の横、黙々と次の手を模索し水面下で工作を続けます。

 その甲斐あってか、数々の島で優勢だった魔王達は頂点から引き摺り下ろされて、代わりに勇者達が台頭しました。

 ここに『勇者時代』を勝ち得たのです。



 光の神のパクリに、闇の神が怒らないハズがありません。

 『っめえぇぇ! 真似してんじゃねぇぇよっ!』と、激怒しました。折角、建前の隙間を縫って光の神を出し抜いたと思った所を、事もあろうに同じ手法でおいしい所をかっさらわれてしまったのですから。

 これでは、光の神のいい引き立て役ではありませんか。闇の神は魔王達に、更なる力を与え再起を謀ります。

 これにより、劣勢だった魔王の版図は一気呵成に逆転しました。

 『大魔王時代』の復活となったのです。



 宿敵であります光の神が、闇の動きを黙って見ているハズがありませんでした。

 『真似じゃねーーしぃ!? こっちだって企画してたっつーの! オマエラがオレラの企画パクったんじゃねっ?!』と、切り替えしました。

 生命の力を増やすと共に、光の神は自らの力を結晶化させた武防具を、勇者に授ける事で攻勢に出ます。

 その力は目を見張るモノがあり、たまらず魔王達は膝をつきました。

 『超勇者時代』は、隆盛を誇りました。



 そうして、シーソーゲームのように、時に光へ、時に闇へと傾き適度なバランスを保ちつつ、更なる新たな時代を迎えます。

 代理戦争が複雑化し長引くと事で、いつしか『混沌の時代』と呼ばれるようになりました。

 これは、そんな『混沌の時代』のお話です。











 点在する数百の島の内、72の巨大な島の一つ『グラウンド』。

 パッチワークを、不器用者が角度を計算しないで、乱雑に繋ぎ合わせたような歪な群島があった。

 場所に寄っては、樹海が広がる土地が続くかと思いきや、いきなり砂漠地帯になったり、平らな草原が広がるかと思いきや、次に切り立った山脈が軒を連ねるおかしな島。

 特徴的な『グラウンド』にも、1組の魔王と勇者が存在している。どちらかが片方を下せば、島の実権を手にする事が出来る。

 それは『ビスケットが砕けた日』からの、決まり事だった。



「今日こそ倒し、その椅子貰うぞっ! 『当代勇者』金環食の王よ――――『コズミックイレブン』!!」



 頭から足のつま先まで、全身を黒い基調の服装で身を包んだ青年が、高らかに宣言をあげて右手を突き出す。

 右指の周りに11個の黒球を浮かべ、直線上に解き放つ。

 11個の黒球は、それぞれが追いかけっこをするように、飛び走り勇者に殺到する



「来たか『今代魔王』、片翼の王! 懲りない者だねッ! ――――『光波斬』!」



 少年とも見れる年の勇者は、蒼穹に溶けるような色合いの軽鎧を身に纏い、既に抜身の長剣を握り締め、迫り来る黒球を睨み魔王に応える。

 合図と共に、刀身が目映いくらいに光を放つと、乾坤一擲とばかりに上から下に振り下ろす。

 極光に飲まれ黒球が消えると、躊躇う事なく剣を振りかぶり、魔王に向かい躍りかかる。

 鎧の重さを感じない軽やかな跳躍で、戦いの邪魔にならないように、背中で括った草原の尻尾が跳ねた。



「畳み掛ける! 覚悟ッ――――『神剣グランバール』我が奇跡を糧に、顕現せよ『光在(あまねくそばにあれるひかり)』!」



 神剣の名を高らかに叫ぶと、刀身から光の奔流が零れる。

 滝のように余波が魔王の頭上に降り注ぐ。黒いマントにマナを流し込み大きく煽る様に翻し、視界の邪魔になる光を吹き飛ばすと、青い光が瀑布のように迫り来る。

 右手を持ち上げながら、防御の態勢を取ると矢継ぎ早に障壁を展開した。 



「チィィ! 『ダークネスヴェール』! 『クラッシクヴェール』! 『ナイトヴェール』!」



 間一髪、闇色の障壁が間に合うも、勇者の一撃はそんな事では止まらない。

 砕ける前に、二つ三つと闇色の障壁を幾重にも生み出す。



「まだだッ! どんどん上げていく――――我が心に応えよ『神剣グランバール』!!」



 既に残り一つとなった魔王の障壁も、亀裂が蜘蛛の巣のように走り役目を終えようとしていた。

 防御の合間に切り抜ける思案をかけるも、圧倒的な力量の差を噛み締めるだけで、良案が一向に出てこない。

 やや自棄な考えに突き当たり、躊躇しながら障壁に向かって距離を詰める。



「くっそっ!? 囲え集え『ネイルショット』! 巻き込んだらァァァァァァ!! 『ホビー・ザ・プラネタリウム』!」



 黒い杭を空中に生み出し、自分諸共、周囲に囲いを作り出す。地面に刺さった杭を起点として、杭と杭を結びつけ黒いドームを形成した。

 密閉された空間の中で、許容を越える力が爆発すれば、両者に致命的なダメージを与える事は瞭然だった。

 これには勇者も顔色が変わる。しかし、神剣に注ぎ込んだマナを、そして発動中の神剣を止める事は出来ない。



「やめッ?! こんな事をしたら魔王、貴方もただでは――――」



「チキチキ耐久レースと洒落こもう――――」



 

 耳をつんざく音響と、粉塵を巻き上げて黒いドームが消し飛んだ。



 



 ここまで読んで頂き、有難う御座います。


 成り行き発射です。お見逃し下さると助かります。


 ご指摘、罵倒ありましたらよろしくお願いします。



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