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第一話
「ん…もう日暮れか…」
真はそう言って腰を上げる。
「もう…行かれるんですか?」
千が、少し淋しそうに聞くと、真は「ああ」と言った。
「…そんな悲しそうな顔をすんじゃねぇよ。また明日来る」
その一言を聞くと、千の表情がパッと明るくなる。
「はいっ。またいらして下さい」
「ああ」
千は、真を店の前まで送った。
その様子を一人の男が見ていた。
「あれは…へぇ、面白そうだね」
そう言って、男は千の前まで歩いて行く。
千はそれに気づき、声をかけた。
「お客様ですか?」
「うん」
千は店の中へ案内する。
「お千?お客様?」
中から出てきた女の人が話しかけた。
「はい」
そう言うと、女の人が千を手招きした。
千は不思議そうに、女の人のところまで行く。
「今、皆手が離せないの…悪いけど、千がお相手をしてくれる?」
千はそれを聞いて驚く。
「いいんですか?」
千は今まで、真以外を一人で相手したことがない。
「大丈夫よ。お願い」
「はい。ありがとうございます」
千はそう言って、男を案内したのだった。