尋問
狭く暗い部屋を机のスタンドライトが照らす。ここは取調室だ。俺は若い刑事に捕まってしまった。奴は知っていた。俺がこの世には存在しない人間ということを。
「いつまでだんまりを決め込むんだ?お前がヤクザ殺しの犯人ってことは分かってるんだぞ。」
奴はイライラしている。さっきから机をばんばん叩いている。そのたびにスタンドライトは揺れ、俺の顔を照らす。その眩しさは路地裏で初めて人を撃った時に似ていた。
「いくら死んだのがヤクザだとしても殺しは殺しだ。お前は正義感でやったつもりだろうが、本当の正義は俺だ。法律なんだよ!」
あぁ分かるよ。だが、あんた等は捕まえては刑務所に入れてそのまま時が来るまで飼ってるだけだろ。そんなんじゃ裁きとは言わないんだよ。
「お前は自殺したはずだろ?でもなんで俺の目の前にいるんだ?一体、お前は誰なんだよ…?」
奴は俺の胸倉をつかんだ。そろそろ殴られるはずだ。だけど、何も奴に話す気はない。もう少し、もう少し時間を稼げば俺は出れるはずだ。
奴はそんなこと知らない。取調室のドアがノックされ、ドアを開けた奴は自分の耳を疑うのだ。「彼を釈放しろ」という上司からの命令を聞き。