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決行

あれから3日経った。口の違和感も慣れた。おっちゃんが色々調べた結果、今日が計画を実行する日らしい。計画と言っても鹿野組の事務所にいる奴らを片っ端撃つだけ。


「頑張ってくれよ!わし達の生活が掛かってるんだ。これからのキミの生活も保障されるぞ!」


おっちゃんは息巻いてる。気が楽だな。死ぬのは俺だけだ。今、おっちゃんを撃てば…。ダメだ、そんな考えちゃ!


「市役所の奴らにみやげものがある。こいつを事務所の分かりやすいところに置いてくれ。」


手渡されたのは封筒。中身は市役所への脅し文句とかそんなものだろう。そろそろ行くとしよう。拳銃は紙袋ではなく、おっちゃんが何処からか持ってきたポーチに入っている。


「今日の事務所は人が少ない。だが油断は禁物だからな。帰ってくれば酒が呑み放題だぞ!」


おっちゃんは俺の方をポンッと叩いた。思えば酒なんか全然飲んでない。酒の為に殺しか…いや正義のための殺しだ。


*


夜。さすがに人気の多い日中は回避した。鹿野組の事務所はこのビルの2階に構えている。エレベーターではなく階段で行くことにした。


奴らは俺の顔を知っている、もしエレベーターでばったり組の奴と会ったら直ぐには対応できない気がしたからだ。


ヤクザの事務所が入ってるビルと言っても普通のビルにしか思えない。しかも鹿野組事務所という看板があるはずでもない。よくおっちゃんは…。


階段を上ろうとした瞬間、上の階から男が降りてきた。奴は俺を見てはっとした。奴は俺を知っている。そして俺も奴を知っている。コンビニに来たサングラスの男だ。


「お、お前死んだんじゃなかったのか!」


「あんたも死んでなかったみたいだな…。」でも、もう終わりだ。ポーチから拳銃を取り出し奴に向かい撃ち込んだ。奴は階段から転げ落ちた。今の銃声で奴らに気づかれたはずだ。


足早に階段を上り、事務所のドアを蹴り破った。


ドアの向こうには男が倒れていた。銃声を聞きつけ出ようとしたのだろう。まだ若いようだが…。俺は彼に拳銃を向け、引き金を引いた。


「て、てめぇ馬場んところのもんか!」


事務所の奥にある社長椅子に腰掛けた男が叫んだ。馬場って誰だ?気にするな、奴に拳銃を向ける。だが、死角から日本刀を持った男が切りかかってきた。


とにかく避ける為に下がった。俺はさっき撃った若い男にひっかかり転んだ。これのお陰で攻撃は避けれた。そして拳銃は奴の顔面を捕らえている。


俺は引き金を引いた。弾は奴の顎を持っていった。人間のこんな姿は、はじめて見た。奴は俺にもたれ掛かってきた。俺の服は奴の血に染まった。まだ奴は生きていた。止めでもう一発撃った。俺は立ち上がり社長椅子に座った男の元へ向かった。


「あんたが組長かい?馬場とか言う奴のことは知らないけど、正義の為に死んで貰うぜ。」


決まったぜ。奴に向かって拳銃を撃った。奴の額には穴。そしてその穴からは血が流れ出た。俺はおっちゃんから貰った封筒を机の上に置いた。そして事務所から立ち去ろうとした。


だが、気になって仕方が無いことがあった。あの封筒だ。市役所がヤクザを使ってホームレスを脅すなんて…もしそれが事実だとしてもおっちゃんは何故こんなにも事情に詳しいんだろうか?


その理由があの封筒にはある気がしてならない。俺は封筒から一枚の紙を取り出した。づらづらと長文が書かれている。文は「拝啓、大道会会長殿」で始まり、「元大道会馬場組組長より」で終っていた。


あの男が言っていた馬場とかおっちゃんの事だった。そしておっちゃんは俺を利用して鹿野組を潰し、再び大道会へ返り咲こうとしていた。結局、俺は悪の手助けをしてしまったようだ。


全ては正義のためだと思ってやったことなのに。パトカーのサイレンの音が聞こえる。直ぐに事務所を後にした。


*


ホームレス村に戻ると、おっちゃんはどこからか持ってきた酒で歓迎してくれた。たぶん馬場組の人間が持ってきてくれたんだろう。


「よく戻ってきた!服が血だらけだぞ、だいぶ暴れてきたんだな!」


おっちゃんは嬉しそうだった。そりゃそうだ、このホームレス生活から逃れて再びヤクザな道を歩めるんだからな。まぁホームレスをやってたのは鹿野組から逃れるためらしいが。


「なんだ浮かない顔して!キミのお陰でわしらは助かったんだぞ…。」


「助かった?これからもホームレスを続ける訳じゃないですよね…馬場さん。」


「封筒の中身を読んだのか…。そうだわしは鹿野組から地位を奪われたヤクザもんだ。だが、キミのお陰で元の生活に戻ることが出来る。キミの立場もちゃんと考えてあるんだ!」


俺の立場?どうせまた同じような殺しだろう。「ヤクザになる気はありません。」俺は決めたんだ、あの路地裏で引き金を引いた瞬間からね。俺は正義のために殺すんだ。


「そんな事を言うな!キミの面倒はしっかり見てやる。さぁ酒でも呑んでパァーとやろう!」


俺はおっちゃんに拳銃を向けた。いや目の前にいるヤクザに拳銃を向けた。そして引き金を引いた。人気のないホームレス村に銃声が響いた。


これから俺はどうすればいいのだろう。俺はこの世には存在しない。少なくとも書類上は。もう俺を追う者も居ない。片っ端から悪を撃ち殺す。なんて気力ももう無い。この拳銃も俺が持ち主では何の価値もない。


拳銃を咥える。もう終らせよう。引き金を引いた。だが、弾は出なかった。もう全てを撃ちつくしていた。死ぬことも出来ないのか。もういい、ここを離れよう。闇に紛れて生きていけば、また希望を見つけられるだろう。

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