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間違えて運に極振りしちゃったけど召喚士なら何とかなりますか? ~召喚で出てくる魔物が異常個体ばかりなんですけど!~  作者: やおよろずの
第四章 六大ギルドになっちゃおう!

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083 第三天位冒険者の昇格試験③


そこで、レグの意識は現在へと引き戻された。

目の前では、サキと呼ばれていた少女が、まだ状況を飲み込めない様子でコナツを見つめている。


「え、でも、戦うって……そんな……」


サキは遠慮がちに、レグたち六人へ視線を向けた。

そしてしばらく逡巡した後、サキは不意に白亜の門へと歩み寄った。

まるで耳打ちするように、門へ顔を寄せて小声で話しかける。


「……ねえ、モーリー。いけそう……?」


そう言って、サキは白亜の門をまじまじと見つめる。

すると、その直後、白亜の門に何かが浮かび上がった。


「(……文字?)」


レグの位置からでは、内容までは読み取れない。

ただ、そこに何かしらの文字が浮かび、サキがそれを追うように視線を動かしていることは分かった。


「……門と相談してる、のか?」


カイルが、何とも言えない声で呟く。


「そう見えるわね」

「はっ、門が喋るってのか?」


ディガルが馬鹿にしたように笑みを浮かべた。


「喋るというより、文字で会話しているように見えるな」

「どっちにしても普通じゃないっての……」


カイルは呆れたような声を漏らしつつも、その目はサキ、そして白亜の門から離れていない。


サキはしばらく白亜の門と謎のやりとりを続けた後、


「……分かった。そこまで言うなら!」


と呟き、コナツの方に向き直る。


「コナツさん! 突然のことでびっくりなんですけど、その昇格試験、受けさせてください! モーリーもやる気みたいなので!」


サキははっきりとそう宣言した。


「モーリーって、誰だ?」

「流れ的に門じゃないかしら?」

「……門に名前って付けるか、普通」

「だから話してる時点で普通じゃないんだって」


アッシェの返答に、カイルが再び引きつったように笑った。


「……分かりました。今度、ご飯奢らせてくださいね」

「なんでコナツさんが奢るんですか!?」

「ラウゼン様を止められなかった私にも、責任の一端はありますから。……それでは、受験するということで試験の説明を続けますね」


そう言うと、コナツの声が試験担当としてのものへ戻る。


「今回の勝敗条件です。サキさん側の勝利条件は、冒険者六名全員を戦闘不能状態にすること。一方、レグさんたちの勝利条件は、サキさんに一撃でも入れられれば勝利となります」

「ええええええ!? 不平等すぎません……!!?」

「はい」

「素直!?」


コナツは淡々と、しかし少しだけ苦笑を混ぜて答える。


「当然ですが、サキさんの召喚獣への攻撃は可能です。ただし、勝敗判定はあくまでサキさん本人への有効打で決まります」

「わ、分かりました……」


サキは納得しきれない顔をしつつも、渋々といった様子で、小さく頷く。

一方で、レグたちは別の言葉に引っかかっていた。


「……召喚獣?」

「やっぱそこ引っかかるよな。なあ試験官さん、召喚獣ってのはどういう意味なんだ?」

「そのままの意味です。ここにいるアルテミスさんや、モーリーさん──その門と像は、いずれもサキさんが召喚した召喚獣です」


──その瞬間、六人の空気が変わった。


「なっ!?」

「召喚士だと!?」


先ほどまで残っていた緩い空気が、一気に緊張へと塗り替わる。


召喚士──その言葉一つで、話はまるで変わってくる。

サキ本人が弱そうに見えることには、まるで意味がないということだ。


「……さらに言うと」


コナツは、そこで一度だけ言葉を区切った。

そのわずかな間が、妙に長く感じられた。


「ザラスト・ザラメイヤさん、およびジョンソンさん、ブルースさん──剛体種ゴブリン二名も、サキさんの召喚獣です」


訓練場の空気が、凍った。

今度は、誰もすぐには言葉を返せなかった。


「……待って、どういうこと?」

「今、ザラスト・ザラメイヤって……言ったか……?」

「はい」


コナツは、静かに頷いた。


「なん……だって……」

「そ、そんな馬鹿な……怪物ザラスト、だと……?」

「あ、ありえるのか……? そんなことが……」


雷に打たれたような衝撃に、頭が真っ白になる。


──ザラスト・ザラメイヤ。

剛体種ゴブリンを従え、異常な速度で第五天位まで駆け上がった冒険者。

今のグラン=ラフィースで最も注目されている存在の一人。


その彼女が、召喚獣。

さらに剛体種ゴブリン二名も、召喚獣。


そして、その召喚主が、今まさに目の前にいる。


そんな受け入れがたい話に、レグの思考は完全に追いつかなかった。


「召喚獣が冒険者になって、第五天位まで上がるだと……? そんな話、聞いたことがないって……!」


レグは、改めてサキを見る。


武器を持たず、鎧も着けず、試験内容を突然変えられて本気で戸惑っていた少女。

その姿だけを見れば、彼女が何か大きな力を持っているようには見えない。


だが、彼女こそがザラスト・ザラメイヤを召喚したのだとすれば──。


「……え、そ、それってつまり……」

「はい。彼女は召喚士サキ──グランベルジュ所属の冒険者です」


その言葉で、レグはようやく、この不思議な依頼の意味を理解した。


これは、第三天位冒険者の昇格試験などではない。

あの老人は、レグたちに手を差し伸べ、第六天位へ引き上げてやる気などそもそも無かったのだ。


「は、初めまして、サキです! 今日はよろしくお願いします!……あの、お手柔らかにお願いしますね……?」


目の前の少女は、相変わらず自信なさそうに頭を下げている。

だがもう、誰もその姿を額面通りには受け取れなかった。


──常軌を逸した冒険者に対する、試金石。


それが、レグたち六人に与えられた役目だったのだ。


そんな六人の空気感を、コナツは無視して、サキは気付かずに、話は進んでいく。


「続いて、サキさんの相手をする冒険者六名について説明します」


レグ、アッシェ、カイル、エリーゼ、ソノイチ、ディガル。

コナツが順番に説明を続けていく。

しかし、レグたちは上の空だった。


「──以上が、冒険者六名です」

「いやいやいやいや!!! 全員私より階級上じゃないですか!?!? なのに何で私が不利な勝利条件なんですか!?!?」


サキは本気で無理だと言いたげだったが、


「(今いちばん衝撃的なのは、彼らですよ……)」


と、コナツは思っていた。


レグもまた、その認識は同じだった。


『一撃でも入れれば勝ち』

──言葉だけなら、圧倒的に有利に聞こえる。


だが、むしろ逆だ。

一撃を入れるだけで勝ちになるほど、サキ側の戦力が上だと見做されている。

そう考える方が自然だった。


「(この少女本人も実力者なのか……? いや……)」


レグは、サキの立ち姿を見る。

……どう見ても弱い。

しかし、それは力を隠しているだけかもしれない。


「(ザラスト・ザラメイヤや剛体種ゴブリンを召喚するその力を特別視しているのか、それとも──)」


レグは、隣に立つ金髪のエルフ、そして、白亜の門と像に目線を移す。


サキが本当にそのような召喚士なのであれば、あれらも同じように常識外の力を持っていても不思議ではない。

あれらを突破して、サキ本人へ一撃を入れる。

その条件は、容易ではないように思えた。


しかし──


「……勝てば、第六天位」


アッシェの小さな呟きに、レグはハッとする。


「(……そうだ。これを乗り越えれば、第六天位……)」


これは、外から見ればサキの実力を見るためのものかもしれない。

だがレグたちにとっては、やっと巡ってきたチャンスだった。


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― 新着の感想 ―
モーリー。いけそう……?
情報をちゃんと理解して先入観を捨てれるのはさすが手練だな
「なん……だって……」
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