072 聖脈果の効果……!
私が突然、意味の分からない叫び声を上げたせいで、
「マスター!? 何かあったのですか!?」
と、凄いスピードでアルテミスが駆け寄ってくれた。
その後ろからパンさんたちも心配した様子で近寄ってくる。
そ、そりゃそうだよね、みんなにはこの『ステータス』は見えてないんだから、
私が驚いた理由も分かるわけないよね……。
「ご、ごめんなさい!!! 全然大丈夫で、毒とかじゃなくて……とにかく大丈夫です!!!」
私が必死に手を振りながら大丈夫だと伝えると、みんなようやく安心してくれた……。
「ビックリしたわー! いきなり食べ出した思ったら叫ぶんやもん、また精神干渉でも受けたんか思ったわ!!」
「すみません……というか一人で一個まるまる食べちゃってごめんなさい!」
「いや、それは全然ええんやけど……何があったんや? 美味しすぎたんか?」
「確かにはちゃめちゃに美味しかった──んですけど、そうじゃなくて……」
私は、アイテム欄に表示された説明文を思い出しながら、この果物が聖脈果という名前であること、そして一日に一度だけ、食べることで魔力最大値が上昇するらしいことをみんなに伝えた。
「ほー、聖脈果なぁ。ウチは聞いたことないわ。食べるだけで魔力最大値──つまり、魔導の才能そのものを引き上げられるっちゅうことやろ? そんな化け物みたいな果物があるなら、普通に考えて国宝級やで」
「そうですな……もし本当にそのような果実が存在するのであれば、この世の中、魔導の才能に恵まれぬ者でも皆、魔法を扱えるようになりますぞ!」
「で、ではわたくしも魔法が使えるようになるかもしれませんの……!?」
「い、いや、まだ皆さんにも同じ効果があるのかはよく分からなくて……」
リンドールさんが凄い目を輝かせていたけど、実際のところは分からないことだらけなんだよね。
私の場合は『ステータス』で魔力の最大値が上がったことを確認できる。
けれど、みんなにはその『ステータス』が見えていないし、そもそも同じ効果が出る保証もない。
もちろん、アイテム欄の説明文はこれまで何度も正しかった。
ギルドバトルのとき、ボロボロになったゴブリンズに【粗悪なポーション】を使ったら、説明どおりすぐに傷が治ったし、私や私の召喚獣にはアイテム欄に書かれた効果がちゃんと発揮されていそう。
でも、それが”この世界の人たち”にもそのまま当てはまるかは微妙なところだよね……。
そんなことを考えていると、パンさんがぱんぱんっと手を叩いた。
「まあ、この際その効果はどっちでもええ。──それよりウチが気になるんは味や! サキはんがそこまで美味い言うんやし、もう一個か二個取って、みんなで食べてみよ!──次は全部食べたらあかんで?」
「もちろんです……! というか今日はもう食べません……!」
「あー、”一日に一度”やからか? そんな気にせんでも……」
「いや!!! カロリーの問題です!!!」
「そっちかい!?」
そんなやり取りをしつつ、またジョンソンとブルースに聖脈果を二つほど切り落としてもらい、私たちはギルドルームの一階へ戻った。
パンさんがさっと果実を洗うと、食べやすい大きさに切り分けていく。
そして、切り分けられた聖脈果が、白い皿の上に綺麗に並べられ、大テーブルの中央へ置かれた。
ちょうどヴィオラさんとペールルージュさんも確認が終わったみたいで、みんな揃っての試食会が始まった……!
「ほな、いただこか!」
パンさんの声に合わせて、それぞれが聖脈果を口に運ぶ。
「──うっっっっま!?」
そんな素っ頓狂な声を上げたのは、まさかのヴィオラさん。
目を丸くして固まっているヴィオラさんに続いて、みんなも次々と口にしていった。
「な、なにこれ……ちょっと美味しすぎない?」
「いやいや、ヴィオラはんもルルも大げさやって! そんな言うほど──うま~い!!!」
「これは……確かに、普通のリュバンスの実とは思えませんな」
ペールルージュさん、パンさん、クランクさんに続き、ザラやアルテミスも聖脈果を口にしていく。
「美味し~! お姉さまも早く食べてみてください~♡」
「──これは……あとお姉さまと呼ぶな」
二人とも気に入ってくれたみたいでよかった……!
ジョンソンとブルースも、ぱくっと一口。
……うん、やっぱり二人には、ちょっと一切れが小さすぎたみたい。
でも何となくいつもより口角が上がっているような気がする……。
分かんないけど、そういうことにしとこうっと。
とにかく味は大好評でよかったけど、
となると次に気になるのはアイテムとしての【聖脈果】の効果。
「皆さん、どうですか……? 魔力が増えた感じとかありますか?」
私がそう尋ねると、みんながうーんと首をひねる……。
「ウチはそもそも魔法が使えんからなぁ。正直よう分からんわ」
「私もパンと同じね。特に変わった感じはしないわ」
「わたくしも……ガッカリですわ……」
「私も、何かが変わった感じはないわ」
「そうですなぁ」
「あ、あれ……?」
うーん、どういうことだろう?
もしかしたら、アイテム欄の効果は私だけなのかな……?
そうだ、アルテミスとザラはどうだろう?
「ねえねえ、アルテミス、ザラ! 二人はどう?」
「……すみません、マスター。私も変わった感じはありません……」
「お姉さまに同じくです~!」
「そっか、教えてくれてありがとう。ジョンソンとブルースも……変わらなさそうだね」
この世界での聖脈果の効果はよく分からなかったけど、みんな美味しそうだし、まあいっか!
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