070 ギルドルーム大改造……!④
ゲームみたいにポンっと木を植える……。
それってつまり、”木を召喚”すればいいんだよね。
そう言えば私、この前そんなスキルを取得した気がする。
まだ一度も試していないけど、えーっと……。
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【植物召喚Ⅱ】 リュバンス樹を召喚できる。
【植物召喚Ⅳ】 ヒスイノキを召喚できる。
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これだ、【植物召喚Ⅱ】と【植物召喚Ⅳ】。
リュバンス樹とヒスイノキ──名前を見る限り、どちらも木っぽいよね。
……でも問題は、どんな木なのか全然分からないってこと。
もしかしたら盆栽みたいな小っちゃくて可愛い木が出てくるかもしれないし、ひょろっとした細い木かもしれない。
そうなると、目隠しとしては全然役に立たない……。
というわけで、まずはパンさんたちに聞いてみることに。
「あのー、私、そういえば木を召喚できるっぽいんですけど、どんな木が出てくるのか分からなくて……。リュバンス樹っていうのと、ヒスイノキっていうのなんですけど、知ってます?」
私がそう尋ねると、パンさんは少しだけ黙り、何か考えながらゆっくりと口を開いた。
「……木を召喚するっちゅうのもツッコミたいんやけど……ほんま今更でスマン、サキはんはどうやって召喚を習得しとるんや? 教わるにしても、独学にしても、”それが召喚できることが分かってる”なら、何が出てくるか見たことあると思うんやけど」
「え、えーっと……」
「今回やってリュバンス樹とヒスイノキが召喚できるんが分かっとるけど、召喚はしたことないってことなんか?」
「それは、その……」
そう言われて、私は言葉に詰まった。
……だって、転生してきた話とか、ノヨカさんの話とか、みんなには説明していない。
そもそも説明しづらいし、何より、ちゃんと受け入れてもらえるのか不安なのも正直ある。
「──いやすまんかった! サキはんが凄すぎて、つい深掘って聞いてまうわ。詮索する気はないんやで、これほんま!」
突然パンさんが、がばっと勢いよく頭を下げた。
その勢いに、今度は私の方が慌ててしまう。
「い、いや大丈夫です! 私の方こそ、上手く説明できなくてごめんなさい!!」
「いやいや! サキはんが謝ることなんて一個もあらへん! 言いにくいことは言わんでええし、話せることだけ話してくれたらそれでええんや。そもそも、グランベルジュが今こうなっとるのも、誇張抜きで全部サキはんのおかげなんやで? もっとワガママ言ってもええと思うわ」
「ワガママなんてそんな……。ステータスの低い私を拾ってくれただけでもう十分ですから」
「なんてええ子や……。泣けるわ……」
そう言って泣くパンさんを、ペールルージュさんはクスっと笑って話を続けた。
「パンが泣いてる間に、話を戻しましょうか。リュバンス樹とヒスイノキの話だったわね。両方とも知ってるわ」
そう言って、ペールルージュさんが指先を顎に添える。
ペールルージュさんの話によると……。
リュバンス樹は果物を実らせる大きな木。
リュバンス樹そのものはあまりグラン=ラフィースでは見かけないけど、果物は普通に売られているらしい。
枝が横に広がりやすくて、葉も多いから、目隠しとしては悪くなさそうとのこと。
一方のヒスイノキはというと、こっちは木材として有名。
幹の内側が淡い緑色をしていて、磨くとまさに翡翠みたいに艶が出るから、高級家具に使われることが多いんだって。
ただし、ヒスイノキは育つのにとても時間がかかり、まともな木材として使えるようになるまで、何十年とかかるそうだ。
「なるほど……じゃあ、目隠しとしてはリュバンス樹の方が良さそうですね」
というか、魔力の消費量的に、今回はリュバンス樹の方が良さそう。
ヒスイノキは50必要だけど、リュバンス樹はちょうど25で召喚できるし。
そう、今の私の魔力は25。
ここ数日、昇格試験とかに備えて、マナエーテルをちびちび舐めて貯めていたんだよね……!
そのおかげで、今なら杖や指輪を装備せずともリュバンス樹なら召喚できる!
「じゃあ、リュバンス樹を召喚します!」
「ちょ、待った待った! どこに出すかはちゃんと決めとこか」
「そ、そうでした……。木ですもんね……」
ゴブリンズとかのこれまでの子たちと違って、木は動かない。
一度変な場所に生えてしまったら、「ちょっと横にずれて」なんてできないし……。
「それなら、場所はここがいいわ」
ヴィオラさんは庭の奥へ歩いていくと、塀の内側の角に近いあたりを指差した。
「ここに一本あれば、視線をかなり遮れる。枝の広がり方次第では、二階の窓から庭を覗かれる角度も潰せるはずよ」
「せやな、中央より塀際に寄せた方が庭も広々使えるしな。よし、ほなここで頼むわ」
そう言って、パンさんが足先で地面にぐるりと丸い線を引いた。
召喚位置の目印、ということみたい。
「分かりました! じゃあ、この丸の中に……ですね」
私は指定された場所の前に立ち、軽く深呼吸する。
「では、いきます! 【植物召喚Ⅱ】──リュバンス樹!」
私の声に応えるように、緑色の魔法陣が広がった。




