007 初めてのダンジョン!②
というわけで、【時短召喚術】を習得することに。
で、使い方は──前回と同様、ステータスに書いてあった。
スキルを連ねて呟くだけで、後はアルテミスを召喚したときと同じみたい。
早速、試してみる。
「ええっと、【時短召喚術】【亜人召喚1】──ゴブリン!」
──すると、目前の黄色い魔法陣から筋骨隆々な大男が出てきた。
で、でかーい!!!
2メートルは越えてるんじゃないかな。
なんか想像してたゴブリンって、小さなおじさんをイメージしてたんだけど、この子は随分とたくましい。
「な、何やこのゴブリン!? めっちゃムキムキやないか!?」
驚いているパンさんを横目に、私はゴブリンを見上げて話しかける。
「はじめまして! 私はサキ、あなたを召喚しました!」
すると、ゴブリンは私に視線を落とした。
「……私の言うこと、わかる?」
続く私の言葉に、ゴブリンは頷いて答える。
良かった、この子も言うことを聞いてくれそう。
「じゃあ、お願いなんだけど、この部屋にいるスライムを片っ端からやっつけていってほしいの! できるかな?」
私がそう言うと、ゴブリンは再び頷いて答え、早速歩いていき近くにいたスライムの前に立った。
そして、おもむろに右ストレート!
クリティカルヒットしたスライムは、パアンッと大きな破裂音と共に消し飛んだ。
「な、なんちゅうパンチや。スライムを素手で一撃とか、異常個体やろか……」
「すごいぞゴブリン! やっちゃえ!」
私の言葉を聞いてか分からないけれど、すぐさま次の標的に狙いを定めて歩いていった。
……よく見ると、スライムの破裂後になにか光るものが見える。
「あの光ってるのはなんですか?」
「ああ、ドロップアイテムやな。ダンジョンの魔物は倒せばドロップアイテムを落として煙のように消えるんや。……さっきのスライムは物理的に消し飛ばされたからよー分からんかったと思うけどな」
それを聞き、私は早速ドロップアイテムを拾いに行く。
「スライムのドロップアイテムはスライムゼリーや。こない低級のスライムゼリーは食べられへんから、包材や他の素材と混ぜるのに使ったりするな」
私は拾ったドロップアイテムを掌の上で眺めてみる。
へえー、これがスライムゼリー……。
ゲームとかでよく見るけど、何だか全然ゼリーっぽくないな。
私がまじまじと見ていると、後から近寄ってきたパンが私の掌の上を見るなり血相を変えてつっこんできた。
「え、えっ、ええっっ!? あんたそれ、粘魔核やないの!?」
「あれっ、スライムゼリーとちがうんですか?」
「あんた、粘魔核は超レアアイテムやで!? スライム1000匹倒せば1個落とすかどうか……こりゃあんた、随分と運ええなぁ!」
「え、でも……」
私はゴブリンの戦闘跡を眺める。
ゴブリンは既にスライムを何匹も粉砕済だったのだけど、
その後には、粘魔核、粘魔核、粘魔核──
「えぇぇぇっっ!?!? なんでこないに粘魔核が!? レアアイテムのバーゲンセールやないか!?」
……そうか、運が999だからドロップアイテムが良くなってるんだ。
そういえばノヨカさんもそんなこと言ってたかも。
「こ、こんだけあればうちらのギルドポイントは一気に上昇するで!」
「ギルドポイント?」
「せや、ドロップアイテムの売買は基本的にギルドポイントなんや。売るのも買うのも冒険者かギルド運営やからな」
へえ、勝手に金銭での売買を想像してたけど、本当に冒険者としての活動で得られるのは全てギルドポイントになるんだなぁ。
「売り方は様々や。ギルド運営にそのまま買い取ってもらったり、自分でギルド市に出店したり、オークションで売ったり。ほんで得られたギルドポイントは、ドロップアイテムを獲得した冒険者に還元されるわけや」
自分でギルド市に出店って、何だか楽しそう。
ギルドのみんなでお店の準備をしたりするの、何だか学生時代の文化祭みたいじゃない?
なんて能天気なことを考えていると、パンさんはゴブリンの戦闘跡を見て頭を悩ませていた。
「……それにしても、こないたくさん魔物を倒す想定無かったから、どうやって持って帰るか……」
そういえば、メニューに『アイテム』って項目があったけど、もしかしてアイテム欄みたいに使えないかな?
例えば、アイテム欄を開きながらアイテムを手に取るとか。
……あっ、できた!
手に取ったアイテムが消えて、代わりにアイテム欄に粘魔核が追加されていた。
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【粘魔核】 スライムの生命の源。未だに生命を感じる。
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アイテムの説明も読めるんだ、面白い。
でも、『未だに生命を感じる』って何だか怖いよ……!
「え、どこに消えたんや?」
混乱してるパンさんに見せるように、再び取り出してみる。
おそらくアイテムをタッチすれば──出来た!
ゴロン、と目の前に粘魔核が出現する。
「……どない手品や。まあ、もうええわ」
もはや呆れるパンさん。
「(わ、私のマスター凄すぎだしかわいすぎ……!!!)」
アルテミスの心の内も知らず、私は次々と粘魔核をアイテム欄に突っ込んでいった。




