050 やっとスライム……?
レストランでのお食事会の翌日。
ギルドルームには、私とアルテミス、それからリンドールさんの三人だけだった。
ザラとゴブリンズは冒険者としてお仕事中。
パンさんとペールルージュさんも用事があるらしく、二人で出ていってしまった。
というわけで、特に用事のない私はギルドルームでのんびりとした時間を過ごしていた。
……ちょっとソコ、暇人とか言わないように。
ザラがダンジョン探索に行くとかだったらついていったんだけど……。
今日は例の”指名依頼”ってやつらしく、ついていくと邪魔になりそうでやめたんだよね。
「……にがっ」
リンドールさん特製のマナエーテルは、やっぱりこれ単体だと苦味が強くて、優雅なティータイムには合わないかも。
もちろん、以前のやつとは天と地の差があるけど。
あまーいデザートと一緒だったら結構合うんだけどね。
そんな甘いモノ毎日食べてたらすぐに太っちゃうよ……。
アルテミスと美味しい茶葉でも買いに行こうかな、と思っていると。
「あら、サキさん」
リンドールさんが二階から降りてきた。
錬金をしていたのか、ちょっと汚れた手にマナエーテルを持っている。
「リンドールさん、その手に持ってるのはマナエーテルですか?」
「そうですわ。サキさんが飲んでくださるので、補充です」
リンドールさんは私のカップ──さっきまで飲んでいたマナエーテルをちらりと見て、嬉しそうにそう言った。
「ありがとうございます! これで私の魔力問題もかなり解消しました!」
「お役に立てているなら良かったですわ……未だに失敗ばかりですが」
「それでも凄いですよ!」
だって、普通なら数日かかる量の魔力を、ちょっと苦いとは言っても飲むだけで回復できちゃうんだから。
錬金術の力ってすごい。
パンさんが錬金術師をギルドに入れたかったのも頷けるよね。
……そうだ、リンドールさんならもしかしたら!
「あのー、もしかしてリンドールさんなら”太らないポーション”とか……作れたりしませんか?」
「太らないポーション……? 聞いたことないですわね」
「そっかあ、無いかぁ……」
残念……。
もしそんな夢のようなポーションがあったら、毎日あまーいケーキとマナエーテルを食べてやろうと思ったのに……。
私ががっかりしていると、リンドールさんは顎に指を当てて、少しだけ考えるような間を置いた。
「──太らない、とは少し違いますが、『一口で満腹感が得られる』と評判の”ハラモチ”という食べ物がありますわね。ニョキモチの類似種でして、お値段は張りますけれど、貴族の置き換えダイエットとして有名ですわ」
へえー、この世界にも置き換えダイエットみたいなのがあるんだ。
私も色々試したよ、バナナダイエットやらリンゴダイエットやら……。
まあ、痩せないんですけど!
……あれ?
「そういえばニョキモチってどこかで見た気が……そうだ、私の召喚スキルでこの前見たかも!」
私は慌てて『スキルツリー』を開く。
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【植物召喚Ⅲ】 ニョキモチを召喚できる。
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私のレベルが16に上がったことで、習得できるスキルも増えてるんだよね。
他にも、ヒスイノキとかいうよく分からない植物も増えてる。
……というか植物全般、よく分からないんだけども。
本屋さんで図鑑でも買ってこようかな。
そしてこのニョキモチ、もしかしたら私の【運】でハラモチとして召喚できたりしないかな?
一日一食をそのハラモチに置き換えて、その代わりにケーキとマナエーテルを食べるの。
するとあら不思議、太らずに美味しく魔力を回復できるって寸法!
「召喚スキル……もしかして、サキさんはニョキモチやハラモチを召喚できるのですか?」
「うーん、できるというか、その気になれば、というか……」
まだスキルを取ったわけじゃないし、魔力が足りるか分からないし、そもそもハラモチになるかも分からないけど……。
「相変わらずすごいですわね。そうだ、サキさんはスライムを召喚できたりしますの?」
「スライム……ですか?」
……そういえば、スライムって随分前から召喚できたのに、一度もしたことなかった。
「実は、私の錬金の失敗作なのですが、処理に困っていて……」
「普通に捨てるんじゃだめなんですか?」
「そうなのです。錬金で失敗したものは、何が起こるか分からないため、捨てることができず……」
「なるほど……。それで、どうしてスライムなんですか?」
「スライムは汚染物を好み、消化することができるとされています。ですので、スライムを用いた汚染物の処理を国が検討しているほどです」
へー、スライムって超有能なんだね。
つまり、リンドールさんとしてはスライムで錬金の失敗作を処理したいってことか。
「それであれば、私、スライム召喚したことないですけど召喚できるのは知ってるので、できますよ!」
「どういう言い回しですの……まあ、でしたらお願いしたいですわ」
というわけで、私たちはスライムを召喚するためにギルドルームの庭へと移動した。




