005 ウザい男子
翌日、私とアルテミスの二人はギルド集会所へ向かった。
パンさんとペールルージュさんは別件があり、来れないとのことだ。
ギルド集会所に入り、昨日の受付嬢のもとへ行こうとすると三人組の冒険者が私を見てニヤニヤしながら寄ってきた。
「あっ、昨日のめっちゃ可愛い女の子じゃん! おつかれー」
「ねえねえ、ギルド入れたー?」
どうやら彼らは、昨日の私の恥ずかしいところを見ていたらしい。
私は顔が少し赤くなるのを感じる。
「ねえねえ、良かったらうちのギルドこない? 全然戦わなくていいし、めっちゃ楽しいよ!」
「みんなで美味しいお酒とか飲んだり、イベントやったりさ!」
何だか大学のサークル勧誘を思い出すなぁ、と思いつつ、私はきっぱりと断ることにする。
「すみません、もう別のギルドに入ったんで結構です」
私が大きな声でそう言うと、三人が顔を見合わせた。
「え、でもギルド証つけてないじゃん! 嘘は良くないって!」
……そう言えば昨日、受付嬢さんもギルドに所属してる人はギルド証を着けてるって言ってたっけ。
パンさんもペールルージュさんも忙しそうだったから、渡すの忘れてたのかな。
もしかしたら、自分から言わないといけなかった……?
「は、入ったばかりでもらうの忘れてて……」
今度は小さい声でそう言うと、三人は再び顔を見合わせ、ニヤッと笑った。
「いいっていいって! とりまウチ入っとこ?」
「マジみんなに紹介するし! みんなめっちゃノリいいし、女の子も多いよ?」
「い、いや、遠慮しときます……」
私がそう言って通り過ぎようとすると、
「は? 絶対俺らの言うこと聞いといた方が良いって」
そう言って私の手を掴んできた。
「ステータス足りなくて五大ギルド入れなかったんでしょ? 大丈夫、俺らが守ったげるから」
三人がそう言って迫ってくる。
ど、どうしよう……
そう思った瞬間、男の腕をアルテミスが掴んだ。
「……マジで殺す」
「──は?」
ギシっと何かが軋む音と共に、男の腕があり得ない方向に曲がる。
それは、アルテミスが男の腕を逆方向に折った音だった。
「ぎいっっ!?」
アルテミスが手を離すと、男はあまりの痛みにその場にうずくまった。
それを見て、もう一人の男がアルテミスに迫る。
「てめえ! 女だからって調子乗ってると──」
男が言い終わる前に、アルテミスが男に掌を突き出す。
すると、まるでボールのように男の身体が吹き飛んで、壁に叩きつけられた。
「かはッッ!?」
「下種どもが……私のマスターに触るなど……苦しめて殺す」
「ひ、ひいっ!」
腕を捻られた男と、もう一人が怖気づいて逃げていく。
「追いかけて殺しますか?」
「いいっていいって!!!」
どうしてそんなに殺意に溢れてるの!?
うぅ、周りの冒険者から凄く注目されちゃってる……。
それにしてもアルテミスの強さには驚いた。
さっきの、触らずに身体を吹き飛ばしたの、どうやってるんだろう。
「ありがとう、アルテミス。私を守ってくれて」
「……マスター、私をお叱りください」
「えっ、どうして?」
他の人に暴力を振るったから、とか?
でもあれは正当防衛だし、ちょっとやりすぎかもだけど、私は守ってくれて嬉しかったけどな。
「……マスターの怯えた顔が可愛すぎて、クズどもを葬るのが遅れてしまいました……」
「……そ、それはやめてほしいな!」
アルテミスが何を言っているのかよく分からないけど、まあ置いといて。
そのまま受付嬢のところに向かう。
すると、受付嬢は私を見てカッと目を見開いた。
「えっ、お二人ともめっちゃくちゃ強いじゃないですか! 私、スカッとしましたよ!」
「いや、私は何も……。アルテミスが凄いんですよ、ね、アルテミス」
私がそう言って目をやると、アルテミスは少し誇らしげだった。
「いえ、マスター。あの程度の雑魚でお褒めの言葉を頂戴するなど恐れ多いです」
「いやいや! 彼ら、ほぼほぼ第三天位に足を踏み入れかけの冒険者なんで凄いですよ! 一気にお姉さんのギルドポイントアップですね!」
第三天位? 私にギルドポイント?
分からないことだらけなので、順に説明してもらう。
まず、ギルドポイントの獲得方法について。
ギルドポイントは、基本的に魔物を倒すことで、倒した本人に貯まっていく。
その個人に貯まったギルドポイントにより、冒険者は第一天位から第八天位にランク付けされるらしい。
ただ、最上位ギルドのごく一部は、それより上のランクが付けられているとかなんとか。
まあ、私には関係のない世界だよね。
そして、ギルドは所属しているメンバー全員のギルドポイントの合計値で評価され、ランキング付けされる。
ちなみに今のランキングは、1位から順に黒、白、青、赤、緑の順らしい。
ずっと白が一番上だったんだけど、最近黒の勢いが凄くて、ついに抜いたんだとか。
次に、ギルドポイントの活用方法について。
ギルドポイントは獲得するだけじゃなくて、使うこともできる。
例えば、回復術師に回復してもらう対価にギルドポイントを支払ったり、他のギルドからアイテムを買い取るのに使ったり。
更には、ギルド運営にそのままお金に交換してもらうことも出来るのだとか。
要するに、冒険者内で使える電子マネーのような扱いみたい。
だから、回復術師だけで成り立ってるギルドとか、商売だけでやってるギルドもあるんだとか。
五大ギルドだと、青は回復術師ばかりで、魔物をほぼ倒さないことで有名らしい。
そしてここからが本題。
ギルドポイントは、他の人に倒されることで奪われてしまうんだとか。
「だから、今あのチャラ男二人をぶっとばしたことで、お姉さんはあの二人のギルドポイントをゲットしたんですよ!」
「な、なるほど……?」
アルテミスが倒したのに私のポイントになったのは、召喚主が私だからかな。
「そうだ、自身のギルドポイントを確認できるブレスレットをあげちゃいます!」
そう言って、受付嬢さんは白いブレスレットを手渡してきた。
「え、いいんですか!?」
「はい! 私もあの三人にはウンザリしてたので!……凄いんですよ? 第一天位の冒険者がほぼ第三天位の奴をボコボコにするなんて!」
ふふん、鼻が高い。
……私は何もしてないけど。
早速、もらったブレスレットを付けてみると、フワッと”930”という数字が浮かび上がった。
これはつまり、私のギルドポイントが930ってことなのかな。
「ブレスレットありがとうございます、大切にします。──あっ、そうだ! 私、今日はダンジョンクエストを受けに来たんですけど……」
「ダンジョンクエストですね、どのダンジョンにしますか?」
「ええっと、黒裂結晶の洞窟っていうやつの第一層、でお願いします」
パンさんから聞いた話だと、ダンジョンにはダンジョンクエスト受注後にギルド集会所にある転移の魔法陣から行くことが出来るらしい。
普通に存在する魔物を倒しに行くには、魔物の目撃情報があった場所にまで行って倒す必要があるから、転移できるダンジョンでギルドポイントを稼ぐ方がラク、というわけだ。
「黒裂結晶の洞窟の第一層、ですね! お姉さんならもっと難しいのもいけると思いますけど、まだ受注できないですし仕方ないですね」
「受注できないとかあるんですか?」
「はい、ダンジョンってついつい奥に進みたくなっちゃって、無理をして命を落とす方もいるので制限があるんです。お姉さんはギルドポイント的には第三天位なんですけど、昇格試験を受けてないので……」
なるほど、冒険者ランクを上げるには、昇格試験を受ける必要があるみたい。
どんな試験か分からないけど、私のステータス的に受かるのはもっと先になりそう……。
そんなことを思いながら、私はダンジョンクエストを受注したのだった。
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